第12話 それぞれの思い......

森川梨奈の視点:


確か、ルーくんの部屋ってここの廊下の十字路を右に曲がってから、真っ直ぐに突き当たりまでいって左側の方になるんだっけ?昨日、饗宴場での会話が終わってから、あたし達がそれぞれの泊まる部屋を侍女に案内されたけど、その時は夜だったのに加えてみんなが疲れすぎたから、部屋を見に行く機会なかったので、どこだろうとさっき会った侍女に聞いたら、ここ.....だよねー? それにしても、なんであたし達の部屋ってこんなに離れてるの?まあ、きっと、この世界に慣らしてくために出来る限り、それぞれが個人的に自立して上手く行動できるよう配慮してるつもりなんでしょうねー。


じゃー。一応、ノックするわね、ルーくん!

トン、トン!

トン、トン!

あれ、返事、まだないの?....はああ....いつものルーくんだから、きっとまだ寝てるんでしょーね.... まあ、でも昨日はこの世界にやってきたばかりだし、色々な事があり過ぎなのよねー...。なら、そっとしておいた方がいいんだけど、少しだけ顔を見に行きたいというか....その....まあ、取りあえず、少しだけ心配なんだから安否だけ確かめればいいのよねーうん!それしたら、直ぐここから出ていくので。


「お邪魔します....」

小さい声で挨拶したあたしがドアを開けて中へ入ると、どうやらここの部屋もあたしのと同じで、3人までが一緒に泊まったり、快適に生活できるまでの容積を持っているようなのね。きっと、あたし達にこの世界を救ってもらう側になってるあちら側だから、それで優遇されてるのよね。そっちには小さな事務用のテーブルがあって筆記用具みたいなものだけじゃなくて、数冊の本みたいなのも積まれたわよね。近くに設置されてるテーブルランプみたいなのも見つけたので、それに近づいて見ると、どうやら何かの小さな宝石っぽいものが灯として微かに光ってるので、きっとジンシリョク?とかなんとかと呼ばれたあの訳わかんないオーラみたいなのが関係してるようね。 ベッドに視線を向けると、そこにはぐっすりといびきを立てて寝てるルーくんがいるのを発見!くす、こんな時でも遅くまで眠っていられるのって、もうー!


静かにそこへ向かって足を踏み出したあたしはベッドの近くになると、あいつの顔を覗き込んだ。疲れているか、こっちの気配を一切感じないみたく、深い眠りを続けているルーくんを見たあたしは少し苦笑して、ふと昔にあった出来事に思いを馳せた。そう、あの中学校の頃に。あの時はルーくんは友達の男の子にエロ本みたいなのを読まされたらしいので、それで影響されて少しはリアルの女子の反応も見て楽しみたいという思いつきで、廊下を歩いていた女子をスカートを捲ったルーくんと偶然に鉢合わせた。あいつはあの時、必死に弁解しながら白状したのだけれど、その時のあたしって結構頭に血が上りすぎて、怒鳴りながらなんども脇腹を蹴っていたんだったのよねーー。で、その時のあいつは涙目になりながらも、何度もあたしやその子に謝ってたけど、結局はその子もあいつの事をずっと遠めから眺めて憧れのような気持ちを抱いたので、不問に通したと覚えてるけど、当時のルーくんはただ女子の反応が見たいからといったので、子供である故に恋愛とか考えてないようなんだから、その子とは少し友人関係になってたのを覚えてるのよねー。まあ、直ぐにあの子も転校していなくなってたんだけどねー。


と、昔にあった思い出に意識を集中してたら、

「むーー梨奈?もういじめないでくれよー?いてえーけどちょっと気持ちよくなっちゃってるから、このままじゃ、お前なしじゃいられないよー。だから、やめてよね、キックするの。」

と、何か、寝言をブツブツ呟いてる。もうー!いつまであたしをそんな風に思ってるわけ?......あたしだって、あんたに手を上げたり、乱暴するような扱いしたくないよー?


でも、どうしてだろうー?ルーくんが他の女の子にちょっかいを出したり、ちょっとだけエッチな目を向けたりしてるのを見ると、どうしてこう、ちくりっと胸に何かが刺さったような感覚をずっと体験してきて、.......もうー!なんでこうなってるんだろうー!?あたしはただ、ルーくんの傍にいて、一緒に学校生活を他の友人二人と過ごしていきたいと思ってるだけなのに、なんでこんな気持ちになってるんだろうー?幼馴染だから、家族同士みたいな付き合いがあるから、他の子に取られたくないという感情からくるものなのかなー?でも、あたしって、まだ<そういう感情>をあいつに抱いてるかどうかまだわかんないよー.....。


でも、なんでだろうー。あいつが他の女の子と仲良くなってるのを何度も想像してみてきたら、いつもこんなに胸が張り裂けそうに感じるのは......なんでー?あたしはただ、彼と一緒にいたいのに、もしあいつの周りに女の子が増えて友達として接していても、なんでーなんで二人だけでいいーといつも思ってるの?ただ家族みたいな存在だと自分に何度も聞かせても、それでも、なんで二人だけがいいとーいつも思ってんのよ、あたしはー??~~~。


と、顔を熱くさせているあたしは、すっと、彼の寝顔をまたも、今度はさっきより近く見つめたら、ルーくんの短くカットした褐色アフロヘアからアホ毛がちょっとだけかかっているおでこに唇をよせた。ちゅーっ!...............って、あたし、何やってるのよー!!??~~~~~~~


頭の天辺まで湯気が昇っちゃいそうな感情の激流と共に、死んじゃいたいくらい恥ずかしくなったので顔を両手で覆って、日本から履いてきた学校の制服のスカートをひらひらさせながら、ツインテールを揺らしてるまま部屋を飛び出していったあたしだった。(因みに、昨日、王城に着いたばかりの時にお風呂に入った途中は侍女長が一種の治癒系の現神術を通して、あたしの制服についた汚れを綺麗さっぱり落としてくれたと知らされたの。)

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春介遼二の視点:


んんん........


んんん.....んんふぅぅーー!?

なんか、いきなり鼻や口のところに何か蒸れてる匂いがしたかと思ってるので、眠っていた僕はそれで意識が覚醒されてと同時に、目を開けてしまった。


「おはよう、遼二君。」

と、僕の顔に黒タイツに包まれた足を載せて踏んづけるようにぐりぐりと回している有栖川に目が合った!ああ、またこれかよー!もう、簡便してくれよなー有栖川よ!確かに気持ちよくはあるが、いつもそれで悶々とさせられ続けてきたのでマジでやめてよね、その性的スキンシップは!


「んんふぅぅーー んんふぅぅぅー!!」

「ふふ。何を言っているのか、全然分かりませんね、私のペットは。」

と、かっとなった僕は彼女の足を摑んでどかせたら、

「おいー!有栖川!だから前々からいってんだろうがー!こういうのやめてくれよー!」

「もう、何故そんなに怒っているの、遼二君?ただのじゃれあい程度の挨拶みたいなものじゃないですか。」

「これが<挨拶>ってんなら、他のやつにもやってみろよ!どんな反応が返ってくるか見ものだな!」

「ふふ、何を異なことを言うんですか?私がこんなことしたいと思えるのは君にだけですよ?まあ、もしきみの親友であり、仲間でもある早山君が頼んできたら、やらなくもないけど、私が特別に思って、一番のペットにしたいのは君だけですよ?」

「くぅー!...だから、いつから僕は君のペットになったと思ってんだよー?僕はそんなものに興味ないし、きみの事は大切な友人とも思ってるけどよ、生憎と僕はこういう性癖を開花したくないからなー!普通に接してくれよ!」

「ふふふ.....分かりましたよ!まったく、ただの軽い挨拶なのになにそんなにムキになってるんですかー?可愛いですね、遼二君は。くすー」

こいつの悪い癖だな。こいつと仲良くなってから、僕の下の名前をプライベートな場で呼ぶようになっては包み隠さず僕に自分の歪んでいる性癖みたいなのを曝け出してきてるようにはなったんだが、生憎と僕はルーのやつみたいにマゾ気質がないから、困ってるものだ!


「では、こういうのはどうでしょう?」

今度、足をどいた有栖川は僕の横たわっているベッドの前に妖艶な微笑を浮かべるかと思うと、今度は両手を使ってスカートの裾を摘んで黒タイツに覆われてるパンツを見せてきやがった!ううううおおおおーー!眩しいね!これー!って、いかん、血流が!血流が!あそこへと集まりそうにー!南無、南無!


と、少しの口論やじゃれあいの末に、真剣な様子になってる僕たち。


「では、本題に戻しますね。昨日、饗宴場で女王や他の二人から聞かされた話でしたが、あれが全て真実だと思いますか?」

「少なくとも、僕たちの力が必要で召喚したという必死さは伝わったよ。真剣みたいだったし、きっと殆どが事実なんじゃない?」

「ええ、私もそうは思いますが、そもそも、何故、<女学園>に通う必要があるんですか?げんしんとか何とかという異能めいたものを使えるようにと私達に訓練を施したいなら、別に学園に通う必要がないように思えるんですが.....」

「まあ、見た目からしたら、ほら、僕たちって、エレン姫や他の子たちとは同い年に見えるんだよねー?なら、女王からしたら、きっとこの世界における一般知識を僕らの身につけさせたいから教育面でもカバーしたいという姿勢は感じるよ。」

「それはそうですが、でももしそれならば、家庭教師とか本から学ぶだけでいいと思いません?」

「きっと、この世界の人間と触れ合いさせて、交流の幅を広めさせたいから学園に通わせたいんじゃない?」

「まあ、そういう面でしたら、私も察することができますが。(私は有栖川財閥の跡取りですし、そういうのは分かりきっていますよ。けど、私としては他の女子を遼二君の傍へ近づかせたくないというか........)」

と、黒タイツに包まれた両脚をくっつかせて何かもじもじになってる有栖川のやつだけど、どうしたんだろう?後、なんで今度はスカートの裾を手で押さえてんだ?さっきは気満々でご自分から裾を持ち上げてんじゃんー!?


「......それにしても、普通の共学校ではないと言う事は、その異能みたいな出鱈目な業や武器を使えるのは女性だけと考えるのも容易ですね。」

「そうね。神の聖騎士?ーなんだっけ?と呼ばれた僕たち<地球人>を除いて。」

「きっと、討伐対象であるカン・ウェイが男性だからですね。」

「ええ。」

「なら、女王達から頼まれたように、さっそく気合を入れて、日本へ帰るためにやるべきことを済ましていきましょうね。」


「そう。.....ああ!今になって気づいたけど、ここの世界って案外、時間の流れが僕らのと遜色ないね?昨日はあのムカデから走り回ったりわ、エレン姫たちと大勢な集として飛んできたりしたわで、色々な事があって王城で長いー話を聞かされたら、直ぐに夜にはなったんだよねー?あれは全部、感覚からしたら、12時間前後みたいに経過したと感じるし、何より、それを証拠として日本にいた時に発生したあの地震と共にここへ飛ばされてきた時に、空を見上げてみたら、なんか午後一時みたいな気がしたので、城の会話や晩餐が終わった頃には既に夜になったので、12時間が経ったという証明にはなるね、きっと! ってか、今は朝だよねー?」

「そうですよ。」

「なら、早い事朝食を取って、いつになったらあの女学園に通う日が来るか、女王なりエレン姫なり、誰かに聞き回りにいこうぜー有栖川!」

「ええ!ついでに、早山君達とも合流して、お互いの思ったこと、近況や現状を聞かせ合いましょう。」

「了解!」

力強く頷きあった僕たちは足早になって、朝食を取りに、そして親友である早山ルーイズとその彼女、森川梨奈なる他の仲間二人と合流するために部屋を出ていったのだった。


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