第11話 いざ、聖メレディーツ女学園へ

「ユリン卿から既に聞いておいた様じゃったが、<ミスダン族>って、まだ覚えておるかの?」

「ええ、もちろんです。」

ネネサ女王から聞かれたので、答えた俺である。

「じゃ、もう一度話すと、彼らは確かに神族より確かに弱いんじゃったが、それでも、当時の人間族より遥かに強力な身体能力や莫大な神使力を誇っておった。多分、現在の<神に仕える戦乙女(ヴァルキューロア)>と呼べる人間よりも。」

「マジかよ...」

「そ...そんな...」

「さっき、触手によるデタラメな攻撃を何度もかましてきたムカデを苦もなく粉砕してみせた子達ですよね?彼女たちよりも強いというんですかー!?」

と、反応を示した3人の仲間に、

「そうじゃよ。で、その<ミスダン族>って種族の外見特徴はのうー耳が長くて、尖っており、全員の肌色の殆どが青か赤いからの種類がおると言われておった。まあ、でも稀には神族や人間族よりも白い肌色も持っている個体はおるが。でも、そういう場合じゃ、別の肌色を持つ他の<ミスダン族>よりも何倍かの神使力を有して、もっと強いとも言われたんじゃったが。」

「それって、まるでゲームに出てくるようなエルフだよよね、なあ、遼二?」

「ええ、そうだね!僕も何度かそれ見慣れてきたし、ファンタジー世界における定番な要素だな。」

「それだけじゃなくて、額にはとってもちっちゃい角を持っておるよ。」

と、俺たちに更なる情報を知らせてきた。

「で、その<ミスダン族>の長、カン・ウェイは確かに神族軍を率いていたムラン将軍に打ち負かされたんじゃ。しかし、彼にはまだ切り札を残しておいたらしいんじゃよ。」

「切り札?それって何なの?」

と聞いた梨奈に、

「<リヴァス核>というんじゃ。それはのうーとっても恐ろしいものでおると言われたんじゃよ。その時、負かされた筈のカン・ウェイは喉に神剣を突きつけられていて降伏するようムラン将軍に勧められたんじゃったが、生憎と、彼はまだ諦めないらしくて、ギラギラとした目で将軍を睨んだまま微動だにしなかったんじゃ。で、ムラン将軍も慈悲というものを持ち合わせてはおるが、聞き分けのない者に対しては絶対に容赦しないタイプじゃった。カンの喉を貫こうと神剣を握っておる右手に神使力や圧力を込めたが、悪巧みしそうな邪悪な微笑を浮かべカンはいきなり、身に纏う鎧を自らの神使力の放出によって破壊すると同時に、胸元に真っ白な玉みたいな物が埋め込まれたと気づいたムラン将軍じゃ。」

「なんか、悪い予感がしたわね、ルーくん...?」

「あ....ああ....」


「で、それが突然、青白い光を発して明滅し出したんじゃ!「いかんー!」と何かを悟った将軍は自分の率いる全軍に向けて撤退命令を叫び出したんじゃったが、もう遅かったんじゃ。」

「ルーくん....。」

「ええー。それって」

「あれだよなー。」

「大量な命を奪える兵器、私達の世界にもありますし、ファンタジー世界なら、尚さらですね....」

「御主達も分かっておるな?で、それをやれば助かるかもしれないと思った将軍は結局、カンの首を刎ねたんじゃったが、死してもなお胸元にある物体の明滅が消えぬままのを見ると、走り出した彼らであったが、もう間に合わなんだ!視界が真っ白い光によって覆われた全軍はその破壊粒子を持った光に呑み込まれ、消滅させられたんじゃった。生き残りは皆無と言われており、後になって現場を見にきた神族の調査部隊によると、戦場である<ブルノアー高原>が一夜にして、半径50シレが底の見えぬ深くて暗いクレーターとなったんじゃ。」

「「「「......」」」」

と、声も出せずに真剣に聞いていた俺ら4人に

「その後、ミスダン族の住んでいた領土は全て神族に征服され、支配下に置くために全土が神族の新領土として吸収され、統治され続けてきました。いつになったか、正確には記されていませんでしたが、後々、カン・ウェイの故郷の旧都である<ガルフォース>にて、一般人の一家の中にあった地下通路へと繋がる秘密ドアを偶然に発見してしまって、それで自然原料と用途不明な危機や機械がたくさん備えつけられている一室を見つけました。その後、研究の末に、どうやら、戦場で使われたあの大蒸発を起こした真っ白い玉を作るために用意されていた研究部屋みたいなものであると結論づけられました。」

女王陛下に代わってユリンが答えると、

「で、その後は?」

「その後は機密事項のために、話せませんが、その真っ白い玉はそれ以降、<リヴァス核>と名付けられて、製作方法は厳密にして秘匿され続けてきました。」


と、昔にあった悲惨な出来事を脳内に浮かべた俺たちではあるが、でもそれって、兵士が多く出陣された戦場での出来事であったよねー?都市とか一般人のいるところではないんだよなー?なら、過去に日本や地球の各地にある民間人のいるところへの無差別破壊行為を行い続けてきた、<とある大国の国軍>よりましじゃないかー!

と、そう思い至って、仲間の3人を見回したら、彼らも俺に同意するかのように、落ち着いた雰囲気を見せて女王陛下に向き直った。


「じゃ、それで、何であの化け物、<神滅鬼>が生み出されるようになったの?」

「正確な原因は歴史書に記されていないので、分かりませんが、16000年も前に、<ガルフォース>旧都にて、急に3匹の不気味な外見をしていた怪物のようなものが出現した。そこにいた多くの一般の神族を圧倒して、喰らい尽くしたと言われています。研究所の部屋が深く関係してあるという推察がされていて、それ以降、あの怪物は<神滅鬼>と呼ばれるようになったんです。一般の神族を簡単に滅することができるからそういう名称になりましたね。まあ、その3匹は後になって、大神であらせらるラニム様のお右腕とも呼ばれたムラン様の後継者、ガリム将軍によって討伐されましたが。」


すごいなー、将軍級の力を持った神族って。ん?<ミスダン族>って確かに、大半が現在に至って神滅鬼と戦ってきた(ヴァルキューロア)より強いと言われてるんだなー?なら、なんで、一般の<ミスダン族>よりも遥かに高いじんしりょー何とかを持っている一般の<神族>がそう簡単にあの3匹の神滅鬼に喰われたの、それ?


「神滅鬼には様々な種類があって、どれ程強いかによって、階級としてランキングされてきました。で、さっきのディグラン平野で戦った<サカラス>という巨大な図体を持っているムカデは<ラングル級>と分類されて、上からランキングすると、6番目強いと言われていますよ。」


「なんですってー!?あれほどめっちゃくちゃな伸縮速度を繰り返せるような触手を何十本も持っていたあれが6番目強いなのー!?」

と驚愕とした表情になった梨奈に答えるように、

「ええ、そうですよ。で、ガリム将軍が討伐なさったと言われた当時の3匹は階級として、一番強い神滅鬼と確認されてきましたよ。それらは<デージャス級(神話級)>と称されて、一般の神族ではどうしようもない力を持っていました。神滅鬼の強さはどう測れるかというと、それはどれ程に相手から受けた神使力による攻撃を上手く吸収、防ぐかという点にあります。」


「へえー。それなら、あのデージャス級を三匹も討伐できたガリム将軍ってマジで強ええっすね!なあ、有栖川!」

「ええ。さっきの恐ろしい破壊力のある触手がついているムカデを簡単にやっつけたヴァルキューロアである皆さんより遥かに強い三匹を討伐できたんですから、ガリム将軍は本当に敵には回したくないお方ですね。」


「でも、それが切っ掛けで、神族の全てが滅亡させられそうにはなったんじゃったが。」

ん?それがどうして?

「ユリン卿よ、続けてくれー」

「御意、陛下。しかし、事はそれだけでは済ませられなかったんです。討伐任務を無事にこなし、大衆に出迎えられながら神都に凱旋して大神城へとお戻りになったガリム将軍でしたが、いきなり自分の身体のいくつかの箇所に痣のような物が膨らんできました。その後は、まるで伝染病にでもかかっていたかの様に、神都の住民全てが大量の痣を全身に膨らませて、あっという間に神都の全員の容態や体力が著しく悪化されて、身に宿る神使力も枯渇状態になりましたので、皆が床について数日も経たない内に為す術もなく他界しました、大霊界(ファルートロス)という魂が行くことになる別次元へ。」


ユリンに続いて、

「神都が壊滅状態になってからも、その病が他の神族の全域に行き渡っておって、神族だけじゃなくて、一般のミスダン族共々が滅亡寸前にまで追い込まれておったんじゃったよ。で、唯一、その病にかかってない夥しい程の神使力を持った大神であらせられるラニム様はガリム将軍以外の腹心二人を引き連れて、大聖浮遊神殿(ヌーリンヌ)へと行かれましたんじゃ。そこで、神殿の中央におる祭壇に跪いて3人は揃ってラニム様の母親であらせられる大母神シェレアーツ様にお祈りを捧げたんじゃったよ。その病の効果によるものなのか、既に他界してしまった殆どの神族は蘇らせる事ができないんじゃったので、もし次に神滅鬼がまた姿を現す時にはその病の影響を一切受けてない、グロスカート大陸に住んでいた当時の人間族が脅威に晒される事になるとお心配になられたラニム様は我々の先祖様を慮って、自分のお母様へ祈りましたんじゃったよ。」


「その祈祷の内容とは?」

と尋ねる俺に、


「人間族があの神滅鬼と戦えるように、彼らと同じか、それ以上の神使力を人間族に授けるよう、シェレアーツ様にお祈りを捧げましたよ、早山様。」

と答えたユリンさんである。


「で、3人はそうしたら、歴史から完全にその姿を消したと言われておるよ。どこにいらっしゃるのか、何をなさっていたか、綺麗さっぱりこの世界から全ての痕跡や影響をお消しになったんじゃったよ。」

「でも、その件から、シェレアーツ様も初めて、人間族にお声を聞かせになるという事になったんですよね。」

「そうじゃなー。聖虔白女(シーヴァ)という選ばれし者だけがシェレアーツ様のお声を聞ける資格を持つようになってきおったのうー。」


と、頷きあった女王とユリンへ、

「じゃ、それで、どうしてあたしたちがここへ召喚されてきたという流れになってるの?」

と聞いた梨奈へ、

「実は、あの3匹のデージャス級の神滅鬼が出現した事以降、何事もなく14800年が経過しましたが、1200年前、つまり、1神援暦になって初めてまた神滅鬼が現れましたよ。当時はケオロン王国で、ラングル級よりもっと弱い、ジョドッス級が50匹出現して、王国の全土を破壊しつくしたと言われましてよ。で、当時の聖虔白女(シーヴァ)である隣国のリシュナ王女はシェレアーツ様からお言葉を頂いて、自国が誇るとある名門学園から10人の少女を呼び寄せたんでした。で、その場になったら、シェレアーツ様から承ったお言葉その通りに彼女達の前で何かを唱え始めたら、5分後は戦闘可能な神使力を有するようになりましたよ。で、シェレアーツ様から承ったお言葉を通して、様々な現神術を彼女達に教えて上げて隣国の救援に向かわせました。無事で50匹のジョドッス級を討伐した彼女達でしたが、次にリシュナ王女から発せられた言葉に誰もが驚愕しましたよ。」


それって、どういうことなの?と、考え込んでると、

「ユリンさん、それについてはわたくしも多少は詳しいんですのよ。話の続きをわたくしに譲ってもらえるかしら?」

と、長い沈黙の後、ようやく声を発したエレン姫である。


「ええ、いいですよ。」

「よろしい。では、リシュナ王女の発言にはこう含まれていましたの「200年後、大量の神滅鬼が各地、出現すると同時に、無くなったはずのカン・ウェイは神滅鬼の王として蘇って、リルナという世界を滅ぼしますの

。この世界にいる人間族はそれを撃退できる程の高度な現神術の行使を必要とした神使力の容量を体内では耐えられないので、「聖なる神の使者を仰ぐ演舞」という儀式を行って別の世界から「神の聖騎士」を召喚して、それらを討伐してもらうよう訓練させますわよ。」


ふむ。確かにこの世界の事情は我々地球人には関係のない事だ。でも、彼らも必死だったんだろうなー。


「で、200年後、無事に召喚された「神の聖騎士」様は訓練の末、確かに蘇ったカン・ウェイと大量の神滅鬼の集団を倒しましたのよ。でも、当時の聖虔白女(シーヴァ)によりますと、また神滅鬼が姿を現したら間もなく、カン・ウェイが数年近い内に再び神滅鬼の王として蘇って、前よりもっと強い力を以ってして、この世界を確実に滅ぼしにくると言われてますわよ。神聖なるジラン教書によりますと、その日は「終わりの饗宴」とも呼ばれているんですの。」


と、エレン姫の言葉に、俺たち4人はお互いの顔を見合わせた。

「それで、その大母神に「神の聖騎士」として選ればれた私達がこの世界へ召喚されたというわけですね?」

「そうですわ。」

有栖川さんの問いに対して答えたエレン姫であった。


「2年も前から、神滅鬼はまたも数匹、出現しだして、一月毎に各地で増え続けてきましたなので、間もなくカン・ウェイが再び蘇るという前兆が顕著になりましたので、昨日から、召喚儀式をするようにとユリン枢機卿に勅命を下した我がゼンダル王国のネネサ女王陛下でしたわよ。」


「なので、どうか、この世界を救うために、現神術や神使力を上手く使いこなせるように、訓練をしに聖メレディーツ女学園へ通ってはもらえないかのうー?「地球」という世界からやってきた、神の聖騎士の皆さんよ?この通り、お願いしますーー。」

と、女王が俺ら4人に真摯に頭を下げてきたので、お互いを見回した後、俺の方からこう言う:


「元の世界に帰る方法ってあるんですか?この質問の答えによって、貴女達のお願いを聞くかどうか決めるので。」

「神聖なるジラン教書の内容によりますと、「聖なる神の使者を仰ぐ演舞」によって召喚されてきた「神の聖騎士」様は「終わりの饗宴」にて復活したカン・ウェイを討伐し終えたら、シェレアーツ様のお力によって元の世界へと戻されますよ。」

そう答えたユリンなので、じゃ、俺たちの取る行動は一つしかないだろうー。隣の席に座っている梨奈の意思を確かめるべく彼女の方に目を向けたら、

「...うん...仕方ないわね、ルーくん。日本に帰るために必要なこと...なのよねー。」

俺の手を握って小さく微笑むと、頷いた。他の仲間二人も俺に向き直って、全員が意思統一するかのように、力強く頷いてみせる。そう。もう答えは分かりきっているよ、みんな。俺たちの愛する日本へ帰るために、なんだってやってやるー!


「分かりましたよ、ネネサ女王。その聖メレディーツ女学園へ通わせましょう。」

と、答えた俺であった。というか、「女学園」なんだよねー?ねー?なんで?ってか、さっきの話によると、最初に現シンとか何とかが使える人間って10人の少女っていったよねー?なんで、女だけ?ここの世界の男って使えないのかよ? きっと、カン・ウェイという全ての元凶が男だから、なのかな? 今度、これについて詳しく聞こうー、うん。 


じゃ、女学園ってことは、女子がいっぱいいるところじゃんー!ううううおおおおおーー!それって超ラッキじゃんー!うほほー!これは夢にまで見た、ハーレム生活が送れそうじゃんー!そこの席に座っている遼二を見てみると、あいつも俺と同じ気持ちか、何やら期待のこもっている眼差しで女王の方を向いて一心になって話を聞いているな。でも、あいつの隣席に腰を降ろしている有栖川さんが何か嗜虐的な笑みを浮かべてる途中は敢えて見ないようにするー。うんー!


と、ガッツポーズを取って舞い上がっていると、隣の席に頰っぺを膨らませている梨奈様に足指を踏まれた俺でありましたー! あー確かに超痛ええけど、ちょっとだけ気持ちいいと感じるのはやっぱ、いつものドMな俺であるね。


やっぱ、持つべきものは幼馴染ね、それも女の子でー。


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