第10話 怒り。そして決意。

「あたしの名前は森川梨奈(もりかわりな)です。元の世界では「日本」という国の国民で、分類されている人種も「日本人」ですよ。で、あたしはそこの3人とは友達同士で、黒い肌色の方とは昔からずっと共にしてきた.....家族...みたいなものですー。」

と、何か言いづらそうに自己紹介を済ませた梨奈に続いて、

「俺の名前は早山ルーイズ(はやまるーいず)です。元の世界では「黒人」という人種に分類されているものですが、「日本」という国に産まれていい友達にも囲まれた、恵まれた環境で育ってきたという自覚も持っています。なので、そこの国籍も持っている俺は、今までの人生の幸運に対して恩返しがしたいので、社会貢献もたくさんしてみたいと思う国民の一人であります。早く自国に戻って、我が産まれの故郷である日本国をもっと豊かにしたいという夢も持っています。最後には漫画家になるという事も検討してきたので、それもやってみたいなと常々描き方の練習を続けてきました!」

と、なるべくよい第一印象を女王陛下に抱かせるべく、元気よく自分の内なる思いを全部口にした。

「くす..!(居眠りばかりしてたのに、何寝言いってんのよ、ルーくんは?他人とか社会とか国の事を思うより、まずは自分の方から改善してくのが先決でしょー!もうー。まあ、でも確かに志は立派だけどね。ルーくんのお父さんの件がなければ、きっと今頃はオタクの文化に影響されすぎずに勉強に集中できたのにね。)」

と、俺の自己紹介を聞いて何か苦笑しながらブツブツ言ってる梨奈であるが、一体何の事だ?

「それは確かによい心構えを持っているよのう。そういう忠実な心を持っているからこそ、「神の聖騎士」として選ばれたんじゃろうねー。じゃ、他の二人は?」

「僕は春介遼二(はるすけりょうじ)と言います。さっきの二人と同じで、「日本」という国に生まれて育ってきた、「日本人」です。で、そこのもう一人の女性の方とは4年からの付き合いも持っている、いわゆる、腐れ縁みたいな物です。(まあ、実際は苛められっぱなしばかりの関係だけどねー。確かに時々そういうの気持ちいいと思うときもあるにはあるが、たまに普通の女の子とも友達になりたいーつうかー。)」

と、自己紹介を済ませた遼二が席についた途端、何やら考え込んでいるようにテーブルに視線を下げて上の空って感じの表情になってるんだけど、有栖川さんの方に目を向けたら、なんか目を細めて微笑を浮かべたまま遼二の事を見てるけど、なんでだろうー?

「私は有栖川姫子(ありすがわひめこ)と申します。日本国に籍を置いている有栖川財閥という何台の会社も傘下に抱えている、大きな財力財産グループの跡取り娘です。春介君の言った通りに、4年も前からのお付き合いがあり、唯一、もっとも気心の知れた異性の友人でありますよ。(だって、私の本質ードSな内面を快く受け入れてくれてるのは遼二君だけだからねーハァーハァー)」

そういうやいなや、なんか急に息を荒げる有栖川さんだけど、どうしちゃったのかな.....


「じゃ、モリカワにハヤマにハルスケにアリスガワよのうー御主達の名は?」

「「「「そうです!」」」」

と、一斉に答えた俺たち4人だけど、何か俺らの名を言う時の発音ってさっきのユリンさんやエレン姫より酷くないかー?と、女王陛下を見つめながらそう考えると、


「では、次はわたくし達からの自己紹介の番ですわね。ネネサ女王陛下は国の長の座に君臨していらっしゃるお方ですから、ご自分の名乗りを最後に控えていらっしゃる様にとさっきおっしゃいましたので、まずはわたくし達、<エレン王族直下隊>から構成されているチームの全員から自己紹介を行いますわね。」


そういったエレン姫はは席から立ち上がってから、俺達の方を見回しながら、威厳や自信のあるオーラを湛えて自分の事を紹介する。


「わたくしはこのゼンダル王国の第一王女、エレン・フォン・シェールベットと言いますわ。つまり、ここのネネサ女王陛下とシェールベット国王陛下の第一娘でもありますすわ。この王都、フォルールナの北側に建てられた、聖メレディーツ女学園の2年生で、<エレン王族直下隊>の隊長でもありますわ。わたくしは今年に入って既に16歳になりましたけれど、下に妹は一人いるので、もし機会があれば、神の聖騎士の皆さんに見せますわね。」

と、自己紹介を終えたエレン姫に続いて、


「ワタシの名はローザ・フォン・ファイットレームです。ファイットレーム家の一族で、ファイットレーム公爵の一人娘であります。聖メレディーツ女学園の2年生で、エレン殿下とは同じ教室に属しています。現在はエレン殿下がお率いになった<エレン王族直下隊>に勤める一員ですね。」

と、紫色ポニーテールを揺らしながら席から立つと、恭しく俺らの方に頭を下げたローザと名乗った、エレン姫の直ぐ右側の席についていた少女である。どうやら、この子はお胸が少し小さめのようで、少し残念ー。


「わたしはネフィールですよー。ネフィール・フォン・セーラッスです。セーラッス伯爵の次女ではありますが、訳あって、エレン様の部隊の一員になったんですよねー。わたしも2年生ですけどーー、エレン様やローザとは別組の教室に属します。」

と、何か暢気とした雰囲気を携えたまま自己紹介を終えた緑色ショット髪な少女、ネフィールなのだが、さっきはネフィーと聞いてきたので、多分それが彼女の愛称だったんだなと推測できた。ふと彼女の胸元を見てみると、エレン姫、有栖川さん、梨奈やユリン程じゃないにしても、それなりの大きさを誇っている。


「エリーはエリーだよーとはいいたいけど、やっぱこの場ってそういうだけじゃいけないよねー?ね~?なのでーフルネームはエリーゼ・フォン・オスハイートだーじゃなくて、-ですよ~~。ほかと違って~、1年生ですけどー<エレン王族直下隊>のいちいんとして、がんばっていっくーよ~!」

と、何やら満面な笑顔を見せて変な抑揚がついたまま、まるで歌ってるかのように自分を紹介したエリーゼ。やっぱ、子供じゃんかよーお前はー!見た目は俺たちと同い年だってのに、一々の言動は10歳かそれ以下だよなー!でも、それにしても、背が他の子たち3人より一回り低いのに、結構な乳房がおありのようだなー。顔も可愛い部類に入るし、なんか癒されるねーああいうタイプって。


「神の聖騎士の皆様、さっきから名乗った覚えがあるとは思いますのできっと既に私がなんて呼ばれているか分かっていらっしゃるとは思っていますが、女王陛下の御前での場なので、もう一度、今度は正式な自己紹介を始めさせていただきますね。では、私はユリン・フォン・マスタールスと申します。15歳なのですが、神官としての責務を11歳から務めてまいりましたので、現在は枢機卿という地位までを獲得しています。まあ、今の地位に至ったのには、様々な理由があったのに加えて、自分の体内で保有する神使力がこの国のどの神官より一番高いという事もありますね。しかし、得意とする現神術は防御系や治癒系ばかりなので、<ノルン>という攻撃系しか使えないのであまり戦闘向きなタイプではないんですけどね。」


と、得意顔になってにっこりと俺らの方に向き直った。やばい!超綺麗な笑顔をしていらっしゃるなーユリンさんって。と、5人の少女達の自己紹介が済んだので、全員がネネサ女王陛下に視線を集中させているところ。


「妾はネネサじゃよー。このゼンダル王国が元首、ネネサ・フォン・リズーマンでおる。御主達、<神の聖騎士>達をこの世界、リルナへ召喚するよう、ユリン卿に命じた者じゃ。」


「「「「!!!!」」」」

と、衝撃の事実を聞かせられた俺たち4人がちょっとだけ驚愕した表情になったのである。でも、直ぐに真剣な顔付きになって、冷静に分析しようという構えを取った。やっぱり、ずっと前から、あの聖騎士とかって言葉で俺たちの事を呼んできたから、きっとそれっぽい理由でこの世界へと転移させられたに違いないとは思ってきたよー!でも、心のどこかで、それが故意的に行われたという事を信じたくないと言うか、何かの次元トリップがあってここへと転移させられてきた地球人がこの世界の歴史からして何百年も前からあったのかと思って、それで転移者が全員、<神の聖騎士>と称されるようになったとか思ってたけれど、まさか一国の国家元首である彼女がそう仕向けたように俺たちをここへ転移させてきたとは.....思いたくないけど、実際に張本人の口から聞いたし、もう疑いようもない事実なんだよなー。

「やっぱり、そう来たね、有栖川?」

「ええ。もうさっきから察した事ですね。今更、驚くも何もないです。」

「....理由....理由を聞いてもいい....?女王陛下...」

と、小声で聞こえてきた、ちょっぴり肩を震わせて機嫌が悪くなりそうな梨奈がいるので、俺も彼女の質問に賛同してで女王へこう聞いた、

「それ、もし本当なら、なんの理由があって、部外者である俺たちがここへ召喚されてきたか説明して貰えるよね、ネネサ女王?」

この世界にきてから、初めて異世界人に対して語尾を強めた俺である。なんかわかんないけど、少しだけ胸の底に怒りめいたものが湧き上がるのを感じるので、それを抑えるのに必死だった。


「よかろうー。御主達は確かに、無理遣りに元いた世界からここへ転送させられてきたようなものじゃし、誘拐とゆってもしょうがないよのうー。それを悪いとは妾も思っておる。けど、事態が事態やし、他に代替案がおらなんだ。どうか、こちらの事情をよく聞いてよいかのうー?」

「...聞く以外道はないらしいので、そのように機嫌を取るような聞き方をやめて頂けませんか、ネネサ女王?何故なら、力のある側はそちらですし、さっきの化け物を前に何も出来なかった無力な私達からしたら、貴女の言う事に仕方なく従うのは自明の理ですので、そのようなもったいぶった言い方を止めて下さいませんか?」

と、何やら声色を冷淡な風にして慇懃無礼な口調になってやがるぞ、有栖川さん!そういう彼女を見るのが初めてだから、ちょっと怖いー!

俺たちの怒りを感じたか、他の5人の少女も何か険しい表情になって


「......じゃ.....まずはこの世界はどういう状況におるか、最初に知っておきたいのは全ての発端、<ブルノアーの悲劇>からじゃー。この悲劇がおったから、神滅鬼が生み出されたようなものじゃからなー。おいーユリン卿ー!」

「はーはい!女王陛下!なん...何でしょうかー?」

ネネサ女王のいきなり発した大声で呼ばれてびくっとなったユリンである。

「御主が既にカン・ウェイについて、全部を話したかの?」

「いや、まだ話を終わってませんでした。ムラン将軍との一騎打ちで負かされたところまで伝えましたが、続きをしようとしたら、サカラスが攻撃態勢に入ったのを見ましたから、その理由で邪魔されました。」

「ならよい。今度は妾から話しておく。神の聖騎士の皆よ、御主達をこの世界へ引き寄せたのは本当に悪かったとは思っておる。我々の世界の事情の所為で、御主達を戦いに向かわせる訳にもいくまい。しかし、全てを聞いてからでいいんじゃから、先ずはどうして神滅鬼が産まれてきたか、現在この世界がどういう問題に直面しているか、後、なぜ戦闘可能な神使力を有するものは召喚されてきた異世界人以外、女性しかいないのか、聞いてくれないかのうー?」

顔を見合わせた俺たち4人。もう答えは決まっている。


「....いいでしょうー。聞かせましょう、ネネサ女王陛下。」

と、低い声で言ってやった俺である。さっきのあの平野で全員で誓い合ったんだ。絶対に、我らの愛する日本国へ帰るんだってな。なので、早い事この世界の状況を先に知っておいて、どうやったら地球へ帰れるのかを聞くんだ。そう強く意を決して隣に座っている梨奈に目を向けると、


「うん。」

以心伝心によるものなのか、彼女も俺に同調するように、赤髪ツインテールを揺らしながら軽く頷いてみせたのであった。引き締めたちょっぴり真剣な表情を浮かべてるが、それでも綺麗に映るのはさすが、美少女たる容姿を持っているからこそできた現象だなー。ああーよくよく見れば本当に可愛いねー梨奈! やっぱ、持つべきものは幼馴染だなーーー、それも女の子の。


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