23話 優しいor激しい

 お休みの日に惰眠を貪りたいという欲求が微塵もないと言えば、それは嘘になる。

 にもかかわらず一度として早朝の散歩を嫌だと思ったことがないのは、当然ながら萌恵ちゃんと一緒だからだ。

 大好きな人と爽やかな空気を吸いながら体を動かす。毎週の楽しみと言っても過言ではない。


「萌恵ちゃんは優しいエッチと激しいエッチ、どっちが好き?」


 住宅街をぐるりと回って道路沿いの歩道を進みながら、パフェとクレープならどっちが好きかと訊ねるようなノリで質問する。


「えっ!?」


 予想外の問いかけに、萌恵ちゃんは驚きのあまり体をビクッと震わせた。

 つないだ手から、その動揺っぷりが伝わってくる。


「あっ、急にごめんね。周りに人もいないし、ふと気になったから訊いてみたんだけど……外でするような話じゃないよね。ごめん」


 驚かせてしまったことを謝り、場所をわきまえなかったことについても謝罪する。


「この話は帰ってからゆっくりするとして、どっちか選ぶのは難しいと思うな~」


「どういうこと?」


「だって、真菜は激しい時でも優しくしてくれるから」


 そうか……優しいエッチと激しいエッチを別物として扱っていたけど、共存することもできるんだ。

 もしかすると、他にも気付いていないことがあるかもしれない。

 帰宅後のエッチ談義は、有意義なものになりそうだ。


***


 予定通り家に着いてからエッチ談義を始めたものの、思いのほか刺激が強く、新しい発見をする前にお開きとなってしまった。

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