22話 少し汗をかいたから

 放課後に少し寄り道をして、食材を買ってから家に帰った。

 今日は快晴で夕方になっても気温が高かったこともあり、二人とも若干の不快感を覚える程度に汗ばんでいる。

 そこでふと、学校用のカバンに忍ばせている汗拭きシートが残り二枚になっていたことを思い出す。

 手洗いうがいを済ませて要冷の品物を冷蔵庫に入れた後、リビングで一息つく私たち。


「萌恵ちゃん、これ使うから服脱いで」


 汗拭きシートの袋を取り出しつつ、脱衣を促す。

 私が萌恵ちゃんの体を拭くのは決定事項。有無は言わせない。


「は~い」


 萌恵ちゃんはなんの疑いも持たず、素直にブラウスのボタンを外し始めた。

 やがて上半身だけ裸となった萌恵ちゃんが、私に背を向けて床に座る。

 欲を言えば下も脱いでほしかったけど、そうなると目的が変わってしまう可能性もあるので仕方がない。


「それじゃあ、拭かせてもらうね」


「うんっ」


 いきなり汗拭きシートを肌に当てると冷たくてビックリしてしまうので、事前に一声かけておく。

 きめ細かく滑らかな珠肌の美しさに見惚れつつ、シートを肩に触れさせる。

 反対の手で髪を持ち上げると、甘い香りが鼻孔をくすぐった。

 学校でも同じようなシチュエーションを体験する機会はあるけど、こうして素肌をまじまじと眺めるわけにはいかない。

 自宅だからこその利点を存分に味わいながら、大義名分である汗拭きを行う。


「冷たくない?」


「平気だよ~。ヒンヤリして気持ちいい」


「前の方も私が拭くね」


「えっ、前は自分で拭――」


「私に拭かせてっ。お願いだからっ」


 背中を一通り拭き終わり、私は萌恵ちゃんの正面に回って半ば強引に前面を拭き始めた。

 視界の中央では、夏に食べたスイカよりも立派な果実が二つ、これでもかというほどに存在を主張している。

 柔軟性と弾力を兼ね備えた、すべすべもっちもちのおっぱい。

 己の本能を必死に抑え込み、右側の胸をそっと持ち上げる。

 果実に例えることの多い部位ながら、いま脳裏によぎったのはマシュマロだった。

 ……ゴクリ。

 理性の崩壊を予感しつつも、乳房の下部と付け根を丁寧に拭く。

 胸が大きい人いわく、ここは汗をかきやすく蒸れやすい場所とのこと。

 もちろん私には無縁の話なので共感はできないけど、確かにじっとりと汗ばみ、解き放たれた熱気が手にまとわりつく。

 一線を超えてからというもの、私の理性は明らかに我慢弱くなっている。

 ここはひとつ、しっかりと気を引き締めなければ。

 心頭滅却。明鏡止水。

 爆発寸前だった情欲を心の奥に封じ込め、汗拭きシートを走らせる。


「あんっ❤」


 意図せず指が乳首をピンッと弾いてしまい、突然の刺激に萌恵ちゃんの口からエッチな声が漏れ出る。

 その瞬間、無我の境地に至ったとさえ思えた私の心は、いとも容易く理性を失った。


「萌恵ちゃんっ」


 私は萌恵ちゃんを押し倒し、その唇を自らの唇で塞いだ。

 蕩けるように甘く濃厚なキスを終える頃には、汗を拭くという当初の目的はすでに意識の片隅へと追いやられていた。

 シャワーを浴びるほどではないと思って汗拭きシートの使用を提案したけど、どうやら今日は普段より早めにシャワーを浴びる運命だったらしい。

 似たような状況で毎度のごとく本能に身を委ねてしまうものの、なんだかんだで二人とも満足しているので後悔はしていない。

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