第3話 ネクロマンサ-ちゃん、いらっしゃ~い

 まさか、ハーピーちゃんまでかいな。

 しかも、「鳥インフルエンザ」やなんて。


 この間のオークちゃんも、ちゃんと調べたら「豚インフル」やったし。


 あ、殺処分なんてかわいそうなコトはしまへんで。ちゃんと直りまっさ。


「えー、では、気を取り直して」


「ククク、やっとボクの出番が来たね!」


 ブーッ!

 急に出鼻をくじかれて、わたくし、不覚にもズッコケます。


 ローブのフードで顔を隠しながら、少女が顔半分を手で覆ってますわ。


「まだ呼んでへんから呼んでからにしてな」


「さっさと呼んでくれたまえよ」


「ほな、いらっしゃ~い」



「ククク、ネクロマンサー様の登場だっ! ぐらころ!」


「ドヤ顔で出てきてなんやけど、あんた天丼やで」


「な、なんと! ボクの渾身のギャグを誰が真似をしたと?」


 いや、誰でも思いつきまっせ、あんなん。


「まあいいか。それで、勇者抹殺すればいいと?」

 

「いやいや、勇者を誘惑して欲しいんや」


「それは専門外だね。ボクみたいなボーイッシュなキャラに勇者のような男が食いつくとは思えないよ。この件は早くも終了だよそれじゃあ」

「待たんかい」

「うわあ、フード引っ張んないでよぉ」


 ローブのフードを引っ張ると、ネクロマンサ-ちゃんはおとなしくなりました。

  

 これはまた。自分に危害が及ぶと分かった途端に逃げるタイプかいな。厄介やで。

     

「早口でまくし立ててごまかそうったって、そうはいきまへんで。あんさんもオナゴや。勤めを果たしてもらわんと」


「だって、女の子っぽいことしたくないから、こんなキャラにしたのに」


「そのキャラが活きる場合もあるんや。ええか」


 逃げようとするネクロマンサ-ちゃんの服を、さらに引っ張ります。

 服がさらにズリ上がりました。

 

「ななななにをするんだ魔王のえっち!」


「なにがえっちや。ボーイッシュが売りなんでっしゃろ? しゃんとしい」


 わたくしは、ネクロマンサ-ちゃんに眠る魅力を伝えます。


「あんな、ボーイッシュってのはある種メインヒロインの象徴ともいえるんや。よう思い出してみいや。少年マンガのヒロインって、たまにボーイッシュやったりしますやん? あるときその子の女子的部分が露見して、急に主人公を意識し出すシチュ!」


「ボク、青年漫画誌か読まないからさぁ」


 おっさんか。


「まあええわ。ギャップ萌えを狙えば、男子を引きつけられますねんで」


「ボクにそんな高度なテクなんて使えないよ」


「とっておきの呪文がありますねんよ、お嬢さん。わたくしのマネをしてや」


「わかった」


「いくで、せーの、『タマ・ニハコンナン・モエーデ』! はい」


「タ、タマ・ニハコンナン・モエーデ!」


 そう。たまにはこんなキャラがいても、恋愛模様にちょっとしたスパイスが利いてええんですよ。


「ありがとう魔王、ちょっとやる気が出たよ」


「さよか。ほな衣装合わせや」


「ダイスを振って……ゴスロリかぁ。しかも乙女系だよ。中二コーデらしさはあるけどね」


「かまへんかまへん。きっと勇者さんには刺さると思いまっせ」


「分かったよ。じゃあ言ってくるね、魔王」



――三日後

 

「大変です魔王サマ」


「またかいなセヤナちゃん」


「あの子、ネクロマンサーでしたよね? 『予行練習だ』ってゾンビ相手に洞窟でアレの練習をしていたら、勇者が来てしまって。ネクロちゃんが赤面しながら帰ってきちゃいました」

 

 ブーッ!

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