フェチ11:ツボ
こうして公園のボランティアから始まった「佐藤ヒーロー化作戦(オレ命名)」は次々と様相を変えて展開されていく。
「朝の出会いは思った以上に
公園での作戦が終了した後、聖法院とコイコイは再びうちの台所で作戦会議を始めた。
「勇者はもういいのか?」
「いや、勇者は続けてくれたまえ。さらに作戦を進める。当分、ヒロ氏は
確かに、勇者であれば彼女の気をひけるだろう。なにせ勇者だからな。
「次は、来週あるはずの試験だ」
「来週、試験、だと!?」
驚いたのはオレだけではなく、コイコイもだ。
「うむ、私も利用できるチャンスを探っていて、やっと判ったことだ。先生以外の誰も知らなくて当然だね」
「無慈悲な……なぜそんな仕打ちを……」
「学生が入試、春休み以降、勉強をしていたかどうかを試す抜き打ちのようだよ」
「「……来週なら、こいこもいこいも受けるんでしょうか……?」」
びくびくしているところを見ると、コイコイの二人はあまり勉強が得意ではないようだ。
「安心したまえ。転入試験で使われてたような問題が出ると思われる。なにせ、休みの間は何も新しいことを習っていないんだからね」
「「なるほどー」」
二人が目を輝かせて喜んでいる。わりと勉強が嫌いなんだな……
「ところで、ヒロ氏は
「……ショトウ……あ、頭に
「「砂糖の効果ですねー」」
「……ちょ、ちょっとしたお
くっ、恥かしい!
「佐藤、砂糖、サトウ、ショトウ効果、サトウ効果……ふふっ……」
聖法院はそんな恥かしいダジャレで笑っている。
「で、その初頭効果っていうのはなんだ?」
「まぁ、簡単に言えば、第一印象がもたらす効果だよ……ふふふっ……」
「ほう?」
「人は人と出会った時に第一印象を自分の中で構築する。例えば、ヒロ氏が私を変人だと思ったとしよう」
確かに、ちょっと変な奴だとは思ったが……変人とまでは思ってないぞ……?
「するとだね、これから私が素晴らしく天才的なことをしてもヒロ氏はこう思うはずだ。ああ、変態にも才能があるんだな。とね」
「それは、そう、かもな?」
「だがね。私がその『素晴らしく天才的なこと』を最初にしていたらどうだと思う? その後に、このフェティシズムについて熱く語るわけだ」
「そうだな。その時は『天才はやはり、どこか人と違っているものか』と思う気がする」
「それが正しい反応だとすると、最初の印象でがらりと人物像が変わると思わないかね?」
「確かに、なるほどな……」
「それがつまり、初頭効果……ふふふっ……」
また笑った。わりと笑いの
ちょっと変顔をしてみたが、それはあっさり無視された。
……少し寂しい。
「こほんっ……つまり、第一印象はずっと引きずるってことか?」
「君は今、小鳥居女史に対して『清く正しく、そして勇気ある好青年』というイメージを与えたわけだ」
「ほう、それは確かに順調だな」
「で、試験の話に戻るが」
「君は小鳥居女史に、頭も良いと印象づけねばならない」
「な……に……!?」
つまり、それは……
「来週の試験で学年トップに立って見せたまえ」
「そんな無茶なっ」
「ほう、選ばれた存在であるはずのヒロ氏が無理だと?」
「ぐ……ぬ……」
はっきり言って、勉強はあまり得意ではない。
興味のあることなら、けっこう勉強するのだが……
「まぁ、安心したまえ。ここに試験問題がある」
「なぜある!?」
「はっはっは、言葉が足りなかったようだね。去年の、試験問題だ」
「あ、ああ、なるほど……?」
「そして、さらに一昨年の試験問題もあったりする」
「なぜ!?」
聖法院は転校してきたばかり。なにもかもがおかしい。
「最近はインターネットでなんでも買えるのだよ。そんなことも知らないのかね?」
「そんなもん、売ってるのに驚きだが、買う奴にも驚きだ……」
「まぁ、しかし、ヒロ氏は感謝したまえ。問題はある法則に基づいて形成されていることが、この二枚の問題用紙で判明しているっ」
「お、おおぉ……」
「「ワンダバー」」
「というわけで、今から勉強会を始めるっ」
一瞬にして鳴り止む拍手。
「勉強も簡単だよ。警戒しなくていい。物事を覚えるには
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