フェチ3:運命との出会い
妙な夢を見た。
親の生死が不明になった。
そして急に妹ができた。
なんだか、めまぐるしい日だ……しかし、これも選ばれたオレならではの人生。
実にワクワクするではないか!
……さすがに両親のことは少し心配だが。
もし、本当に両親がいなくなったとしたら、オレはまず生活をどうやって
悲しむよりも先に、生活を気にする自分が
しかし、話を聞いただけなので
それに銀行の
なにかしら、入れ違いがあったのではないだろうか?
もしくは聖法院やキルヒナーが嘘をついているか……
だとすれば、一体、なんの目的で?
うーん……まぁ、今すぐに答えはでないだろう。なにか裏があるのなら聖法院も簡単には話さないだろうしな。後で両親に手紙を書いて確かめるか。
なに、選ばれたオレの選ばれた両親だ。死んではないだろう。
「ところで、入学式にいくために、急ぎ学校へ行きたいのだが」
台所の食卓に並んだ白飯、味噌汁、玉子焼きを、聖法院は上品に平らげ言い放った。
「おう……?」
「学校まで案内して欲しい」
「……ほう?」
というわけで、二人で登校中だ。
頭一つ分、小さい聖法院を、ちらちらと見る。
オレには孤独への
簡単に言えば独りでも
しかし、耐性には思わぬ副作用があったようだ。
そう、他人とどう会話していいのか判らない!
なにか考えろ! きらめけオレの脳細胞! うなれオレの神経シナプス!
目があう。慌てて「そ、そういえばだな……」と話題を振った。
「なぜ、その、父と母はいなくなった?」
全力の結果がこれなわけだが、正解ですかね……?
「ふむ……そうだね。真実を語っても信じてもらえないと思うのだが……」
「任せろ、だいたいのことは許容範囲だ」
「……ふむ。では真実を伝えよう。父と母は、エネルギーとなった」
「…………」
「やはり、理解できないかね?」
「いやいや、あれだろう? 燃料とか……」
自分で言っておいてなんだが、燃料になった両親は哀れすぎるな……
「まぁ、あながち間違いではないね」
「間違いじゃないのか?!」
「近い、というだけで、燃料そのものになったわけではないのだがね」
「まてまてまて。どういうことだ? 父と母は大地の
それだと生死不明ではなく、確実に死んでいるが……
「それも間違いではないね」
「これも!?」
「比喩表現的に、だがね」
「わけが判らんぞ……」
「……話づらいのだが……本当に正直に言えば、魔法の
「……は?」
今、魔法と言ったか?
「ヒロ氏は、どれくらい魔術的知識があるかね?」
「……ま、魔術的知識? たとえば、
「いや、ファンタジーやゲームの知識ではない。現実の魔術だ」
さ、さすが我が妹を名乗るだけあって、いきなりな会話が飛び出す。
オレたちは校門を表す
たくさんの桜の木、生徒たちの雑談、雑踏の音が迎えてくれる。
選ばれた会話を隠すためか、聖法院の声は少し小さくなった。
「まさか、父や母から何も聞いていないのか?」
「あ、ああ……」
ま、まさか、両親も魔術関係者!?
オレは生い立ちから選ばれていたのか!?
聖法院はアゴに手を当て視線をそらす。ゆっくりこちらに向きなおり、小さくうなずく。
「……では、聞かなかったことにしてくれるかね?」
「無理だろ!?」
「……ふむ。では、冗談だよ、ヒロ氏。魔術などあるはずがない。私たちの両親は深い森の中へ迷いこみ、帰らぬ人となったのだ」
「いやいやいや。ぜんぜん納得できないんだがな!?」
「ついてくると、足を踏み外してしまうよ」
聖法院が軽く笑う。
オレはつい足を止めた。
聖法院はそのまま手を振り、コンクリートの階段を下りていく。一年のクラスがある東棟へ向かったのだろう。
「……エネルギー」
オレは東棟へ行くべきじゃない。混乱した頭では、それしか考えられなかった。
いや、まて。あえて踏みこんで聞いてみるべきなのか?
この機会を逃したらうやむやにされてしまうのでは?
そうだ、階段を下りて、聖法院を捕まえよう。
あの夢と妹、魔法。全部、
オレの運命がはっきりするかもしれない。
オレの行く先が見つかるかもしれない。
オレの望んだ日常からの
怖さ半分、希望半分。
しかし、変化を怖がっていては、なにも解決しないのだ!
選ばれたオレはそのことを知っている!
いざ進め、オレの
そう思った時、女の子の声が耳に飛びこんできた。
雑音の一つのはずなのだが、妙にその声だけはっきりしていた。
「ボーダー……ンク……探して……」
それは、夢の中で聞いた言葉だったからだ。
階段を踏み外しそうになりながら、オレは声の主を探す。
その中に一人の少女を見つけた。
心臓が、跳ねた。
ゆるやかな三つ編み。
ミルクのような白い肌。
ふくよかな胸。
紫色のスカートと、ハイソックスの間から
かわいらしい茶色の
女の子の香りがした。
彼女は女の子と話をしていた。友達だろう。
世界がスローモーションになった。
世界が
まぶしい。
どういうことだ?
オレの心臓が、バクバクと鳴っている。
なんだ、これは、まさか……!?
黒い球体の中で出会った少女。
言葉。
「運命……だというのか!?」
名も知らぬ女子は、柔らかに
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