第二話 進水式(2)
緊張していてアナウンスが全く聞こえなくなってきたけど、指揮は見えてるし大丈夫だろう。
田所研太二曹は、そんな言い訳じみたことを思いながらボーッとしていた。
その時、黄前班長の手が上がりあわてて楽器を持ち上げた。
そして、ゆきかぜが進水すると同時に手が振り下ろされ、軍艦マーチを奏で始めた。
ここは、フォルテで…ここは、伴奏を良く聴いて…
周りの音を聴きながら、トリオに入ったところで少し休みになった田所二曹は、口をぬぐいながら、ゆきかぜを見上げた。
「…なんか、聴こえた?」
演奏中のために、口には出さなかったが小さく呟いた。
「今のは、女の声か?…」
ゆきかぜから聴こえたよなと思って、もう一度ゆきかぜを見上げようとするが、トリオも終わりに差し掛かっており、あわてて演奏に戻った。
演奏が終わった頃には、彼の頭の中から声のことなど抜けていたのだった…
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