第一章

第一話 進水式(1)

俺、田所研太たどころけんた二曹は、とても緊張していた。

何だって、汎用型護衛艦の進水式にこんなに人がいるんだよ!?

ドックの周りを見渡せば、人、人、人…

クソ、これが初めての舞台なのに…

田所は、海上自衛隊東京音楽隊に所属している新人隊員だった。彼は、今日が初めての舞台だったが人が多すぎて緊張しているのである。

『国歌斉唱』

放送が入り、全員が姿勢を正した。

東京音楽隊所属の小野田一曹が、前に出て唱い終わると、メインイベントの命名式だ。

相変わらず、きれいな歌声だなと田所が感心していると、黄前班長が指揮棒を構えているのを見て、慌てて楽器を構えた。

防衛大臣が、この艦の名前を読み上げた際に演奏するのだ。

落ち着け、やればできると心の中で自分に言い聞かせる。

『命名式』

放送が入り、鳥羽防衛大臣がマイクの元へ出てきた。

命名書を持って読み上げる。

『本艦をゆきかぜと命名する!』

同時に、演奏が始まった。

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