掌のショートショート

('ω')

夢を見ると。

 夢を見るのが怖いと、男は告白した。


 それを聞いた女が「なぜ、夢を見るのが怖いの?」と尋ねた。

 彼女は彼の事が好きで、心配しているのだ。

 男はかぶり振り答えた。


「夢で怪我をすると、現実の体が傷つくんだ。みてくれ、この腕」


 そこには切り傷がある。鋭いナイフで切りつけられたかのようだ。


「うわ、いたそう……」

「しかも、その夢は何度、寝直しても同じ夢でね。起こった事は全てその夢の中で歴史みたいに存在するんだ」

「じゃあ、ひょっとして、以前は死にかけるところで終っているとか?」


 男は笑った。


「そんな酷いものじゃないよ。僕が怖いのは子供ができることなんだ」

「は? ……相手は誰?」

「……言いにくいんだが、君なんだ」


 彼女は驚きのあまり顔を赤らめる。 だが、複雑な思いなのか、苦笑を浮かべた。

 男は続ける。


「君を愛しているのは間違いない。でも問題があってね……」

「どんな問題なの……?」

「……夢の中では、君が男、僕が女なんだよ……」

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掌のショートショート ('ω') @Shiro_kurohara06

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