第7話 『のらの教え』
ここんとこ、ただ、ぼー、としているだけのやましんは、小さなお庭で、ぼんやりした真夜中の星空をながめておりました。
『どうした?やましん。顔色悪いにゃ。』
そう、話しかけてきたのは、ほかならぬ、のら、でした。
『あらま。来たのか。いやあ、なんか、もう、終わりだな。と、思ってね。』
『ふうん。まあ、いきもの、みな、終わりが来る。いっちゃ、わるいが、人間は、ぜいたくだ。おらなんか、なんの保障もない。けんかする、政府もない。しかしにゃ、これでも、きちんと、スケジュールを立てて、歩いてるんだ。どこかで、終わるが、それは、仕方がない。おらも、飼われていたが、ばあちゃんがいなくなってな、こうして、放浪の身になったが、くやんじゃいないよ。この、リボンが、その、あかしだ。ちょっと、くびが、きついが。今日、できなかったことは、明日でいい。明日できなかったら、あさってでいい。あんたも、サラリマンやめたんだろ。なら、それでいいじゃないか。終わりが来たら、そこが、あんたの、到達点にゃ。失敗じゃない。それが、あんたの、最高記録なんだから。なあに、気にやむこたあ、ない。じゃな、明日も生きていたら、また、来るさ。』
『はあ。いつでも、おいで。もう、いじわるしないから。』
『まあ、いじわるも、障害ぶつレースみないなもんにゃ。』
のらは、闇のなかに、消えました。
たぶん、夢でありましょう。
夜露は、身に染みるが、もう、凍死する時期じゃない。
やましんには、のら、みたいな、ふかふかな毛はないです。
あ、流れ星さんだ。
何十億年かさ迷った、お星さまのかけらの最後を、やましんが、いま、見届けたのです。
よく、がんばったね。
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