第4話
放課後、借りていた魔法の書を手に持ち、職員室に赴くが、先生は第15研究室にいるそうだ。
葵は、第15研究室へと移動する。
研究室につけば、そこには「転移陣サークル」という看板が掲げられており、少女はその扉を開けた。
「すみません」
部屋に入ってみれば、教室内は暗幕が下りており、魔法陣がテーブルの上で光っていた。ピカッと一度点滅すると、
教室内にざわめきが生まれる。
「成功か?」
暗幕があげられ、教室内が明るくなれば、テーブルの上にはペンが置いてある。
「成功だー!」
「先生、誰か入ってきていますよ」
眼鏡をかけた女子に声を掛けられた先生は、小走りに葵の手を取った。
「エルミーヌくん、成功したんだ! 転移陣が!」
「は、はあ」
「まだ、取り出せる空間はこの教室内のものだけど、これから改良を続ければ、もっと別の次元からものを取り出せて、追々は……」
「先生、困ってます」
眼鏡の女子が間に入ってくれて、先生は正気に戻った。
「ああ、ごめんね。ついつい嬉しくて! 今日は何のようだい?」
「あの……。先生のリクエストの物お作りしてきたのですが……」
先生は手をポンと打つと、散らかっているテーブルの上を片付け始めて、スペースを作った。
「プリン、プリン♪」
鼻歌交じりの先生に、眼鏡の女子が首を傾げる。
「先生プリンとは?」
「まあ、まあ。エルミーヌくん。プリンを下さい」
葵はカバンからプリンを2つ出す。
本当は自分の分と先生の分だったが、味見はしてきたので、眼鏡の女子にあげようと思ったのだ。
「それでは、いただきます」
「また、出ましたよ。先生の変な口癖」
「口癖?」
「なんとこの味……。やっぱりだ! エルミーヌくん、僕のうちの料理人にならないかい? いや、料理人じゃ失礼か……妻にならないかい?」
葵は首を傾げるが、プリンの感想で流れてしまった。急にプロポーズを受けてしまったのだ。
プリンを食べていた眼鏡少女も、プリンの味にうっとりとしていたにも関わらず、プロポーズの言葉に、咽ている。
「先生、生徒にプロポーズってなんですか?」
「ん。僕は昔、後悔したことがあるから。まあ、冗談だけどね。確信があるわけじゃないし……」
「先生、はしゃぎすぎですよ」
「いやー、転移陣がうまくいったから、テンション上がっちゃって!」
葵はくすっと笑うと、食べ終えたプリンのカップを回収して、研究室を去ろうとした。
「去ろうと、しているところ悪いんだけど、エルミーヌくんはまだサークル入ってなかったよね?」
「サークル?」
「同じクラスだけどサークル入っているって話は聞いておりません」
眼鏡の女子はどうやらあのクラスの中にいたらしい。
「まだどこにも所属していないならば、転移陣サークルに入ってね。この紙に名前を書くだけ! そして、週に一度は差し入れを持ってきて!」
葵はクスクスと笑うと、エルミーヌと名前を書き、先生に提出した。
「先生は私のお菓子が気に入ったのですね」
「本当だよ。私ハイディよろしくね」
こうして、葵は初めてのサークルと友達を得たのであった。
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