やりたい

M

欲望に忠実なおれ

 やりたい。この一言にどれだけの意味が込められているのだろう。何を、誰を、どこを。いろんな意味を含んだ言葉。おれはそれを多用する。

「ねえ、今日やりたいんだけど」

 仕事が休みの土曜日。ついこの前SNSで知り合った大学生の男の子に連絡する。

「えっ、どういう意味ですか」

「何が」

「その、やりたいって」

「君が思うままの意味だけれど」

 電話口で困惑している雰囲気が伝わってくる。おれはやりたくて仕方ないのに。

「うち来ない?」

「え、これからですか」

「うん、今から。もしかして今日予定あった?」

「いえ、大丈夫ですけど」

「けど? 嫌?」

 少し間があって、

「嫌じゃないです」

「じゃあ待ってる」

「はい」

「場所は地図送るから。どれくらいで来れる?」

「30分かからないと思います」

「じゃあ待ってるね」

 電話を切りシャワーを浴びるためにバスルームへ向かった。泡を身体に擦り付けていると、これからやってくる年下の男の子を考え図らずとも勃起してしまう。

 身体を綺麗にしてベッドにタオルを敷き、ローションを用意しているときにインターフォンが鳴り響いた。画面を覗くと画像越しでもわかるほど肌がツルツルしている短髪の男の子が立っていた。

「待ってたよ」

 おれはそう告げるとオートロックを解除した。男の子は画面にペコっとお辞儀をしてからエントランスをくぐった。

 ガチャ、と音がして玄関のドアが開いた。まだ髭の生えていないつるんとした肌を持つ男の子が少し照れ臭そうに立ってこちらを見ている。

「どうぞ」

「はい」

 男の子は促されるまま部屋へ上がり込んだ。おれはその後ろ姿を見つめながらも服に包まれた下にある素肌を想像していた。

「いきなりでびっくりした?」

「はい、この前メッセやりとりしたばかりだったので驚きました」

「どう、実物のおれを見て」

「かっこいいです」

「やりたい?」

「はい、やりたいです」

 部屋の真ん中で立ちすくんでいる男の子のジャケットを脱がす。シャツを捲り上げて腹筋に触れると柔らかな弾力があった。SNSのプロフィールにサッカーをしていると書いてあった通り、筋肉質な身体からは健康な男の子の匂いがした。

 上半身を裸にさせてまだピンク色をしている乳首を舐める。くすぐったいのか身体を捩らせて抵抗しようとする彼をそっと制する。

「くすぐったい?」

「はい、少し」

「可愛い」

「そんなことないです」

「下も脱がして良い?」

「…はい」

 ベルトに手を掛けて彼の履いているズボンを脱がす。露わになった水色のボクサーパンツには染みができていた。

「染み付いてるよ」

「濡れやすいんです」

「興奮してるの?」

「はい」

「じゃあ興奮してる姿を見せて」

 おれは彼に自分の手で下着を脱ぐよう促した。もじもじしながら自身の下着を下ろす彼の姿がいやらしく、可愛い。

 ゆっくり下ろされた下着の中からカチカチに勃起したちんこが顔を出した。勃起しても先まで被っている皮と、皮の中から溢れ出るカウパーに愛しさを覚える。今すぐしゃぶりつきたい欲望を抑えつつ、おれは指で皮の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。

「あっ、ダメです、アッ」

 立ってるのがやっとという表情で嬉しそうに身体をくねらせる彼を見て興奮が最高潮に達しようとしているおれは自分も服を脱いで全裸になった。

「おれのしゃぶって」

 まるで奴隷のようにおれの言葉に従い男の子はそのまま跪いておれのちんこを舐め始めた。

「ゆっくり、下から先まで、そう、丁寧に舐めて」

 口いっぱいにおれのちんこを咥え込み舐める姿を見下ろしているとなんとも言えない征服感が押し寄せてきて目の前のこの男の子をぐちゃぐちゃにしたくなる。

「美味しい?」

「はい」

 恍惚とした表情でおれを見つめながらしゃぶり続ける男の子は嬉しそうにうなずいた。

「掘らせてよ」

 おれたちはベッドに移動してローションの蓋を開けた。

「自分でほぐしてみて」

 ローションを彼の指に垂らして伝えると、彼は寝転んで片手で自分のアナルを弄り出した。

「おれのが入るくらいしっかりほぐしなよ。じゃないと痛くても知らないよ」

 男の子はちんこを勃起させたまま必死にアナルをほぐしている。自分の指を入れて、出して、入れて、中を掻き回すように動かして。

「自分で弄って気持ちいい?」

 男の子は目を閉じながらうんうんと頷く。

「変態だね」

「ちんこ欲しいです」

「しっかりほぐれた?」

「はい、大丈夫です」

 おれは彼の両脚を持ち上げてちんこをアナルに当てがった。

「入れるよ」

 ミシミシッという音とともに、ううっと彼が呻いた。

「痛い?」

「少し」

「ほぐしきれてないの?」

「太すぎて」

「我慢して」

 いっ、と歯を食いしばる彼の表情を見ながらおれは一気に根元まで入れ込んだ。温かさと締め付けがおれのちんこに快感をもたらす。

 年下の男の子を無理矢理犯しているこの瞬間、おれは生きていることを実感する。まだ汚れていない十代のすべすべした身体と染まっていないちんこ、乳首、アナル。誰のものにもなっていない、誰にも見せたことのないこの表情がおれを興奮させる。初めて会ったばかりの大人に生でちんこを挿入され、病気の知識もリスクも何も知らない無垢なものをどんどん汚していくこの状況。なんて美しく、なんて下衆なんだろう。世の中にはまだ見たことも触れたことも会ったこともないような汚い部分があり、その汚い部分を覆い隠すように綺麗な顔をして近付く変態がいる。そうまるでおれのように。善人面した真面目な顔した優しさで包むくらい高尚なもののように見える鉄仮面を被り、まだ世界のほんの一部しか見たことがない無知な若人を食い物にする。ああ、神様、おれを容姿端麗に生ませてくれてありがとう。おれはこの容姿のおかげで今までいろんな男の子を食べることができました。そしてこれからも十代後半から二十代前半のすべすべした肌を持つ男の子たちを食べ続けることでしょう。目の前で犯されているこの男の子のように。これから何度かこの子を犯し、犯されることに慣れてきた頃、おれはこの子を捨てるだろう。おれが欲しいのは恥じらいと犯されることへの恐怖心、不安感、そして背徳感だ。ケツの穴が切れて血が滲み、痛みと快感が交互に押し寄せている表情を見せてくれる男の子以外に興味はない。おれの性処理として扱われ、精液を体内に流し込まれ、それでも尚嬉しそうに恥ずかしそうに顔を赤らめる男の子。やりたい。毎日でも犯したい。どれだけでもやれる。

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