第21話

前足を踏み込みながら緑龍は、その長い首を弾くようにして大きく開いた口で噛み付いてくる。


その巨大な図体とは別に動きは素早い。

強く一歩、地面へ蹴って後ろに下がる。

身体を移動させた瞬間、龍の顎門が何もない空間を喰らう。


――――速い


攻撃を喰らえば俺の身体がどうなるかなど想像に容易い。

元より龍との戦闘は回避が最優先。

隙を見て攻撃を入れて行かねば勝利はない。


しかし、そのおぞましい程の攻撃の危険性は想像通りといった所ではあるがこの素早さは考慮していなかった。

生物とは基本的に大きくなればなるほどその動きも遅くなっていくものだが。


――――気は抜けないか


俺が攻撃を交わしたのが不満なのか、鼻息荒く睨みつけてくる龍がさらに前へと進み出た。


再び俺の身体目掛けて噛み付いてくる。

ぐっと縮めた首を勢いよく伸ばすことで瞬間移動でもしているかの如き速さで距離を詰めてくる。


しかし、


「ほっ」


すれすれで身を逸らし、紙一重で攻撃を交わす。


さらに噛みつき。


これも問題なく避ける。


攻撃の軌道は比較的読みやすく、素早いがよく動きを見ていれば避けれなくはない。


俺に噛みつこうと前へ前へと進んだ龍の身体が洞窟から全て出た。

首も長ければ尻尾も長い。

巨大な大蛇に太い足を四つ生やしたような外見に、普段何を食っているのか分からない鋭く尖った牙。


この周囲を威圧する雰囲気を発し続ける生物は探してもそうはいない。


昔パーティで狩った時も苦労させられた。

今の僅かな攻防で身体はじんわりと汗をかいている。

触れれば大惨事、回避には最も集中していかなければ。


「ふーー、気合い入れねぇとな」


強張った身体をほぐすように小さく手足を揺らす。


――――ルシーは……


今のやりとりの内に大きく距離を取り、後方へ避難していた。

もう少し離れていて欲しいが、まぁ許容範囲だ。


さて。


目の前の緑龍の表情を見れば随分と不機嫌そうな顔をしている。

おそらく俺のことを手頃な餌が転がっているとでも思っていたのだろうが、攻撃が当たらないせいでイライラしているのだろう。


右の前足をズンズンと小刻みに地面へ叩きつけているのを見ると思わず口元が緩んでしまう。


――――かっかしても食べられてはやらねぇよ


握りしめた剣をぐるりと回し、どの部分を狙うか龍の全身を見る。


「ほーん」


改めてその全身をみるとどこから攻撃していいものやら。

緑龍の全身は硬そうな鱗がびっちりと敷き詰められているように生えそろっている。

あれを切り裂いて血を回収するとなると中途半端な力では軽く弾かれることだろう。


「っ」


緑龍がばっと後ろを向いた。


同時に迫ってくる長い尻尾。

勢いをつけてしなるそれは俺を叩き割らんと空気を裂く音を鳴らして迫る。


攻撃が来ると分かった瞬間、俺は横へと飛び込んだ。

地面が砕け、石の破片が周囲に飛散する。

飛び散った石飛礫が頰を掠め、血が滲んだ。


――――随分硬そうな尻尾だな、おい


何本か伸び出た棘のようなものも併せて実に凶悪な見た目をしている。

あんなのが身体を掠めでもしたら皮はおろか肉ごと抉り取られてしまう。

それでも今のところ、なんとかなる程度の攻撃しか来ていない。


――――身体もよく動く。これなら攻撃は当たらない。


さっき一度は油断して後少しでとんでもない怪我を負うところだった。

だから今度はそうはいかない。


「まずはその尻尾!」


目的は血の採取。

傷さえつければどこでもいいわけだ。


俺は地面を砕いたまま、だらりと垂れ下がったままの尻尾目掛けて剣を強く振り下ろす。


柄を両手で握りしめ、身体の体重ごと叩き付けるつもりで。


刺さったら痛そうな棘の根元を狙う。


「うらぁあ!」


振り下ろした剣から返ってくる硬い感触。


飛び散る石片が身体にばちばちと当たる。


剣は目当ての尻尾を空振りし、勢いよく地面をたたき割った。


――――避けられた?


いや、間違いなく俺の剣が奴の尻尾に届く方が速かったはず。

避けられはしないと思ったが。


「っと」


緑龍が体勢を変え、前足での薙ぎ払い。

鋭利な爪が空気を割く音が目の前で鳴った。


続けてまた龍が口を開く。


――――もうその攻撃は効かねぇっての


逆に剣を構え、飛び込んできた瞬間を狙い斬ってやる。


丸太のような首だが多少は切れ込みが入ってくれるといいのだが。


しかし、そんな俺の思惑は外れた。


口を開いた龍は先ほどのように俺を食らおうとはしてこない。


――――あれは?


龍の口元に何か集まっている。


頭で理解するよりも、身体が、本能がとっさに剣を正面に構えた。


「グルァア!」


咆哮と共に吐き出されたそれは突風と共に飛んできた。


正面に構えた剣が何かを弾いた。

身体を吹き付ける突風で身体の体勢が崩れる。


「っ、ぐ」


足元の地面が斬撃でも受けたように裂けた。


――――なんだ、この攻撃は……!?


突風に乗って剃刀のように鋭利な風の刃が飛んできている。

剣で防げる程度に脆いようだが、


「くそ、痛ぇだろうが!」


弾けた風の刃は辺り一面に無差別に被害を及ぼす。

剣で防いだというのに、身体のあちこちが一瞬にして切り傷だらけになった。


質の悪いことに常に吹き続ける突風のせいで身動きが取れない。


まるで嬲られているように身体を切り刻まれ、何もすることができない。


「こ、のぉ!」


かといって、あの風の刃がいつ飛んできているのか正確に把握できていない為に、迂闊に攻め込むこともできない。


歯を食いしばり、いつ止むかも知れぬ攻撃を耐え続ける。


そして、


「グルゥ」


ようやく緑龍が口を閉じた。

心なしか動きが気怠そうに鈍い。


「今度は、こっちから!」


耐え忍んだ力を足に乗せ、地面を砕く勢いで踏み込む。


一直線に龍の胴目掛け、突進。


「グルァァ!」


しかし、僅かに動き出しが遅かった。


「ちぃっ」


迫ってきた死の気配に敏感に反応した俺は真っ直ぐ突き進むはずだった挙動を無理やり身体を捻って変える。


緑龍が懐には入れさせないと大きな身体を限界まで使い、前足を振り回した。

身体の僅かに掠めた前足がまた地面を叩き砕き、轟音を鳴らす。


肌がチリチリと焼けるように熱い。

掠めた程度しか攻撃を喰らっていないはずの脇腹から血が流れている。

攻撃のタイミングを誤っただけでこれだ。


「全く、嫌になる」


今のは判断が遅かった。

もう少し速く突撃を仕掛けていれば龍が反応するよりも前に剣を叩きつけられていた。


ーー落ち着け、焦るな


何度だって自分に言い聞かせろ。

これは討伐するたまの戦いではない。

奴の素材を回収するだけでいいんだ。


急ぐな。

じっくりと見極めろ。


前足の攻撃が来る。


ーーこれは、ダメだな


前足が振り下ろされるのと同時に一歩後ろへ跳びながら俺は奴の攻撃を観察する。

攻撃するタイミングを考えなくてはならない。


「グルルル」


依然として俺への攻撃を繰り返しながら、緑龍は喉を鳴らしている。

何故自分の攻撃が当たらないのか、頭を捻っているのかもしれない。


攻撃を躱し続け、そして考える。

前足の薙ぎ払いや叩きつけはリーチが短い分、戻りも速い。

この時に突っ込むのはおそらく悪手だ。

ならばもっと隙の大きい攻撃を……。


「グルル!」


ーー来た


龍が後ろを向いて、尻尾を高く上げた。

この攻撃に合わせて剣を強く握る。


「ルルァ!!」


尻尾が振り下ろされる。

俺はその軌道をしっかりと見て剣を掲げた。

ものすごい重量の尻尾が掲げた剣にぶつかる。


ーーここだっ


その瞬間、剣の角度を変え、尻尾を剣で撫でるように受け流す。

頬すれすれを通過した尻尾が地面へとぶつかると共に、前へ踏み出した俺の身体は龍の懐へと入る。


「はぁぁぁ!」


入った。


この一撃は間違いなく避けられない。

斬り込む角度も文句なし。


「……?」 


その時、身体に風を感じた。

どこから吹いているのか、ひゅるひゅると音もする。


ーー関係ねぇ!


だがそれは俺の一撃を阻むようなものではない。

この分厚そうな鱗ごと叩き割ってやる。

そう意気込んで叩きつけたはずの剣はしかし、


「は!?」


ぬるりと滑るような手応えと共に龍の胴を掠めて地面へと逸れた。


「っ」


勢いよく地面を叩いた剣はその反動をしっかりと握っていた手へと返す。


ーーなにが起きた?


何故攻撃が逸れたのか混乱する頭。

いや、それよりもまず龍の攻撃を避けなければ。

どこかに残っていた冷静な部分がそう警告を鳴らしていた。


しかし、


「くっ」


じんと反動に痺れる掌は振り下ろした剣を引き戻せない。地面を強く叩いた反動と、予定外のものへ剣を当

てたことによる強い痺れ。

それが剣を握る手を固まらせていた。


ーーまずい、来るっ


致命的なまでの隙。

今前足での攻撃を出されたら避けられない。

痺れた手が剣から離れないために、回避行動にも移れず、剣を盾にすることもできない。


「グロスト!」


遠くでルシーの叫び声がした。

身体を引き裂く爪の幻想が浮かぶ。

零れた鮮血は地面を濡らし、徐々に感覚がなくなっていく、そんな光景が脳裏を過ぎる。


「…………」


しかし、攻撃は来ない。


「……?」


龍は息を荒げ、こちらを睨みつけていた。

この仕草はさっきの。

そう思った時、ようやく龍が動いた。

あの前足で俺を狙おうとしている。


「ふっ!」


だが、俺もそういつまでも固まってはいない。

手の痺れが取れた瞬間、一目散に後ろへ下がり龍との距離を取った。


「ふーー」


思わず深く息を吐き出す。

ばくばくと心臓が高鳴っているのをゆっくりと鎮める。

とりあえず難を逃れた。


いや、その前にだ。


何故あの一撃が当たらなかったのか。

完璧な角度、勢い。

あれで攻撃が当たらないはずがない。


一つ気になるとすれば攻撃の瞬間、感じた僅かな風。

あれ以外に考えられない。


そしてあの龍の様子。

俺が動けなかったのは僅かな瞬間だ。

俺が致命的な隙を見せたのと同時、龍ももどかしそうにこちらを、ただ睨みつけているだけだった。


「あれは」


視線を龍に移すと、奴の身体から纏わりついていた風の渦が解けて消えていく瞬間が見えた。

風が龍を守るように渦巻くあの光景……。

似たようなものをつい最近俺は見た。

否、見ただけでなく使った。

使って、ここに来た。

それは風の一族が渡してくれたあの風の棒と同じ力。


ーー風を操る力


奴が放った『風の息』といい、今の身体を守るように張り付いていた風といい、間違いなく同じものだ。


「面倒くせぇな」


しかし、それならば相当に厳しい戦闘になる。

こっちの攻撃はあの風の防御によって防がれ、向こうの攻撃は一度喰らえば即死。

随分と理不尽ではないだろうか。


「グルルォ!!」


横に振られた尻尾の薙ぎ払い。

距離を取る俺に対し、踏み込んで距離を詰めてから巨体に似合わぬ機敏さで後ろを向いて繰り出してきた。


「せっかちな野郎だなっ」


回避、は間に合わない。

片手で柄を握り、もう片方の手を剣の腹に添える。


ーー衝突。


「んぐぁ!」


重い岩石を受け止めているような衝撃が身体全体を駆け抜け、ぎちぎちと骨が軋む音が鳴る。

受け流すには少々当たり方が悪かった。

龍の一撃を正面から向け止め、鞠でも蹴飛ばしたように吹き飛ぶ。


ーーがっつり受け止めてこれかよ、やってられねぇ


吹き飛ばされながらも着地の体勢を取り、剣を地面に突き刺して勢いを弱める。

長い一筋の跡を地面に残して、ようやく身体が止まる。


「ぺっ」


知らぬ間に口の中を切ったらしく、赤い唾を吐きながら緑龍を睨む。

まともに攻撃が当たってすっきりしたのか、喉なんぞ鳴らして随分と機嫌よさそうな顔をしている。


「ぜってぇ叩っ斬るっ……!」


一撃受け止めたおかげで身体の節々が痛いが、一応どこにも怪我はなさそうだ。

ムカつくあの野郎に一撃お見舞いしてやる為に思考を回す。


尻尾を振り回すあの攻撃を受け止めるのは部が悪い。

避けた方が良いだろう。

前足の攻撃はさっきの通り躱してもまた直ぐに次の攻撃に繋げられる。

隙の大きいのは尻尾による攻撃だが、あれを潜り抜けても風で身体を覆われてこっちの一撃を防がれる。 


俺が隙を晒してから奴から離れるまで、奴が攻撃できるようになるまで身体に残っていたことを考えれば連続で攻撃するのも難しいだろう。

一撃目は逸らされると仮定して、手の痺れを堪えて次の一撃を狙おうが、奴が回復して攻撃して終わり。


ならどうやって突破するか。


奴の行動で共通していたのが、風の力を使った後。

あの風の防御も、『風の息』も使った後僅かな間奴に隙ができる。

風の防御は突破が難しい。

となれば残るは。


ーー『風の息』を破る


これが一番可能性が高い選択肢だ。

問題はどうやって息を破るかだが。


「まあやってみるか」


風の力を使った後の隙を突く。

その為にはあの攻撃を誘わなくては。


「グルルル」


俺を瞳に映したまま、小さく口を開閉して龍は唸る。

びたんびたんと尻尾を軽く地面に打ち付けながら、攻撃のタイミングを測っている。


ーー回避優先。俺からは攻撃を仕掛けない。


一手間違えればあの世行き。

一つの攻防を取っても命懸けのこの戦闘。

だというのに、奴が攻撃を仕掛けてくるまでは何も出来ない。


常に警戒し、神経をすり減らして僅かな動きにも注意し続ける。

時間の感覚が麻痺し、時が止まっているかのような錯覚に陥っていく。

じり、と龍の前足が動く。


「グルルォ」


痺れを切らしたように鋭く繰り出された前足。

だが既に何度もみたその攻撃は容易く避けられる。

地面を引き裂き、石飛礫を量産する龍は二度、三度と攻撃。


繰り返す。


肌のひりつく緊張感を感じながら俺はその攻撃を避け続ける。

『風の息』を引き出す為に、俺は距離とって戦う。

前足の攻撃をあしらい続け、縦に振られる尻尾は振り下ろされる瞬間に勢いよく横に飛んで回避する。


だが、


ーーまた来た


横の振られる尻尾だけは対処のしようがない。

跳んで避けようにも着地の隙が大きすぎ、受け止めるには威力が強すぎて身体を吹き飛ばされる。


だが、何もしないわけにはいかない。

跳躍は次の攻撃を誘発するがほぼ間違いなく攻撃を喰らうため、


「ふぐ、ぐぁ!!!」


正面から受け止めるしか出来ない。

身体をバキバキに砕かれたような衝撃を受けて壊れた玩具のように地面を激しく転がる。


硬い地面で皮膚を切り、血を流しながら立ち上がる。

吹き飛ばされた勢いが弱まるまで受け身の姿勢を取って耐えはするものの、それにも限界はある。

たった二回攻撃を受け止めただけで身体はボロボロ。

あちこち傷だらけにされた。


「はぁ、ぐっ……」


痛みを堪えて龍を見据える。


ーー早く来い。早く


でないとこっちの身が持たない。


龍の攻撃方法には既に慣れつつある。

最後の横振りさえどうにか出来ればいいのだが、現状あれがきたら剣を盾に防ぐしかない。


よろよろと立っている俺の姿を見て大きな足音を立てながら龍は追いかけてくる。


ーーもっと距離を


龍が俺の元へ詰めるよりも速く俺から距離をとる。

もはや尻尾の攻撃の範囲外にい続けるしかない。


ーー他の攻撃を誘っても時間の無駄だ。


もっと離れたところで

距離を詰めようとする龍から俺は距離を取って離れる。

後ろに下がり続け、尻尾の範囲外を見極めて位置を取る。


「グルルルルッ」


すると、焦ったくなったのか緑龍が怒りの篭った唸り声を上げる。


深く息を吸い込み、口を大きく開けた。


それを見て俺はすぐに剣を構える。

今までは柄を両手で握って構えていたが、地面へ突き刺すように立てた剣を逆手で握るように片手で持つ。


「グルルルァ!!」


突風が吹き荒れた。

身体の体勢を崩すほどの強烈な風。

この谷に降りて何度浴びたことか。


「っ……」


吹き飛ばされないように周りの物に掴まって凌ぎ、体勢を低くして耐えた。


だが、今回は違う。


「戦闘に使うのは初めてだがっ」


左手に握りしめるのは風の一族の力を授かった鉄の棒。

風を操る力を宿すそれを俺は振る。

周囲の風を集める力は龍の繰り出した突風を絡め取り、向きを変え、渦を巻く。


「っはぁぁぁ」


その場へ釘付けにする奴の突風を操る。

龍から放たれた風の一部を集め、俺を守る渦を作り出す。


いわば風の壁。

脳が焼けそうな程の負荷がかかり、がんがんと頭痛が身体を蝕む。


だがこれで身体は自由に動かせる。

そして、俺は龍の元へ駆ける

右手の剣を閃かせ、飛んできた風の刃を斬り捨ててながら前へ距離を詰める。

風の刃を5つ斬り裂いたところで風が止む。


「グルルォッ」


風の力を使ったばかりの緑龍は接近する俺に反応できない。

そして、『風の息』を放った直後には風の力は使えない。

あの風の防御も張ることが出来ない。


「うぉおおおお!」


左手の風の棒をしまい、振りかぶった剣の柄を両手で握る。

両腕の筋肉が盛り上がり、全身に蓄えた力を剣を振り下ろすと共に解放する。

身体の勢い、力利用した一撃が無防備な緑色の鱗へと衝突した。


「あぁぁぁ!」


渾身の力を込めて剣が叩きつけられる。


ーーこれを切り裂けばっ


読み通り、狙い通りの一撃が決まる。


「グォォォォ!!」


龍が咆哮した。


「なんだとっ!?」


完全に一撃を入れた、その筈だった。


なのに。


振り下ろした剣が跳ね返される。

弾かれたのではない。

押し戻されたような感触。


驚愕する俺の身体を持ち上げるように風が吹く。


風の力は使えないはず。

確実に斬り裂いたと確信した俺の目に映るのは叩きつけた鱗から勢いよく吹き荒れる風。


どうなってる。


光沢を放つ緑色の鱗から巻き起こる風が剣を振った体勢の俺へ吹き付ける。


防げない。


為す術なく、訳もわからないまま俺は宙に舞い上がった。

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