第1話 切り裂きジャック―――第9節

「で、このオカルトは何なんだ。」


 以蔵は目の前の異形の正体を知っているようなので聞いてみた。

 正直に言うとどうせ的外れなことを言うんじゃないかと期待している。

 だって以蔵だし。


「こいつの名前は田代 M助だ。」


(この作品はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係がないのですが一応の配慮と言う体のネタです。ですので誤字・脱字ではないのであしからず。)


「実は人間が犯人の連続通り魔事件だったってオチじゃないですよね。―――だってこの人、てかコレ?どう見ても腕が6本あって手が鎌になってて、膝が逆関節で顔がつぶれてるじゃないの。」


「顔がつぶれているのは俺が蹴り飛ばしたからだぞ。」


「元からの可能性もあるけど。」


「ソレは言ってやるな。」


「で、そのMむっつり助平とは何者だ。」


 Mだけにウケに回ったのかこちらに近づいてこない何某なにがしさんなので、私も以蔵の話を先に聞く事にした。


「このM助って野郎は10とちょい前に連続傷害事件、まぁ通り魔事件の犯人って形で警察に捕まった。」


「……10年より前。」


 つまりはオカルトハザードよりも前、と言うことになるのか。


「で、先日こいつが仮釈放されてほどなくしたら今回の「切り裂きジャック事件」が起きた。」


「無関係と思う方が難しい話だな。」


「そっ、だから警察も真っ先に容疑者としてあげたら、M助くんは行方が分からなくなっていましたと。これは最早と指名手配して公開捜査にってなったところ―――がどっこい、M助くんは変わり果てたお姿で発見されちゃったわけですよ。」


「それがコレ?」


「残念。答えはカピカピのミイラでした。と、それでも続く「切り裂きジャック事件」、真犯人は他に居る。ってならないのが今のご時世。」


「オカルト事件って扱いになったのは―――」


「警察、って言うか警察官だけど、別にバカばっかってわけじゃないんだからそう考える奴もいる。ただ、組織が対応しようとしないってだけだから。そこに不満があるやつらはこ~うコソコソしちゃうわけだよ。」


「その内緒話にはわたしも混ぜてほしいな。」


「そのうちな。でだ、によると検視の結果ではM助くんの中身、内臓とかが無かったらしい。頭ん中も含めてカラッポだ。あと、ソレの発見場所を調べさせてもらった結果、十中八九あれは死体じゃなくてだ、と結論付けた。残念ながら抜け殻そのものは拝ませてはくれなかったが。」


「で、コレが脱皮した中身だと。脱皮したのにセミの幼虫みたいな姿になっているのは残念感があるけど。」


「結論から言うとこいつは「ケモノ憑き」ってヤツだ。抜け殻が見つかったのはとある神社の森の中。そこには刃物で切り殺された動物たちの死体が転がっていた。M助の所持品からはナイフが見つかっていたのでM助の犯行と断定。M助は殺した動物の恨みに取り殺された。で、生まれたのがこのオカルト、分類としては妖怪の類だな。そしてコイツからは件の森に残った妖気がプンプンしてやがる。」


 以蔵は「そこで待ってな。」と言って前に進み出る。

 すると、元M助の妖怪は素早く躍り出てきて以蔵へと襲い掛かったのである。

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