第1話 切り裂きジャック―――第6節
「…お嬢が組長になるんすか。」
「…それがみんなの希望だったからな。」
「…お嬢ってちんちくりんなのに。」
「…組長になるのにちんちくりんは関係ないでしょ。」
「…お嬢、俺の足踏んでるっす。」
「…(思いっきり)踏んでんのよ。」
「…結構痛いです。」
とりあえずではあるがわたしは新生・有坂組の初代組長に就任した。
とはいっても、古くからの顔なじみばかりで集まって宴会しただけのような就任式であったのが事実であり、本当の就任の為の幹部たちを集めた杯の義はワタシの目的でもある敵討ち、今巷を騒がせている「切り裂きジャック事件」を解決してからである。
一応は組の情報網などが使えるが本命はわたしがここにいる以蔵一人を共にして打ち取ったっという旗をもって凱旋することが必要なのである。
むしろわたしから言い出した。
組にもすでに数人のオカルト使いが出入りしているが、やはり全国をまとめると言うなら手前の戦力で片付けられるトコを見せなければならないだろう?
「…お嬢、そんなにガラが悪いとモテませんぜ。」
「…あぁ?」
「痛い、小指が痛い。」
「靴のサイズが合ってないんだろ。今度買い物に付きやってあげるよ。」
「…わーい、オジサン嬉しいなぁ。」
※※※
有坂組に顔を見せてカタチなりにも組長になったわたしは以蔵一人を連れて家に帰ってきた。
これが1つ2つ昔なら不用心なことなのだろうが、今の田舎のヤクザ同士で抗争などそうないものだ。
ましてなったばかりの小娘1人についてなどは言うまでもない。
むしろ警戒するべきはオカルト事件のほうである。
「さて、まずはわたし達が追うべきオカルト事件についての情報を整理しよう。」
「件の事件は巷では「切り裂きジャック事件」と呼ばれていますね。」
「若い女性ばかりがすでに14人も被害にあっているのに警察は通り魔事件として扱い、いまだに犯人像の特定もできていないと来ている。」
「凶器については5センチから30センチの刃物としているそうです。」
「おおざっぱすぎるだろう。」
「その為警察では同一犯の可能性は少なく、複数犯の線で捜査を進めているそうです。」
「ちなみにオカルトに対する意見は?」
「完全否定ですね。あくまで人による通り魔事件として扱っているそうです。」
「だろうね。ならば私たちはオカルトありきで調査を進めていくことには変わらないな。」
「はい。これで準備は整いました。」
「ご苦労。」
「今晩の献立はぶりの照焼き、ほうれん草の煮びたし、卵豆腐をオリジナルのたれで、お味噌汁はシンプルにワカメです。」
純和風の我が家の居間、そこにある大きなちゃぶ台には湯気を立てる2人分の美味しそうな夕ご飯が並んでいた。
「「いただきます。」」
以蔵と一緒に手を合わせて夕ご飯に箸を伸ばす。
「むぐむぐ、被害者は翔子を含めて全員女の子で間違いないか。」
「ハムハム、ハイ。皆15歳から25歳の間の女性で間違いありません。」
夕ご飯を食べながら以蔵と二人で情報の整理をしていく。
「時に以蔵、お前はすでにこの事件のオカルトが何かを解っているのではないのか。」
「一応目星はついていますが少ししっくりこないところがありまして。」
「そうか、実はわたしにはお前の見えてないものが見えたぞ。」
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