第1話 切り裂きジャック―――第4節
「お嬢の夢は~おっきいなぁ~。」
「人の夢を聞いて歌うなよ。」
「いや、実際のところかなり無謀な夢だと思いますがねぇ。」
「今すぐ結果を出すつもりではないけど今からでも地道に目指す価値はあると思うけどなぁ。」
「ソレに手を貸すのはやぶさかではないですが、今回の事件にはどう対処するつもりですか。」
「まずは―――組織だな。」
「お嬢のボケは~おっきいなぁ~。」
「ボケてないし!要はヤクザだよ。御爺様が一度は解散させた有坂組も最近のオカルト事件がらみで復活して居るだろ。あそこをまずは実行部隊として取り込もうって話だ。」
「お嬢が親分の孫だとしても今の組にどれだけ顔が効くと思ってんですか。下手に乗る込むとか危ないぞ。」
「
「どーなっても知りませんよ。」
※※※
と、いう訳で。
私たちは地元を縄張りとしているヤクザ屋さんたちに御挨拶に行くことにした。
「おかえりなさいませ、お嬢様ぁ~~。」
扉を開けると満面の笑みをたたえたメイドさんが出迎えてくれた。
わたしはメイドさんに挨拶をすると以蔵と一緒に奥の貴賓室へと案内された。
改めて言っておくとわたし達は地元のヤクザに挨拶に来ているのである。
「いつからうちのヤクザがメイド喫茶になったんだ。」
「三年前だな。」
「三年前にいったい何があったのだ。」
「ソレはこのヤクザの再開と大きくかかわっている。」
「ヤクザの再開とメイド喫茶にどういう繋がりが有るのか分からないんですが。」
「有坂組が解散した後は組員たちも地元に溶け込んでいったのは知っているな。」
「えぇ、そういう方たちが街の顔役なんかになってたりするんですよね。」
「要は町内会なんかの役員だな。」
「なんか身もふたもないですね。」
「で、オカルト案件で国が頼りないからと各自治体で自衛を始めた、そこから他の町と協力する際に元組員のコネが役に立ったもんだから、「もういっそ組の復活でいいんじゃねぇ?」って結論になった。」
「ヤクザってそんな軽いノリでよかったっけ?」
「時代が変わったのよ。で、その際に有坂組を名乗る許可を生前の御爺様に貰いに来たのが今から会う顔役よ。」
「…組長じゃないんですね。」
「……そこにはちょっとした事情ってものがあってね。」
「ソレはともかく何でメイド喫茶。」
「わたしが今17才で3年前だから14歳の時ね、顔役の男が言ったのよ。」
「なんと。」
「せっかく組が復活するから町興しもかねて新事業を始めましょう。って。」
「……」
「で、当時のわたしはメイド喫茶にしようって言っちゃたのよ。」
「……」
「そしたら風俗も時代に乗るべきですよね。って御爺様たちが乗り気になって、気が付いたら組のみんながサブカルにドップリハマってたのよ。」
「……お嬢、グッジョブ。」
「お前もか!」
そんな冗談をかましながらわたし達は奥にある貴賓室に通された。
そこは表のメイド喫茶のようなピンク色の浮ついた空間ではなかった。
歴史を重ねた文化的調度品の数々に加えて、そこにいる人たちからも冗談ではない重々しいメンツ―――そう言った心から発せられる強い気配が満ち満ちていた。
その中心。
掘りの深い顔立ちにオールバックの髪型。
派手さより貫禄を見せるスーツ姿の男がいた。
「お久しぶりですお嬢。」
「久しぶりだな、富雄。」
「えぇ、本店の改装に合わせてメイド服の新規デザインを持ってきてくれた時以来ですね。」
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