第8話 非礼と伝統
エプロン好きになった私は、色々な所でエプロン探しをするようになった。スーパーなどの衣料品コーナーはもとより、リサイクルショップでも見るようになった。
「なに、これ、え? 斜めにかけるエプロン? 」
簡単な透明袋に入って、説明書も見える。きれいなピンストライプの生地だ。
「安い、買ってみよう」と家に帰って驚いた。
「これ、伝統的な綿織物だ」
つまりこのエプロンは縦じまを最大限に生かすため、長方形の一枚布とそこに最小限の穴と紐、ボタンだけでできている。身に付けた形は金太郎の前掛けのようになるのだ。
その時は私はためらいもなく素肌に(下はもちろん履いていた)身に付けて見た。
「気持ちがいい・・・なに・・・このしっとり感」
皮膚科の先生が言っていたことを思い出した。
「いわゆる天然繊維、木綿や絹、麻はアレルギーが起こりにくいと言われています。あなたの場合は強すぎる染料も注意した方が良いかもしれませんね」
つまり私が今身に付けているのは、上質の木綿と、上質な染料で染められたものなのだ。
「ねえねえ、見てこのエプロン! 」
「面白い形だね!! 」
「でもこれは使いたくない」
「どうして? 」
「だって伝統工芸だもの・・・」
「最高級の物を花魁だって着てただろうに」
「それはそうかもしれないけれど」
このエプロンについては、私たち夫婦は縞模様のように、とても狭い幅でも交わることはできなかった。
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