第9話 子供の誕生という理由
「質の良いエプロンはあなたの人生を豊かにする」
ハンドメイドの雑誌に私のエプロンが特集されると、ちょっとしたブームにまでなってしまった。私は忙しくなり、夜、食事会などで家を空けることが度々になってくると、夫が寂し気にしているのに気が付いた。その時に自分は本末転倒な事をしていると悟った。
元々は夫と楽しむための趣味だった。それが極端に熱を帯び始めて、先生と呼ばれながらも、周りに振り回されている感じがした。また時々
「大した技術もないくせに」という悪口も聞こえ始め、それは我流の私にとって本当の事だから仕方のないことだったけれど、少々疲れてしまった。
だから夫と相談の上、丁度良い最高の嘘をつくことにした。
「子供ができたので、しばらく辞めます」
その言葉は案外とすんなり受け入れてくれたようで、あの突風の日から二年ほどたって、私は普通の生活に戻れた。
「やっぱり、家で細々とやっている方が性に合っているみたい」
「でもこんなに上手になるなんて思わなかったよ。子どもが大きくなって離れたら、またやればいいじゃないか」
「そうするわ。でも子供がいないけど」
「早めにしないとウソがばれるね」
「そうね」
最初の子には悪いと思う理由があった。
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