第2話 真面目不真面目
「これって・・・・・」
と二人でデパートのエプロン売り場で顔を見合わせた。
いかにも質のよさげな、フリルも上品に付いた真っ白のエプロンだった。もちろん値段もジャケット並みにする。
「これはご結婚のお祝い品に選ばれる方が多いんですよ」
といかにもベテランの店員が丁寧に言ってくれたのだが、私たちは二人で愛想笑いをして、屋上階まで行った。そこでベンチに座り
「あれは・・・きっと用途が違う。だって真っ白のエプロンは汚れが目立ってしまう。あんなエプロン普通にはもったいなくて付けられないわ。それにエプロンにしては丈が短い・・・」
「使い方は自由って、暗黙の了解なんじゃないか? 」
「フフフフフ」「ハハハハハ」
私たちは笑ってしまった。
ここはキッズスペースになっていて、小さな子が足でこぐ車に楽し気に乗っている。そばにお母さんとお父さんがいて、押したり、子供が「自分でやりたい」という表情を見せたりして、一緒に遊んでいた。
それを見ながら話す事ではないのかもしれないが
「やっぱり良いものは高いな・・・でも君の肌のためにはあれぐらいのものがと思うんだけど、どうする? 」
「さすがに高すぎるかな、とってもきれいだけれど」
「似合うと・・・思うよ」
「そうかな・・・」
つまり夫はあのエプロンが「気に入ったらしい」と悟った。そう言えば
「いかにも「それ用です」ってエプロンは、あんまり好きじゃなくて」
と以前漏らしていた。
しかしそこは私ももう「彼女」ではなくて「妻」になってしまっていた。家計、と言うものがかなりの割合で頭を締め、それをキチンとやっていくことも大切だと、キッズスペースの前ゆえに冷静になれた。ちょっと不謹慎、複雑、いやいやこの子のお父さんお母さんだって、それはまた失礼だなどと色々考えつつ、この点はどうしようかと思っていた。
「もうすぐクリスマスだから・・・」
それは私へのプレゼントなのか、自分へのご褒美なのか、夫の小さな声に、私も答えるように小声で、軽い思い付きのようなことを言った。
「作って・・・みようかな・・・・・」
「手づくりで! それはいいんじゃないか? 」
この大きな声に、車の家族全員がこちらを向いた。ご夫婦は何かほほえましいと思ったのだろう、自然な笑顔を見せてくれたが、しかし彼らの目には、私たちのちょっと不自然な笑みが映ったに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます