第9話 待ち時間。

 文化祭前ということで、文化委員の恋人は毎日のように委員会に出席していた。一か月も先のことだというのに、ご苦労なことでというのが本音。

 そのため柚木は毎日のようにB組を訪れ、恋人の席に突っ伏して眠りにつくのが日課となっていた。


「……」


 今日も閉めてくれてる。


 眩しさゆえに偶然目が覚めてしまった日から、柚木には気になっていることがあった。この教室で恋人を待つようになってから、最後には必ず二人きりになる女の子の存在。彼女が、自分が眠っている途中にカーテンを閉めてくれていたのはおそらくその初日からだろう。目覚めたときに眩しいと感じたことが一度もなかったから。

 二日目にして彼女がカーテンを閉めてくれたのだと知り、その翌日、寝たふりをしてみたのだ。何のことはない、突っ伏して見せてある程度の時間が経ってから身じろぐのだ。眉根を寄せて眩しそうな顔で。彼女はすぐにカーテンを閉めてくれた。柚木に日が当たらないぎりぎりまで。

 あれからもう一週間も経つのだが、彼女は毎日そうしてくれていて。

 自分の些細な動きに対して、こうして動いてくれる。何か見返りを求めるようなこともなく、純粋な優しさゆえに。

 その事実に少し不思議な心地になりながらも、柚木はB組に流れるこのゆったりとした恋人を待つ時間を、好ましく思うようになっていた。

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