1‐4‐3 騎士の一分、獣の六〇秒
初めて会った頃、私は姫様の事が好きではなかった。
ラヴォン魔術学院魔騎士科での最初の一年を終えた春休み。
十三歳になったばかりの私、ジークマリア=ギナイツのもとに父上からの封書が届いた。
ギナイツ家を離れてから初めていただいた手紙に記されていたのは、誕生日を祝う祝辞でも、寄宿生活を気遣う内容でもなかった。
『来年度に入学するマグナ=グリモアの姫巫女、エリリア=エンシェンハイムを守護せよ』
それは、騎士としての正式な任務を記した令状だった。
令状には姫様を取り巻く政治的環境と予想される脅威、私が学院での守護において適任である理由などの情報が記されていた他、令状としての形式的な文が書き連ねられていた。
そして最後に、
『武運を祈る』
という言葉が、令状の文体をはみ出して綴られていた。
正式な任務令状。
それは、父上が私を一人の騎士として認め、信頼してくださっていることを意味している。
加えて、最後の一言。
令状を読んだ私がどれだけ喜んでいたか、今でも忘れられない。
騎士としての初めての任務。
私だけがこなせる任務。
父上がくださった任務。
私はますます鍛錬に励み、来たる新学期に入学してくるという『マグナ=グリモアの姫巫女』の到来を待ち望んだ。
だが、私は……
†×†×†×†×†×†×†
魔力の渦巻く『魔笛の空賊団』アジト、二階にて。
「ふふ、一人を殺るのにこんなに弾を使わされるなんてね。最高記録よ」
アイリーン=ベルカは僅かに息を乱していたが、まだまだ余力を残した様子でジークマリアを見下ろした。
脇腹に一発、側頭部を掠めて一発。
ジークマリアが纏う聖銀の鎧から血があふれ出ていた。
顔には血が幾筋にも分かれて垂れている。
その内の一つが左目に入り、血涙を流しているようにも見えた。
だが、ジークマリアはそれを拭わない。
その決定的な隙を、アイリーンが見逃すはずがない。
あれから、形勢はほぼ変わらなかった。
ジークマリアはアイリーンを追い続けたが、翼を持つ彼女を捉える事はできず、一方的に銃撃を浴びせられ続けた。
それでも被弾が二発に留まっているのは、ジークマリアが銃撃をできるだけ封じるべく、絶え間なく攻め続けた結果である。
二人は、全速力で綱渡りをしつつ先にどちらが力尽きるかを窺い合うような、ギリギリの緊張を保っていた。
この段になってジークマリアは一つの可能性に思い至っていた。
(なぜ奴は『
閉人から伝え聞いた、異世界の武器『銃』の性質。
その弱点の一つは、「弾を撃ち尽くしたら『
ジークマリアはずっと弾切れを待つべく立ち回りその隙を窺っていたが、一向にアイリーンはそれをする素振りを見せない。
撃ち出された弾の量と小銃の大きさの間に物理的に矛盾し始めた段になって、ジークマリアはようやくその事実を確信した。
(恨むぞ、閉人。奴に『
ランク4、魔術『
異世界の武器と魔術の融合。
恐るべき『初見殺し』の手管に、ジークマリアは心の中で舌を巻いていた。
異変が起きたのは、丁度その時であった。
「ッ……!?」
突如、ジークマリアの足元に影が戻った。
自動で味方を守るように設定しておいた『
それからすぐに、上階で異様な魔力が渦を巻き始める。
「何だこれは……? 姫様……ッ!?」
ジークマリアはアイリーンへの警戒を緩めないまま、頭上を仰いだ。
渦巻く魔力の大半は間違いなくエリリアのものだった。
純粋無垢な力の奔流。
普段のエリリアならば、日光のような暖かさを含んでいるはずの魔力から、今は感情がまるまる欠落している。
まるで荒れ狂う自然そのもののような魔力に、ジークマリアは息を呑んだ。
「姫様に一体何が……?」
アイリーンは、少々呆れた様子で息を吐く。
「あらあら、お姫サマの『首輪』が作動したのね。フォーグラー卿とも在ろうお方が、迂闊ですこと」
「『首輪』だと……ッ?」
アイリーンはほくそ笑んだ。
「ふーん、知らないんだ? 騎士なのに」
「答えろっ!」
静かに嚇怒するジークマリアだが、その腹部からは血が溢れ続けていた。
時間が経てば経つほど有利と考え、アイリーンは僅かに口角を釣り上げる。
「お姫サマは仮にもグリモア議会の切り札なのよ? 貴女みたいな小娘一人と『
「『保険』……」
とても嫌な響きだった。
「そう、『保険』。マグナ=グリモアなんて法外な宝物の入った宝箱には、いくつも鍵をかけておきたくなるものでしょう?」
その言い回しは、言い得て妙だった。
的を射ていたからではない。
ジークマリアが抱いていた『嫌な感じ』を見事に言語化していたからである。
「姫様は、『宝箱』ではない」
「かもね。でも、誰もそうは思ってないんじゃない? だから『首輪』なんてものが付いている。国家級の自己防衛魔術がね」
頭上、三階で巨大な衝突音が起こった。
魔力同士がぶつかり、雷鳴のような音がする。
「へぇ、フォーグラー卿が押されてる。議会もやるじゃないの」
アイリーンはクスクスと笑い声を立てた。
「ねぇ、最後のチャンスをあげる。アタシたちの仲間になりなさい。『|七つの殺し方《クレイジーセブン》』のリーダー『必殺』は貴女を欲しがっている」
アイリーンの、鳥類と人の混じったバードマンの目がジークマリアを捉えた。
「分かるはずよ、今の貴女は議会にあてがわれた『姫巫女』サマの気を宥めるためのお守り。柄じゃないでしょう? 一瞬の生死を競う血塗れの世界の方がお似合い。こちら側なのよ、貴女は」
その黒い瞳は後ろ暗い闇を湛えており、ジークマリアを誘っている。
諦めた者の目。
守れなかった者の目。
闇に生きる者の目。
その引力がジークマリアを引いた。
だが、
「それがどうした?」
ジークマリアは魔槍アンブラルを構え直す。
「貴様らは何も分かっていない。私は議会が決めた『マグナ=グリモアの姫巫女』を守るのではない。『姫様』、『エリリア=エンシェンハイム』ただ一人を守るのだ。その意味が、貴様らに分かるか!」
ジークマリアは一喝すると、両目に滴る血涙の如き血を拭いもせず飛び立った。
†×†×†×†×†×†×†
初めて会った頃、私は姫様のことが好きではなかった。
「よろしくお願いします、ギナイツさん」
姫君としての洗練された所作で、騎士として名乗り出た私を姫様は迎え入れてくださった。
護衛上の観点から進言した寮での同室も、姫様は快く受け入れてくださった。
だが、姫様は私の思ったような方ではなかった。
姫君としての重要性、エンシェンハイム家という強力な後ろ盾を笠に着て好き勝手に振る舞い大勢の敵を作る……はずもなく、男女や種族を問わずに分け隔てなく接する姫様の周りには豊かな交友関係が構築された。
気弱で世間知らず、家柄や地位に嫉妬した輩に目を付けられてイジメの対象になる……というようなことも無く、むしろ嫉妬や悪意など、後ろ暗い心を優しく照らす温かさをすら発揮されていた。
ついでに言えば、姫様を誘拐しようと何者かが学院に干渉してくるような厄介事も、継承の儀が始まるまではついぞ無かった。
つまり学院での姫様は、私の守護をまるで必要としないぐらいに素敵な学園生活を送られていた。
そんな姫様が、私は気に入らなかった。
騎士としての初めての任務。
私だけがこなせる任務。
父上がくださった任務。
それがこんなにも簡単であっていいはずがない。
七歳で
私の鍛え上げた武力は、こんな日和った学園生活の為に存在しているのではない。
未熟で愚かな私は、そう考えた。
下手をすれば、学院で最も姫様に悪感情を抱いていたのは私だったのかもしれない。
私の邪な期待に反して、姫様の学園生活は平穏無事に最初の半年を終えた。
魔術学院には冬から春にかけての『冬休み』と、夏から秋にかけての『夏休み』、二つの長期休暇がある。
学院生の多くが帰省、あるいは学院寮に残って休暇を過ごすのが通例だったが、姫様にとって、それらは休みを意味していない。
姫巫女としてエンシェンハイム家に呼び戻され、議会の祭事や儀式に参加して義務を果たさなければならなかった。
学院外における姫様の守護は、議会直下の精鋭『グリモア騎士団』の管轄だった。
私が王都に戻る間の守護までを担当し、そこからは騎士団に任務を引き継ぐ段取りとなっていた。
王都への道中、私は清々とした気分だった。
姫様の護衛は実に張り合いの無いものだったし、その為に鍛錬の時間を大幅に減らしてもいた。
鈍り気味だった身体をギナイツ家に戻って叩き直すのを、私は心待ちにしていた。
騎士団に合流し、引き継ぎの諸事を済ませた後、ふと後ろ髪を引かれるような思いがして姫様に挨拶をしようと思いつき、姫様の乗る馬車を訪ねた。
その時、私の運命は変わった。
いや、運命を知った、と言うべきかもしれない。
姫様は、馬車の中で独り泣いていたのだ。
これは随分後に知る事だが、姫様は哀しい時や辛い時に大仰に泣き喚いたりしない。
他の誰にも聞こえないように、我慢して我慢して、それでもどうしようもなくて、微かに漏れ出すようにすすり泣くのだ。
慌てて駆け寄った私から逃れるように、姫様は馬車の隅に縮こまる。
「ごめんなさい、何でもないの。ごめんなさい、ごめんなさい……」
こんなに弱った姫様を見たことは、ただの一度も無かった。
半年間行動を共にして、ただの一度もだ。
私は、自分が大きな思い違いをしていたことに気が付き、姫様にそっと手を差し出した。
姫様は、嗚咽を押し殺しながら傍らに座る私の膝元に顔を埋め、その胸の内を明かしてくださった。
途切れ途切れの言葉から、姫様の思いが伝わってきた。
姫様にとって学院での生活は、生まれて初めての喜びに満ちていた。
初めて同年代の人間と話した。
初めて自分に傅かない人々と触れあった。
初めて、マグナ=グリモアの姫巫女ではない、ただ一人の自分として人に接した。
あまりにありふれた事象が、姫様にとってどれだけ幸福な驚きに満ちていたか。
今となっても私には察するに余りある。
だが、それは同時に、姫様に絶望をもたらした。
姫様を閉じ込める議会と言う檻。
傅く大人たち。
肩にかかる重責。
渦巻く魔と陰謀。
無垢な少女であった姫様はありふれた喜びに初めて触れ、それまで自分を押し包んでいた魔境、自分を待つ運命の過酷さをようやくにして悟られたのだった。
「私、帰りたくない……もっと皆といたい……ここは、王都は……嫌……」
姫様が初めて見せる弱い姿、初めて漏らす我儘に、私は初めて姫様という人を知った。
今になって思えば、姫様は私の悪感情に気付かれていたのかもしれない。
だが、それでも姫さまには私しかいなかったのだ。
私は、姫様の言葉を聞いている内にどうしようもなく哀しくなり、いつの間にか姫様と一緒になって涙を流していた。
私の任務は『マグナ=グリモアの姫巫女』の護衛ではなかった。
議会の最高戦力、『姫巫女』という重い宿命を背負った一人の少女。
実家に帰ることが嫌で嫌でたまらなく、一人閉じこもって泣いてしまうような『エリリア』を、この世のあらゆる汚濁と悲劇から守ることが私の使命なのだと、その時悟ったのだ。
姫様と一緒に泣き止む頃、私は心に決めていた。
「姫様、私が付いております。どんな時だって、お一人にはいたしません……」
私は夏休みの予定を変更し、議会の行事に奔走する姫様の側でその心を守り、支えることを心に誓った。
以来、私が姫様の守護任務から外れたことは無い。
†×†×†×†×†×†×†
「ふふ、残念ね! でも、ここまで誘ったんだもの。『必殺』にも顔が立つわよね!」
交渉は決裂、ジークマリアとアイリーンは再び命を奪い合い始めた。
アイリーンの銃弾が尽きることは無く、『再装填(りろーど)』の隙も存在しない。
それを確信した時、ジークマリアは迷うことなく最後の一手を決断した。
短期決戦。
銃撃を掻い潜り、翼を裂く。
捕えれば勝ち、逃せば死。
その為に最適化されたジークマリアの動きは、騎士のものではなかった。
「グガァッ!」
獣。
ジークマリアは得体の知れない咆哮と共に鎧を自らむしり取った。
『
「ガッ!」
投げつける。
アイリーンが身を翻して板金を躱すと、それは勢いそのまま天井に突き刺さった。
「ふふ、騎士ぶってた割に、やっぱり『こちら側』じゃないの!」
それまでは見せなかった好戦的な笑みを浮かべ、銃撃でジークマリアを刺しにかかる。
だが、今度の避け方はそれまでとは違う。
床を蹴り、壁を蹴り、天井を蹴り……
ジークマリアは異常なまでの脚力に物を言わせ、折れ線の如き軌道で銃撃を置き去りにした。
これでは、獣どころではない。
「な、何て動きを……」
しかし、こんな馬鹿げた動きを持続できるならば、とうの昔に討たれているはず。
そう踏んだアイリーンはすぐにそのカラクリを悟った。
「この勢い、そう保つもんじゃあない! 長くて一分ッ! そうでしょうッ!?」
アイリーンもまた加速した。
次元魔術で繋がれた弾薬庫の残りなど気になど、もはや気にしない。
小銃を常に叫ばせ続け、その反動と『風』を切り替えながらで急激な空中転回を幾度となく繰り返す。
「空中戦でアタシに敵う者など!」
狭い屋敷の構内を二つの折れ線が幾度となく立体的に交差する。
通り過ぎた後には切り裂き傷と弾痕が刻まれた。
二人だけの戦場が目まぐるしく二階の回廊を一周し、元の食堂まで回帰する。
(あと三〇秒……ッ!)
ジークマリアは、獣の如き野性の戦いをしつつも、自らの限界だけは冷静に数えていた。
アイリーンの推測は正しい。
今の動きは全速力。
一度止まってしまえば、銃撃を躱すような動きはできなくなる。
チャンスは一度きりだった。
荒れ果てた空賊たちの食堂に舞い戻り、逃れながら弾幕を張るアイリーンに最後の追撃を加える。
「そう来ると思っていたわ」
アイリーンは、ジークマリアが猪突猛進に突っ込んでくるのを見て、ほくそ笑む。
「これの事は習ったかしら?」
カチン。
アイリーンの懐から円筒形の物体が転び出る。
「『
ジークマリアの槍の穂先がそれを弾いた瞬間、金属缶が炸裂して食堂中に白煙が噴き上がった。
「グゥッ!」
白煙に飛び込んだジークマリアの視界は途絶し、アイリーンを見失う。
互いに視界を喪い、数秒の休止。
予め視界途絶に備えていたアイリーンが、先にジークマリアの影を捉えた。
「死にな!」
「ッ!」
小銃の掃射がジークマリアの体躯を薙ぎ払った。
何とも呆気なく、ジークマリアの身体は引き裂かれて実体を失った。
そう、『実体』を。
「ランク4、魔術『闇部侍臣(シェイドマン)』……ッ!」
影。
白煙の中、ジークマリアは自らの影人形とすり替わっていたのだ。
一瞬の手品。
上手くいくかも分からないぶっつけの策に、アイリーンは初めてジークマリアの術中にはまった。
「チィッ!」
アイリーンは最大限の魔力で風を起こし、逃れようとする。
(大丈夫だ、槍はアタシに届かない!)
白煙の中から迫るジークマリアの速さを刹那に見切り、アイリーンは確信する。
ジークマリアは限界だった。
銃撃で体中穴だらけから立ち直ったばかりでこれだけ動けていることが奇跡に近い。
(この一撃を躱せば、全てが終わる……ッ!)
アイリーンの推測も戦術も、当たっていた。
ただ、一点を除いて。
ぞ。
白煙の合間から、ジークマリアの眼光が覗く。
そこにあったのは、先程まで飛び回っていた獣の目ではない。
確かな意思と計算を以て勝利を確信した、戦士の目であった。
「『
短く呟いたのは、『鎧を纏う』呪文。
(……何故、今?)
アイリーンは思考した。
今さら防御力を取り戻そうとしたのか。
違う。
ならば……?
コンマ数秒の逡巡の後、アイリーンは背後を振り返ろうとして、
ザクリ。
先程ジークマリアが投げ放った鎧の板金が、背後からアイリーンの翼にめり込んでいた。
ジークマリアの身体に纏われるように設定された魔力が、天井に刺さった板金を引きよせたのである。
「あの一瞬で、策を……」
ジークマリアへと引き寄せられる板金に動きを封じられ、アイリーンの動きが止まる。
「覚悟ッ!」
一閃。
ジークマリア渾身の一突きがアイリーンの右肩を刺し貫き、その右翼を斬り飛ばした。
「ああぅッ!」
苦痛に顔を歪め、漆黒の羽根が鮮血と共に辺りに舞う。
「まだだ、まだ……」
右の翼を喪ったアイリーンは墜落した。
それでもなお左手の小銃をジークマリアに向けるが、アンブラルの一閃により、長らく彼女を苦しめてきた小銃が両断される。
二人の間に完全な決着が付いた瞬間だった。
よろよろとふらつきながら起き上がろうとするアイリーンを、ジークマリアは毅然と見下ろした。
「ふふ、翼も無いのに、よくぞアタシを捕まえたね。流石は『必殺』が見込んだ戦士……」
「『必殺』とは何者だ。何故、敵である私を欲しがる?」
ジークマリアの問いに、アイリーンは悪戯に笑んだ。
「仲間になるなら教えてあげてもいいのだけどね……」
「ふん。では、いつか本人をふんじばって聞くとしよう」
ジークマリアは、二度と飛べなくなったアイリーンを真っ直ぐに見つめる。
「……別の形で出会っていたなら、貴様とは馬が合ったかもしれない。だが、私は貴様のようになるつもりはない」
敬意と決別。
アイリーンは口から血の泡を噴いた。
「ふ、ふふ……だったら、あの子を守りきってみせなさい……アタシにだってね、昔は……」
言いかけた言葉は途切れた。
アイリーンは静かに力尽きていた。
「……」
ジークマリアは、血涙のように両目から垂れた血を拭う。
「姫様。今、お迎えに上がります」
そのまま、よろよろと三階に向かう階段へと足をかけた。
『断章のグリモア』
その28:休暇について
エリリアとジークマリアが在学しているラヴォン魔術学院を始めとして、マギアス魔法王国の学院はおおかた二期制を取っている。
春から夏にかけての『春期』と秋から冬にかけての『秋期』であり、その合間に『春休み』と『夏休み』がある。
祝い事などは一年の内で冬から春にかけての時期に多いことから、多くの学院生は春休みを利用して実家に帰省することが多い。
とは言ったものの、それは平地人に限った習慣で、他の七大種族においては異なった時間軸で学院と関わるものが多い。
例えば長命なエルフは年単位で休暇を取る事もザラだし、逆に魔に長けたマーメイド種族は飛び級で卒業していく。
エリリアとジークマリアは、マグナ=グリモアの継承儀式に臨むために休学している。
平地人にしては珍しい事情ではあるものの、学院全体の雰囲気としては珍しいことではない。
この旅はエリリアとジークマリアにとって、長い長い夏休みでもあるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます