いつの間にかクラスの注目の的に…

 次の授業のチャイムが鳴ったけど、リョウちゃんはまだ戻ってこない。


 先生が教室へ入ってきた。



「起立!」



 クラス委員長の合図で、クラス全員が一斉に立ち上がった。


 それと同時に、リョウちゃんがスッと入ってきて私の隣りの席へ。



「礼!」



 委員長の合図でクラスの生徒たちが、先生の方へ一斉にお辞儀をした。



「着席!」



 ストン!

 と、席に着いたリョウちゃんは走ってきたのか、かなり息を切らしていた。



「どうしたのよ?」


「ハァ ハァ … 先生に呼び出されて……」



 息を切らしながらも、私の質問に答えてくれるリョウちゃん。



「…バスケ部に入らないか?って」



 そっか。

 体育の先生は、「バスケ部」の顧問もやっていたんだっけ。



「あまりにもしつこいから、次の授業があるからって、逃げてきた」


「そこ、静かに…!」



 リョウちゃんが小声で話し出したとき、先生が私たちの方を指差しで注意した。



 また後で話、訊こうかな。




 その日の放課後…――。



「リョウちゃん!」

 …って、声をかけたのだけど。


 HRホームルームのチャイムが鳴り終わるのと同時に、クラスの男子生徒たちが一斉に、リョウちゃんの周りに集まってきた。


 一気に、数名の男子生徒に囲まれたリョウちゃん。


 さすがに、声をかけるタイミングを見失ってしまう。


 しばらく観察していると、一人の男子生徒が。



「リョウ。やっぱ お前、スゲェな〜。

 あそこでロングシュートを決められるなんてさ」



 あ。

 トオルくんと同じこと言ってる…。



 さっき、見事なロングシュートを放ったリョウちゃんは、いつの間にか クラスの注目の的になってたらしい。


 やがて、話は別の方向へそれて、バスケ以外の全然関係ない話になっていってた。


 何のスポーツでも、ずば抜けた才能があるリョウちゃん。


 運動部に入っている男子生徒からは、何とか自分たちの部に入れようと、必死に頼み始めた。


 そのうち、「今度の県大会まででいいから」って、助っ人頼みする”野球部”の男子生徒まで現れた。


 この時期は、何処の部も必死らしい。



 こうなると、しばらく帰れそうにないな…。


 って、思っていたら、私の様子に気付いたのかリョウちゃんが、ちらっとこっちを見て。



「あ 先…帰ってて」


「う…うん」



 リョウちゃんが困惑した表情をしていたので、思わず返事をしてしまったけど。


 仕方がない。

 外で時間、潰そうかな。


 そう思って、教室から離れた。






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