トオルくんの意外な一面

 次の授業のため、ユウコと一緒に教室へ向かっていた。


 すると、後から「サオリちゃ~ん」って、トオルくんが走ってきた。

 でも、一緒に終わったはずのリョウちゃんがいない。



「サオリちゃん。オレのプレー、ちゃんと見てくれた?」


「え… ?」


「その顔は… 見て…ない…よね……」



 トオルくんは、ちょっとショックだったみたいだ。




 ごめんね…。

 トオルくん……。



 少し罪悪感を感じたとき、 ユウコが、私たちの真後ろから歩いているトオルくんに話しかける。



「それより リョウくんはどうしたのよ?」


「あぁ アイツね。さっき、先生に呼ばれてたよ」




 ”先生に呼ばれた”って… 


 何があったんだろう…?



 トオルくんは、さっきのミニゲームでよっぽど悔しかったのか、珍しくグチグチと文句を言い出した。



「あそこで、ロングシュートが入るなんてありえねーぜ。

 少し前までは、オレの方が上だったのになぁ」


「リョウくんだって、いつまでもあんたと同レベルじゃないわよ」


「そうなんだよなぁ~。 

 学歴も、いつの間にかオレを追い抜きやがって……。 

 アイツ… どこまで伸びるんだ」


「そのうち 女の子たちも、リョウくんに取られちゃったりしてね…」



 ユウコが悪戯っぽい笑みを浮かべて言い放つと、トオルくんは 急に慌てた素振りを見せる。



「そ それは、絶対にありえないっつーの!」



 …って、言ったかと思うと。

 次の瞬間、コロッと態度を変えて。



「でも、女の子たちはオレの方が、若干モテてるしな~」



 そう言って、トオルくんは得意げに笑った。




 何だか 少しリョウちゃんに似てきた…よ…ね?



 いつも冷静なトオルくんだと思ってたけど。

 こんな一面もあったんだぁ~。






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