友情から恋へ意識し始めた瞬間

 今日は、苦手な体育の授業があったんだぁ。


 男子生徒は『バスケットボール』女子生徒は、『バレーボール』だったので、 体育館を半分に分けて、それぞれ自由に練習をしていた。




 ふと、隣のコートを見ると 男子たちが、勝手に””を始めていた。


 どうやら、『リョウちゃんチーム』と『トオルくんチーム』に分かれて、対抗試合が始まったらしい。


 女子たちは、授業そっちのけで男子たちの方を気にし始めて、ざわざわと騒ぎ出した。




「きゃー トオルく~ん!!」

「かっこいい~~~!!」



 トオルくんのファンらしき女子たちは、しきりに声を張り上げていた。

 もうこの場所は、””みたいな勢いになっている。



 クラスの半分近くが、『トオルくんチーム』を応援し始めた。




 やっぱり目の前で見ると、あの人気はすごいっ!



「サオリは、どっちの応援…?」


「え… ?」



 いつの間に来たのか、ユウコが側に寄ってきていた。



「どっちって… べ 別にどっちでも……」



 一瞬、リョウちゃんの方を意識してしまったけど。

 ユウコは、そっと耳元で””な言い方をした。



「一部の女子には、リョウくんも結構人気あるみたいよ。

 早く告白しないと、誰かに取られちゃうよ」


「な 何言ってんの…?」



 一生懸命 表情に出さないようにしてた。

 でも、ユウコには一瞬で見抜かれてしまったらしい。



「でも、好きなんでしょ?」


「まっさか~!

 あんな子供ガキ 何とも思ってないもん」




 昨日、おソバ屋さんで赤っ恥をかかされたことを思い出して、急にムカムカしてきた。



 全っ然 優しくないし~~。

 人が気にしていることをずけずけ言っちゃうし~~。


 ””になれるかも~?なんて、全っ然 思ってないもん。



 とか、思いながらも………。


 リョウちゃんを目で追っている自分に気付いていた。



 あんな真剣な表情、初めて見た…。


 元々、運動神経が良かったリョウちゃんが、今 トオルくんと互角に競い合っている。




 ドキドキドキドキ……。



 そう思った途端、また昨日感じた胸の鼓動。

 今度は、”もしかして” じゃなく、はっきりと感じる。


 サオリ 今…。

 リョウちゃんに恋してるんだぁ~。




 やがて…――。

 終了の合図が鳴り終わろうとしたときだった。


 リングにスーッと吸い寄せられるかのように、ロングシュートが放たれた。


 それをやってのけたのは、リョウちゃん。

 『トオルくんチーム』をわずかな差で逆転勝ちした。



 クラス全員が、ワ~って歓声をあげた。

 それと同時に、授業終了のチャイムが鳴り響いた。






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