まだ『お子ちゃま』だから

 ”じゃぁ リョウとは、まだ何の関係もないんだ”



 は?

 それって …どういうこと?

 何を言っているのか意味がわかんない。



「じゃぁさ、他にとか出来た?」



 しつこく訊いてくる彼に、私は 恐らく真っ赤な顔をしているんだろう。

 首を横に振った。



 そういう私を見てトオルくんは、ニコニコと笑みを浮かべて。



「可愛いね、サオリちゃん。

 あのさ、付き合っているヤツいないんだったらさ、今度デートしようよ」


「………………………………」



 突然のことで頭がついていかない。



 もしかして、サオリ…。

 今 口説クドかれちゃってる……?


 昨日、ちょっとだけ会話したばかりなのに。

 もしかして、いきなりの誘い……?



 今まで男の子から、そんな風に言われたことはなかった。

 急に、心臓がドキドキしてきた。



 そのときだった。



 タイミングがいいのか悪いのか、騒々しい音が聞こえて、リョウちゃんが教室に戻ってきた。


 手には、缶ジュースが三つ。

 どうやら、三人分買ってきたらしい。



「ほらっ! オレンジジュース、買ってきたぜ!」


「あ、ありがと……」



 私は、差し出された缶ジュースを素直に受け取る。



「ついでにトオルの分も買ってきたぜ」


「サンキュ!」



 トオルくんは、何事もなかったかのように、平然としていた。



 なかなか気が利くね…――。



 机の上に置かれた二つの缶コーヒーを眺めながら、突っ込みを入れようかと思ったんだけど。


 さっきの動揺で、上手く言葉が出なかった。




「…ん? どうした…?」



 真っ赤な顔をしてウツムいている私に気づいたのか、リョウちゃんが不審な顔をしている。



 「別に」って、言いかけようとしたのだけど。

 先に、トオルくんが…。



「別に。ただ、 話してただけだよ」



 え…。

 普通に……?

 って…。



「普通に」を強調して言ったトオルくんは、リョウちゃんの不審な表情にも冷静だった。



 もうっ!

 トオルくんの嘘つき……っ!!



 そう思ったけど、リョウちゃんには表情を読まれたくなかったので、黙っていた。




 だけど、リョウちゃんには何もかもお見通しだったようで。



「トオル あんましからかうなよ。

 この子、まだ  だからなっ!」



 ”ぽんぽん”と私の頭を軽く叩いて。

 リョウちゃんはニヤッと、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。



「べ、別にお子ちゃまじゃないもん」





 トオルくんは、リョウちゃんにとっては、初めて出来た男友達。


 トオルくんとは、あまり会話したことがなかったけど。

 同じクラスになってから、私にも話しかけてくるようになった。


 と、いうよりも………。


 女の子だったら、って言った方が正しいかもしれない。


 そのころから、他の同級生よりも落ち着いていて大人っぽかったトオルくん。


 そのせいか、学校ではかなり目立ってて多くの女子に注目が集まっていた。


 ただ、というレッテルを貼られているせいか、男子の間では『遊び人』『女ったらし』っていうも広まっていた。


 それがなければ、完璧のはずなんだけど。






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