第20話 婚約式 2
婚約式は厳かな雰囲気の中で行われた。ジュリアスも緊張しているのか硬い表情をしている。しかし式が進んで求婚の場面になると、いつも意地悪ばかりしてくるジュリアスから、真剣な面差しで愛の言葉を贈られる。
「ミア、愛しています。貴女の笑顔を見ると胸が高鳴り、声をきくと切なくなる。貴女と共に人生を歩んでいきたい。どうか私の手を取って変わらぬ愛を誓うことを許してください」
ミアも恋に憧れる十五歳の少女である。いつも意地悪をしてくる相手であり、本心からの言葉ではないと分かっていても、ひざまずいて愛していると言われると、好きなわけでもないのにドキドキしてしまう。周りに知られないように平静を装って返答の言葉を口にする。
「ジュリアス、あなたと共に歩んでいきたい。どんなことがあっても、私の手を離さないでください」
お互いの腕に婚約の証のブレスレットを嵌めて、相手のブレスレットに魔力を流す。ミアも昨日練習したので息をきらすこともなく魔力を流すことが出来た。
これで婚約者に何かあれば分かるようになり、外す時もお互いの魔力を流す必要があるため、ミアのブレスレットはジュリアスが、ジュリアスのブレスレットはミア以外の人間が外すことが出来なくなる。例外は相手が亡くなった時に自然と外れるときだけだ。
貴族と違って魔法が使えない者が大多数の平民たちは、魔力を流す代わりに血をブレスレットに垂らすことで、お互いの安否が分かるようになる。しかし自分で自由にブレスレットを外すことが出来るため、貴族の婚約と比べると相手を拘束する力はなく形式的なものだ。
そして貴族の婚約は相手が平民で魔力がないという例外を除いて魔力を流すことで成立することから、魔導学園へ入学が決まっている二人は魔力を流して婚約の儀式を行う必要があった。
「ここに二人の婚約が成立したことを宣言する」
おじ様の言葉でこの婚約が成立され、この部屋にいる貴族たちによって、この場に居合わせていない貴族たちにも周知されることになる。
「おめでとう」
「ありがとうございます」
次々とお祝いの言葉をかけられミアが笑顔で返している横でジュリアスも笑顔で祝いの言葉を掛けられていた。その横顔からは婚約を喜んでいるようにしか見えない。
落ち着いてきたところで、ジュリアスがおじ様に退出の許可を願い出た。
「父様、ミアも疲れているようですし、僕たちは部屋へ戻ります」
「ああ、そうだな、部屋でゆっくりしなさい」
二人で退出し、ジュリアスの後について廊下を歩いていくと、ミアのために用意された客間の前へとたどり着いた。
「あの‥‥‥‥お疲れ様」
ミアがおずおずと声をかけると、ジュリアスは背中を向けたまま立ち止まった。
「僕はお前が婚約者だなんて認めない」
ジュリアスは吐き捨てるように言うと自分の部屋へ戻って行った。
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