第24話 ゲームショップでの出会い③
(ほ、豊穣学園の生徒……、だと……!?)
その姿を見た瞬間、俺の体は完全に硬直してしまう。
対照的に頭だけは回っていたが、そちらも焦りまくりであった。
(俺としたことが、他の客、しかも女に気づかないとは……)
獲物を目の前にした瞬間の油断というヤツだろう。
まさか、そんな体験を自らがすることになるとは思ってもみなかったが……
ひとまず、俺は即座にその場を離脱しようと踵を返す。
しかし、それを止めるよう女生徒に腕を掴まれてしまう。
「待ちなさい! 何も逃げることはないでしょう!?」
「ヒィッ!」
その女生徒は整った容姿でかなりの美人だったのだが、険しい表情をしているため、かなりの迫力があった。
俺は思わず情けない声を上げてしまい、慌てて口を押える。
「その反応は……、少し傷つくわね……」
どうやら女生徒は、俺の反応に少しショックを受けたらしい。
しかしまあ、それも当然か……
俺だって異性に「ヒィッ!」なんて反応されたらショックだ。
多分、暫く立ち直れない気がする……
「あの、その、すみません……。これは、少しびっくりしたというか……」
「……まあ、いいわ。ところで店長、これはどういうことなの?」
「ん? どういうこととは?」
目の前でひと悶着あったというのに、店主は相変わらずマイペースでゲームに勤しんでいた。
接客業としてどうかとは思うが、この店も趣味でやってるだけらしいので、その辺のことは一切気にしていないのだろう。
「この男子生徒のことよ。この店にはウチの生徒は誰も来ていないって話じゃなかった?」
「ん、ああ、そのことか。確かにそうだが、この少年がここに来るようになったのは、つい最近のことなんだよ。しかも、制服を着て来たのは今日が初めてだ。だから、君と同じ学校だというのも今知ったところだ」
「そういうことか……。でも、貴方って高等部の一年生よね? それにしては見覚えが……。もしかして貴方、外部編入だったりする?」
「そ、そうですけど……」
見覚えって……、もしかしてこの人、高等部の生徒の顔を全部把握してるのか……?
いや、今の言い方からすると、もしかして元中等部の生徒も……?
そんなことって、あり得るのか?
「まさかこの私が、男子生徒のチェックを漏らすなんてと思ったけど、そういうことね……」
こ、この人、ちょっと怖いぞ……
チェック漏れって、一体
ま、まさか、見た目からは想像できないが、所謂男〇〇人斬り的なヤツなのか?
だとしたら、俺はここで童貞を喪失してしまう!?
「貴方、今失礼な事考えてるでしょ……」
「っ!?」
「いやいや、そんなビックリされても、わかり易す過ぎだからね?」
クッ……、コミュニケーション能力の低さが仇となったか……
俺は一刻も早くこの場から逃れようとするが、女生徒の握力が思いのほか強く、腕を切り離せない。
「……勘違いをしているようだけど、まずは逃げるのをやめなさい? それにホラ、買うんでしょ? 戦国TUBU 5」
「…………」
……とりあえず、まずは冷静に『戦国TUBU 5』を買うことにするか。
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