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 話が出来過ぎた炎上勢力壊滅の情報、実は罠なのではないか――という考えもあった。

実際、アルストロメリアのニュースを見ても疑っていた人物がいるほどである。

それ位に今回の一件は出来過ぎていたのだ。まるで、ネタ切れか何かでスケジュールを早めたとか――。

「本来のアルストロメリア、彼女が止めを刺したのが勢力の一つとは考えないのか?」

 ガングートの一言、それが全ての状況を変える。

明らかに出来過ぎている今回の流れは――何か別のフラグが立つ可能性があったからだ。

そこまで警戒する人物はガングート位と思われたが、もう一人いる。

「確かに。とかげのしっぽ切りは今に始まった事ではない。もう少し冷静に対応するべきね」

 やはりというか、その反応をしたのは舞風まいかぜだった。

「大規模な炎上勢力は、この後に出るとは考えにくい。小規模程度であれば、ガーディアンでも対処できるのでは?」

 瀬川せがわプロデューサーは、これ以上の炎上勢力が出るとは思えない――と楽観視している傾向はあるだろう。

今の瀬川にとって重要なのはヴァーチャルレインボーファンタジーの動向である。コラボはいまだに実現していない一方で――。

「ガーディアンで対処できる勢力であれば、ここまで拡散したりはしなかった」

 団長はSNS炎上勢力を操っている存在、その正体が更に上の存在とも考えていた。

それこそ、まとめサイトを利用して宣伝する広告会社、権力者等と言った勢力だろう。

「SNS炎上勢力は、それこそ動画配信者のように誰でもなれるような物。権力者だけがなれるとしたら、もっと強引な手段もとれる」

 団長の発言を否定するのは――何と、ビスマルクだった。彼女もSNS炎上勢力によって起きた様々な事件を見ている。

それを踏まえると、権力者だけが炎上勢力に慣れるのはおかしいのでは、と。

「つまり、今の世の中は誰でもSNSで情報を配信できるからこそ、炎上勢力に誰でもなれる、と――それも一理あるだろうな」

 ビスマルクの発言はテンプレの気配もするのだが、間違った事は言っていない――と言うのは、ガングートだった。

「本当の意味でのSNSの闇は――」

 舞風も困惑はしつつ、下手に炎上勢力が規模を大きくすれば――。

そう考えていても、今は情報が少なすぎる。アルストロメリアが勢力を減らしているのは歓迎しつつ、警戒はする事にした。



 様々な炎上勢力がマルス達に挑んでは返り討ちを繰り返していく。

そうした独自の作戦を展開し、炎上勢力の動向を探ると言う行動を続けていく内に、日付は七月六日になっていた。

まとめ動画も拡散し、炎上勢力に対する規制やSNSマナーを小学校から教える等の細かな箇所で改善を求める事はある。

それでも根本的な解決にはならないだろう。SNSマナーを教えても炎上勢力は、予想もしない所から誕生するからだ。

【マルス達は何の為に戦っているのか?】

【彼らが孤独と言うのは間違いだな。SNS上でも様々な意見が浮上している】

【WEB小説の作品から現れた彼らは、向こうの世界からこちらのSNSマナーを訴えるとでも言うのか?】

【ありそうだ。マルスは過去に二次創作メアリー・スーとして炎上していた時期もある。今も――だが】

【一体、何が目的で彼らはSNS上で無双をしようとしているのか?】

 SNS炎上の規制をするのが手っ取り早い可能性はあっても、そう言った条例などで逆にユーザーを縛ってしまう可能性も否定できない。

彼らの活躍は、逆に言えばマルス達の行動を通してSNS上で何を怒っているのかを考えてもらう為の物――そう言えるだろうか。

【しかし、彼らがSNS上の現状を見て何かを感じているのであれば、我々が動かなくてはいけないのでは?】

【まとめサイトの情報を鵜呑みにしたバズり目的のメッセージが、SNS上で拡散していく様子は――】

【物語世界も現実世界も一緒という事か】

 様々な意見もあるのだが、彼らは正しくメッセージを伝えているのだろうか?

マルス達もSNS炎上勢力やバズり目的の勢力と同じなのでは――そう思う人物もいるだろう。

彼らのメッセージを正しく伝えられているかどうかは、情報発信をする側のモラルにゆだねられているのかもしれない。 


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