15-6
マルス、団長、
フィールド自体はバーチャルフィールドの類であり、自分達がこの世界へ転移した訳ではない。
ARフィールドが、この場所を構築したというのが正しいのだろう。
(この世界って、どこかで見覚えが――)
舞風は映し出された光景に見覚えがあると思うのだが、団長は更に別作品なのではないか――と考える。
その三人が目の前に発見した建物は、自分達の草加市でも似たような系列店があるネット喫茶だった。
「この店名、まさかと思うが――」
団長は店名を見た途端に、警戒感をあらわにする。何故、ここまで強い感情で警戒するのか?
それには、マルスの誕生経緯にも理由があった。彼の元々の登場作品のジャンルは――。
「それを踏まえると、この先にある物は余程の――」
舞風も団長の発言を聞き、何となくそちらも考えられると思った。
おそらく、舞風と団長が最初に連想したタイトルはお互いに違う物である。
三人が無事に深層WEBに到達したのを確認した他のメンバーは、ARゲームエリアに侵入してきた炎上勢力を叩く為に準備する。
しかし、向こうも強硬手段で突入すれば警察に逮捕され、それこそ自分達が炎上して自滅は確実だ。それは学習しているだろう。
(強引な突入とか、力押しでは来ないみたいだね)
ヌァザのコクピット内で待機していたハヤト・ナグモだったが、こちらの方は不発だった。
その一方で、店内に侵入している人物は数人確認出来ている。しかも、一般客として紛れているので迂闊に手が出せないのだ。
「一般客に紛れている以上、下手にこちらが動けば炎上するのはこちらと言う事か」
武器に関しては展開をしていない黒のシュヴァリエは周囲を見て、一般客がスマホを片手に写真を撮ろうとしている人物を発見し、そちらを警戒する。
他のメンバーも同じようなスマホ撮影をしている人物を発見し、
ARフィールドでは盗撮防止という観点で妨害電波が流れてスマホは使えなくなるのだが、鍵の持ち主が使用しているのはARゲーム専用ガジェットのはずだ。
それのジャミングを仕掛けられるという事は――。
「まさか、炎上勢力がガーディアンに匹敵する技術を持っていたとは――」
サーバールームで様子を見ていた瀬川は炎上勢力がARガジェットのジャミングを仕掛けてきた事に驚く一方で――違和感も持った。
一体、彼らの背後には何が存在すると言うのか? そもそも深層WEBが元凶だと言う事を向こうは知っているのだろうか?
その上でこちらをピンポイントで攻めてくるのには、別の理由も浮上しそうだが――。
「とにかく、向こうがようどう出ない事を祈るばかりだ――?」
瀬川は自分が行った事に対し、何か思い出したかのようにビスマルクへコンタクトを取ろうと試みる。
しかし、ARガジェットのジャミング、スマホは使用不可、その中でどのような通信手段で連絡すればいいのか?
(そう言えば、新作ARゲームでは――)
瀬川がサーバールームから少し離れた別のガジェット開発室へ移動し、そこでメットタイプのARガジェットを発見する。
このガジェットは様々な実験要素も絡んで実用化が出来ないでいる代物だが、今はそうも言ってられない。
「頼む、動いてくれ――」
メットを被り、電源を入れると――ARシステムのOSが起動、その後に現在のARフィールドの起動状況に合わせた環境同期が行われる。
そして、同期中にシステムエラーが発生し、そこで強制シャットダウンとなった。やはり、未完成と言う事で起動は出来ない?
(システムエラーのシャットダウン? 一体、どういう事なのか)
ARメット等のガジェットではシャットダウンは稀に発生するのだが、さすがにキャパシティーオーバーのようなケース以外で落ちる事はめったにない。
つまり、強制シャットダウンしたのは未完成以外にも別の原因があると言える。
そう言ったような攻防が行われるとは知らず、三人は目の前のネット喫茶に入る事になった。
店内の様子は自分たちしかいないと言う訳ではなく、一般客はいるようである。しかし、彼らが声をかけるような様子はない。
(あの人間はゲーム内のアバター等とは思えないが、どういう事なのか)
マルスは周囲の一般客の動作を見て、一定の動作をインプットされているようなアバターではないと悟る。
しかし、声をかけるような気配もないので考え過ぎとも感じてしまう。
(あの人物、何処かで――)
団長が発見したのは、ノートパソコンに集中するフードを深く被った女性だった。
体格は――舞風の方をちらりと見るが、すぐに視線を戻す。
「どうやら、ここへアクセスする人物は――君たちだったみたいだね」
団長の視線に気づいた女性は席から立ち上がり、団長達の方を振り向いて、両手で深く被っていたフードを外す。
そして、その顔を見た時に団長は――。
(違う!? 彼女は――)
団長のあては外れた。彼女の正体、それは深層WEBに存在する人物であるのは間違いないのだが――。
そして、舞風は彼女の正体をズバリと当てる。
「アルストロメリア――別作品の同名人物が複数存在するから、どちらなのかもわかりづらかったけど」
舞風の一言を聞き、アルストロメリアと呼ばれた女性は若干不機嫌な表情になるが、ソレは無意味と悟り、逆に笑う。
大きな笑い声で笑えば、ネット喫茶で出入り禁止になりかねない。しかし、スタッフが駆けつける事はなかった。
「あの時に現れたアルストロメリア、あれは逆にフラグとかじゃなくて――」
アルストロメリアと呼ばれた女性は、自分のスペースに置かれたノートパソコンを両手で持ち上げ、画面を三人に見せると同時に――。
「こう言う事なのよ。ある人物によってバラバラになった世界を、ハッチワークのように足した結果――」
(まさか?)
(そんな事が――)
(やっぱり)
衝撃のネタバレとも言えるような画面に映し出されていた物、マルスと団長は驚く一方で、舞風の予感は的中していた。
全ては、ある人物が生み出した二次創作としての物語――プロットを用意して生み出された世界だったのである。
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