15-5

 様々な情報収集をしていく内に、団長はある結論に至った。

一人では見えないような光景も、複数ならば見えるかもしれない――と。

「もう一つの可能性がある。今の君たちならば、それも可能かもしれない」

 様々な状況を踏まえ、もう一つの可能性がある事を団長は打ち明けようとしている。

ガーディアンだけではSNS炎上勢力を駆逐するだけで終わる可能性さえ否定できない。

だからこそ団長は秘密裏に二代目蒼流の騎士を名乗って、様々な勢力の動きでもあったのだが――。

「君たちに協力を要請したい。倒すべき存在はSNSの闇とも言える、深層WEBだ」

 団長のワードを聞き、言葉も出なかったのはビスマルクである。他のメンバーも複雑な表情をしているようだが――。

(そう言う事だったのか。通りで――)

瀬川せがわプロデューサーは、そのワードを聞いたことで何となく犯人の規模が分かった気がした。

インターネット上で検索が出てこないような場所で行動している存在ならば、どう考えても発見できないはずである。

SNS炎上勢力やまとめサイトでさえ深層WEBの存在からすれば、捨て駒も同然という感じなのかもしれない。

「相手にする存在が、それこそ神や創造神とか言われれば対処は不能だが――これならば対処は出来る」

 団長は深層WEBに潜む存在と対話し、それによって解決の糸口を探ろうとしたのだ。

さすがにガーディアンの大半は深層WEBが真犯人とは思わないだろう。それ位に特定之時間がかかり過ぎたと言える。



 その後、団長の話を聞いたメンバーは作戦会議を行い、指定した日時である七月五日に同じ場所へ集合した。

蒼流の騎士は深層WEBにあった題材から設定した登場人物と言う事もあって、ARガジェットを使えば接触は可能らしい。

「まさか、ARガジェットのシステムがこう言う形で役に立つとは」

 団長自身も改めて、このシステムがパソコンやスマホ等ではアクセス不能な深層WEBへ接続できる事にも驚きを感じる。

他のメンバーもアクセスを考えていたのだが――。

「全員でアクセスして、逆に他の勢力に対処できないのは危険だ。深層WEBへのアクセスは小規模で行う」

 その話を聞き、黒のシュヴァリエ、ナイトブレイカー、ハヤト・ナグモ、あいね・シルフィード、レッドカイザー、ガングートは残る事にする。

「深層WEBなんて、自分には興味がない。ここは、マルス、団長、舞風まいかぜで行くべきだろう」

 ガングートの言う事も一理あるのに加え、瀬川もWEBへのアクセスは辞退した。

最低でも、ARシステムを管理できるメンバーは必要と考えての判断らしい。

「ワードを変えよう。ガングート、アカシックレコードは知っているか?」

「アカシックレコード、それをどうして!?」

 団長の出したアカシックレコードと言うワードを聞き、ガングートは他のメンバーには見せないような動揺を見せるのだが――。

「そのワードを出した以上、最初からこの流れになるを知っていたのではないのか――団長?」

 団長に対し、武器を展開して脅迫しかねないような状態だったのは、アルストロメリアである。それに加え、本来の彼女は――。

「100%プロット通りになる物語が世の中にあると思うか? 自分の生み出した蒼流の騎士も、試行錯誤の末に――」

 団長はアルストロメリアに対して反論しようとしていたのだが、突如としてビスマルクのスマホが鳴りだした。

連絡主はデンドロビウムと表示されている。

「そちらからかけてくると言う事は――」

『非常事態が起きた。少し前に何者かが不正アクセスをしたのは知っているか?』

「不正アクセス? 初耳だな」

『ARバトルロイヤルで、プレイヤー以外の何者かがアクセスを行った形跡があった』

「バトルロイヤルで? まさか、その日時は――」

『そうだ。マルスが偽者の蒼流の騎士と戦った、あのタイミングだ』

 会話の内容でビスマルクは何となく状況を察する。

確か、あの時の蒼流の騎士は何かを呼び出そうとして失敗――と言う様子を見せていた。

つまり、呼び出す動作自体が不正アクセスだったか阻止したクラッカーがいたのか――のどちらかになるだろう。

「その連中が報復に来ると言う事か」

『察しが良くて助かる。こちらも八割ほどは制圧しているが、残りは対処しきれそうにない』

「聞いたか? 何としてもマルスと団長、舞風を連中に接触させるな」

 ビスマルクの話を聞き、残ると言ったメンバーがそれぞれの場所へと向かい始める。

何としても炎上勢力に目的を悟らせてはいけない。全ては、決着の為にも。



 その一方で、深層WEBの住人と思わしき人物は『草加市の何処か』からネットの様子を見ていた。

外見はパーカーのフードを深く被り、見た目的なぽっちゃりな巨乳女性っぽいのが分かる。

フードを深く被っては周囲からは不審人物と思われそうだが、ネットを見ている場所が個室のネット喫茶と言う事もあって問題はないようだ。

「ありきたりの偽装では、騙されないようで。炎上勢力もまとめサイトも、結局は読者の反応を見る為の存在だと――」

 彼女が見ているのはSNS上のWEB小説サイトで、深層WEBではない。

あくまでも『彼女の視点』では深層ではないのだろう。あくまでも――の話だが。 

「そろそろ、向こうにも気付かれるかな。一連の事件が、全て――ある作品を注目させる為のものだって」

 彼女の使うノートパソコンは自前の物で、ネット回線のみがネット喫茶で使用している物だ。

しかし、自宅ではなくあえてネット喫茶でネット接続するのには何か理由があるのだろうか。

「フィナーレと行きますか――って、こちらにアクセスしている存在があるの?」

 彼女も唐突なアクセスには驚くしかない。自分の電話番号もメールアドレス等を含めて連絡先が向こうに知られるはずもない。

それなのに、ここへピンポイントでアクセスするなんて――。

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