15-4

 瀬川せがわプロデューサーがある人物を捜索していた時に、まさかと言える人物と遭遇した。

今の彼にとっては、イレギュラーな人物とも言えるのだが――。

「あくまでもガーディアンとは別行動だ。それを踏まえて通してほしい」

 その人物とは、二代目蒼流の騎士こと団長だったのである。彼との遭遇は瀬川にとっても想定外で、目が点になっている。

今の彼に敵対の意思がないのはSNS上のニュース等を踏まえると、一応は信用出来る。そう瀬川は判断した。

「通す事に関しては問題ない。しかし、何をするつもりだ? 返答次第では――」

「分かっている。こちらはマルスに用があるのだ。時間にも余裕はない」

 時間に余裕がないと聞き、あっさりと通す瀬川だが――彼とマルスに接点はあるのだろうか?

今は考えても仕方がない。もしかすると、彼の言う『時間に余裕がない』は――。

(まさか、敵もコンテンツ・リビルドに気付いたのか?)

 瀬川はある意味でも切り札になるであろうコンテンツ・リビルドを阻止する為に、炎上勢力が動いているのか?

その考えだけは外れてほしいと思いつつも、団長に例の場所へと案内する事にした。



 団長が案内された場所、そこには既にビスマルクの姿もあった。これには、二人も驚きを隠せない。

バトルの方は決着したらしいのだが――勝者はマルスとなっている。

(どうやって、ここに潜入出来たのか?)

 瀬川の方は彼女がここにいる事に疑問を持つ。それ位には、ここにいる事に衝撃を隠せなかった。

(ビスマルク? まさか、向こうもアレに気付いたのか)

 一方の団長はビスマルクが何かを伝えにやってきたと考え、こちらが掴んだ情報を向こうも知っているのでは――と。

観戦フィールドの外にいて、そこから団長と瀬川を確認して歩いてきた人物、そちらにも二人は驚く事になる。

「アルストロメリア? 一体、どういう事だ」

 彼女の出現は一種のイレギュラーと考えていた瀬川は、招待した覚えのない彼女の姿を見て言葉を失う。

(まさか、彼女まで来ているとは。何処まで知っている? あの男は)

 逆に団長は彼女がいる事に対し、瀬川がどの辺りまで把握しているのか――探り合いをしているようにも見える。

そのような状況だが、彼女は指を指してマルスが戻ってくる事を周囲に認識させた。

「重要なのは彼の方――違うかな」

 アルストロメリアの一言は一理ある。確かに、重要なのはマルスの動向だろう。

それに――SNSの闇に対しての策を寝る為にも、彼の意見は重要な物となるかもしれない。



 舞風(まいかぜ)もフィールドから戻ってきて、これで主要メンバーは揃ったと言える。

フィールド外の待機用ベンチには、マルス、舞風、瀬川、ビスマルク、団長、アルストロメリアの六人が座っていた。

立っている人物はいないはずなのだが――瀬川が指を鳴らすと、次の瞬間にはアバター出現演出と共に――。

「レッドカイザー、ハヤト・ナグモ、あいね・シルフィード、黒のシュヴァリエ、ナイトブレイカーまで――」

 目の前に突如として現れたのは、七つの鍵を持つ者たちである。レッドカイザーは等身大サイズだが、他のメンバーは設定通りの身長だった。

「まさか、そのシステムを運用するとは――」

 まさかの唐突な出現に対し、団長が瀬川に確認する。そのシステムとは、アバター具現化システムだった。

ARゲームで使うARアーマーを装着する為のシステム、それを応用したのがアバター具現化システムと言われている。

実用化はかなり先とも言われていた物を、瀬川はわずか数年弱、もしくはそれ以上の速さで実現まで到達させた。

それこそ、ご都合主義と突っ込まれそうな気配がするほどの速さ――。草加市もバックアップしていたかもしれないが。

「そう言えば、ガングートは?」

 シュヴァリエが周囲を見てから突っ込むが、何故かガングートだけがこの場にいない。

一体、どういう事なのか? これには別の理由もあるかもしれないが――。

「確かに。彼女だけ姿がない」

 ナイトブレイカーもガングートの不在には違和感を持つ。鍵の持ち主が全て揃ったとは言えないからだ。

アルストロメリアは鍵の持ち主と言うには、微妙に違う事情もあるのだが。

「私はシュヴァリエの鍵の力を持っているけど、あくまでも――メインの鍵の力じゃないからね」

 アルストロメリアは黒のシュヴァリエの鍵の力こそ持っているのだが、他のメンバーと違って100%ではない。

逆にシュヴァリエは鍵の力を失っているが、実際に消滅していないのは矛盾しているのではないか――と言う話にも及ぶ。

『そう言えば、シュヴァリエは鍵の力を持っていないはずなのに消滅をしないのか?』

 レッドカイザーの指摘に対しても、シュヴァリエに実感はない。本来ならば、消滅してもおかしくはないからだ。

「こう言ったサバイバル物だと、必ず鍵を取られれば消滅する――それでもおかしくはないはずよ」

 魔法少女ではなく、私服姿のあいねに対してツッコミを入れるのは予想外の人物だった。

「デスゲームと言う概念を捻じ曲げて、普通のバトルに変えた人がそれを言うの?」

 入口から姿を見せたのは、何とガングートである。彼女だけ出現場所が違った訳でもない様子。

確かに、彼女の言う事も一理あるだろう。実際、あいねの登場していた魔法少女物のWEB小説ではデスゲーム前提で話が進んでいたからだ。

(そう言う事か。鍵の力、侮れない)

 雑談も含めた話を聞いていく内に、鍵の力に未知数の何かがあると団長は考える。

そして、それが切り札になる可能性が高いとも同時に考えていた。

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