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 マルスと舞風まいかぜの会話が続く中、別の場所では侵入者を許していた。

まとめサイト勢力であればSNS炎上勢力、セキュリティレベル未満の人物であれば非常ベルが鳴るだろう。

(何処のアニメのザル警備よ。これじゃあ――)

 その人物とは、まさかのビスマルクだった。色々と考えつつも、周囲を確認しつつ――奥のエリアへと向かう。

ゲームフィールドで一つだけ数日もレンタル状態の物があり、そこから何かあると思ったのだが、その予想は的中していた。

何故にビスマルクが侵入できたのには、瀬川せがわプロデューサーとも接触していた事も関係している。

それは既に別の事件であり、今回のヴァーチャルレインボーファンタジーには関係ないのだが――。

奥のエリアは関係者以外立ち入り禁止でも、未完成エリアでもない。見た目こそは先ほどまでのエリアとは違うようだ。

(まるで、過去のゲームアーカイブとして存在している様な――)

 ビスマルクは目を輝かせるような仕草をしたが、今はそれ所ではないだろう。

確かに過去に稼働していたゲームの数々がここには置かれているのだが、無造作に放置されている訳ではない。

使えるようにメンテナンスが施されていたのだ。一体、どういう理由でメンテナンスが行われているのか?



 ビスマルクが到着したエリア、そこは行き止まりではない。確かに先ほどまでのフィールドとは広さが桁違いなのだが。

フィールドへの入り口は使用中という事で閉まっている。乱入も不可と表示されていたので、対戦物ではないのは分かった。

そして、ビスマルクが近くにあった観戦用のセンターモニターをチラ見すると、そこに映し出されていたのは舞風とマルスだったのである。

『命を奪いあう様な時代は過去にあった。しかし、今は違う。世界は変わっていくのよ』

「世界が変わる?」

『今や時代が恐れる存在はSNSの炎上、それによって政治や経済、様々な分野で炎上勢力は問題視される』

「だからと言って、炎上勢力と同じ事をしてもいいとは思えない」

『確かにその通り。物は言いようかもしれないけど、彼らは自分達の利益になれば無差別に炎上していく悪しき便乗者なのよ』

「その為に、自分を呼び出したのと同じように他のWEB小説の主人公たちを呼び出した――」

『そこまでお見通しだったのかな。団長自体は間違いなく本物で、架空の人物じゃないのに』

「確かに蒼流の騎士が団長のWEB小説から来ているのは、調べて分かった。それでも、何かが引っかかって――」

 二人の会話は続く。その内容は瀬川プロデューサーでも知らないような事もある。

広告会社等が関与しての一連の事件とも考えられたが、そうした勢力も便乗していたに過ぎないようだ。

(元凶はガーディアンが仕組んだマッチポンプ――というのもまとめサイトが拡散しているフェイクニュースだったのか)

 一連の会話を盗み聞きしていたビスマルクは、ある意味でも衝撃的な事実を聞いてしまった。

本当の意味で『コンテンツ・リビルド』の正体とは――。

(リビルドは再構成を意味していたはず。もしかして、本当の意味でのコンテンツ・リビルドは――?)

 今回のヴァーチャルレインボーファンタジーは単純な意味で再構成した訳ではない、と言うのは何となく察していた。

リビルドには、更に不具合やバグの修正後に作り直すという意味も存在する。

そうした意味を踏まえて『コンテンツ・リビルド』とは、コンテンツ流通を作り直す事は間違いないだろう。

 しかし、今でもメガヒット作品が出れば聖地巡礼等で地方が盛り上がる事もあるのに、何を作り直そうとしていたのか?

コンテンツ流通には光と闇が存在するのは言うまでもないが、闇の部分を完全排除する為のリビルドを――?

「炎上勢力かと思ったが、君だったのか――ビスマルク」

 ビスマルクの背後に姿を見せた人物、それはアルストロメリアだった。

彼女は既に別の炎上勢力を撃破し、瀬川のいると思われるここへと向かっていたのだが――。



 その頃、瀬川プロデューサーは同じARフィールドの別エリアにいた。侵入者らしき人影を目撃したからである。

それがビスマルクだったのは、今の彼には分からない事だが――。

しばらく周囲を捜索していると、ガジェットに反応が出た為に反応のあったエリアへと向かう。

「瀬川プロデューサーか――」

 瀬川の目の前に姿を見せたのは、蒼流の騎士の姿をした団長である。

何故に、彼がここへ来たのか? ARフィールドと言っても特殊な場所であるここに、ガーディアンが何の得を見出したのか?

「バズり勢力やパリピ等も敵に回し、遂には相当を考えるような人物が――ここに何を求めに来た」

 瀬川の言う事は散々言われている事なのだが、改めて面と向かって言われると刺さる物がある。

それでも、彼には決着を付けなければいけない事があった。だからこそ、ここにいる人物に頼みを聞いてほしかったのもあるだろう。

「フィクション上でしか無双出来ないような時代は終わり、舞台はノンフィクションに及ぶ」

「その発言、まさか――目的はマルスか?」

 団長の一言、それは彼の執筆理念と言ってもいいような物で――異世界物よりも現代物を書く傾向が多かったのはこのためである。

蒼流の騎士と言う一見するとファンタジーに見えなくもない人物も、設定をよく見れば騎士は名前だけであり、その設定は――現代SFと言ってもいいような物。

「あくまでもガーディアンとは別行動だ。それを踏まえて通してほしい」

 予想外の発言に対し、瀬川の方は目が点になっている。

今の彼に敵対の意思がないのはSNS上のニュース等を踏まえると、一応は信用出来るだろう。

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