14-2
あるSNS上の動きをいち早く察知したのは、ガーディアンではなく個人プレイヤーだった。何故、ガーディアンではなく個人なのか?
これには別の理由があった。ガーディアンはビッグデータばかりに気を取られていたようであり、些細な情勢が分からなかったらしい。
「さて、と。SNS炎上をしようとするバズり目的のユーザーは、どれだけいると思っているのか――」
その個人プレイヤーの正体、それはアルストロメリアだったのである。彼女の服装は、原作にも出て来たような軽装に着替えているが――。
『貴様が噂のアルストロメリアか』
「何だか、ストーリーの早回しみたいに出てきたみたいね」
『こちらとしても、低俗な民度の低いバズり目的だけの勢力は切り捨てているに過ぎない』
「自分がSNS炎上を完全犯罪の如く出来る、そう言いたいみたいね」
目の前にいる蒼流の騎士はデザインが異なる。おそらくは量産型のガジェットだろう。
それを構えたと同時に、アルストロメリアも胸ポケットからある物を取りだした。それは、向こうも知らない奥の手――。
「こっちとしては、ガーディアンにも団長にも見せたくないのだけどね」
次の瞬間、アルストロメリアが指を鳴らした瞬間、半径一メートル程度のARゲーム用カメラにノイズが入る。
それと同時に――しばらくは録画が不能になったと言う。解除された三〇秒の間に、何があったのかを知るのは周囲の一部ギャラリーだけ。
しかし、アルストロメリアはARゲームプレイヤーからしたら、何の切り札となるようなガジェットは使っていない事だけは分かる。
『そんな馬鹿な――わずか数秒レベルで、我々の計画は潰されるのか?』
何が起きたのかも分からない蒼流の騎士、おそらくは上流の炎上勢力は全力で悔しがる。
彼らでも対処できなかった、アルストロメリアの奥の手――使用したガジェットに関しては、全くのノーマークだったのだ。
「コンテンツを炎上させて、自分達だけが利益を得ようとするSNSユーザーって、どの時代にもいるのね。それがわかった以上、使えると思ったら使えた――それだけよ」
言いたい事だけを言い残し、アルストロメリアは姿を消した。一体、彼女はどのような手段を使って蒼流の騎士を倒したのか。
彼女の向かう先は、ゲーセンやARゲームフィールドではない。目の前に見えてきたのは、まさかの草加駅である。
(どうやら、大きなイベントはまだあるみたいね)
彼女が駅ビルの大型モニターを見ると、そこには七つの浮遊大陸が映し出されていた。
以前には草加市上空で確認出来た大陸だが、今は何故か見えなくなっている。一体、これはどういう事か?
上流の炎上勢力が摘発された件は、あっという間に広まった。これによって炎上勢力が根絶されたのかは分からないが、大手を撃破出来たと言える。
しかし、大手と言っても――彼らは四天王の中でも最弱と言われるような勢力かもしれない。つまり、炎上勢力との戦いはこれからなのだ。
他にもやる事は残されているし、炎上勢力を根絶する為には――自治体等を含めた全面協力も必須だろうか。
現状で、そうした勢力はガーディアンに全て投げてしまおう。そう思っていたのはニュースをチェックしていたビスマルクである。
(あの勢力を鎮圧出来ただけで、こちらの行ってきた事も報われる。過去に炎上された事を含めて)
ビスマルクは過去に別のゲームで炎上されてしまった事があった。その作品はサービス終了に追い込まれる事はなかったが、一時期のユーザー数は数万人辺りまで減ったと言う。
その恨みはありつつも、怒りだけで炎上勢力を晒して潰したとしても何の解決にもならない。それではただの自治厨と言われるような勢力であり、炎上勢力と同じとまで言われるだろう。
「あとは――?」
ゲーセンの店内で目的の筺体を発見したが、筺体に興味を示していた人物を発見する。
どう考えても、先ほど遭遇した人物に似ているが――?
「あなたは、まさか?」
やっぱりである。ビスマルクが近づき、顔を確認するとその人物はマルスだったのである。
何故、ゲーセンを訪ねたのかはまだ分からない。しかし、彼なりに答えを見つける為に訪れたのは間違いないだろう。
(あの人は、まさかビスマルク?)
マルスの方もビスマルクが近づいているのは理解していた。
何故に近づいているのかは、自分にも分らないが。
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