14-3
ゲーセン店内、そこではビスマルクとマルスの二人が邂逅していたのである。これは別の意味でも予想外だった。
さすがに、この場所では立ち話でも都合が悪いとビスマルクは判断する。周囲の爆音を考えると、一理あるだろう。
場所は爆音があまりないだろう格ゲーエリアの待機列近辺、そこならば何とかなった。単純に言えば、リズムゲームコーナーでは話が出来ないのもある。
「教えてほしい。コンテンツを守る事を」
このマルスの一言に対し、ビスマルクはクスリと笑う。そんな事か――という様な適当なあしらいではない。
そして、格ゲーコーナーから二人は再びリズムゲームコーナーへと移動し始めた。
リズムゲームのコーナー一角にたどり着いた二人は、適当にビームサーベルを振るうタイプのリズムゲームを発見した。
これならば――と、ビスマルクはARガジェットを取り出してタッチスペースに置き、そのままゲームをプレイし始める。
マルスは、それをじっと見守った。このゲーム自体は二人プレイも対応しているようだが、彼女のプレイに水を刺すのはアレだろう。
(彼女の動き――真剣にゲームへ向き合っている証拠だ)
ビスマルクのプレイは、周囲のギャラリーにも衝撃を残しているのだが――それ以上にマルスの目にも焼き付いていた。
単純にプレイを見せているだけではない。おそらく、ビスマルクにも何か考えがあった末の、プレイなのだろう。
(後ろの気迫からも分かる。マルスは、もしかすると――)
マルスの口から、まさかコンテンツと言う単語が出るとは。しかし、マルスの登場作品を踏まえると、それが出るのは当たり前なのだ。
本来のマルス、それは小説作品の主人公だが、その題材は――。
一方で
アルストロメリアの出現もあるが、それ以上にバズり目的で炎上させるユーザーも出現し始めている。
「これ以上は、時間切れと言う事か」
ここでタイミングを逃すと、被害が更に拡大すると彼は判断したのだ。
捕まえた人物はガーディアンへ引き渡すが、それでも会社に待機していた彼は――別の懸念を持つ事になる。
「どうしますか? まさか――」
ハヤト・ナグモも反撃のターンが来たとばかり考えているが、策も練らない反撃では即座に返り討ちだろう。
それを踏まえて、瀬川はとある計画を考えていた。これは
向こうもヴァーチャルアイドル計画を持ち込んだりしていたので、お互いさまと言う考えかもしれない。
「こればかりはやりたくなかったが、止む得ない――」
瀬川としても、あまりに段取りは踏むとしても場当たりだと認識されかねない。
それ位には奥の手と言えるのだろう。それは――その場にいたハヤトも驚くような物だった。
「こちらのメーカーが所持するゲームとヴァーチャルレインボーファンタジーのコラボを行い、向こうの戦力を減らす!」
瀬川の自信はどこから来るのか――とハヤトは思うが、ある意味でも盲点だと気付いた。
向こうが二次創作に近いのであれば、版権許諾と言う形で囲い込んでしまおう――というのが瀬川の考えた奥の手である。
許可申請を得ると言う意味では段取りを踏んでいるだろうが、それでも唐突感はあるだろう。
鍵が揃わない事に対し、焦っているのはバズり勢力や炎上勢力に過ぎない。
そう思われていたのだが――黒のシュヴァリエとナイトブレイカーも、若干だが焦りを感じていた。
「あの勢力を何とかしないといけない、か」
ナイトブレイカーは周囲を取り囲む敵に対し、威嚇射撃を行う。敵の方はあっさりと回避するが、それも想定済みである。
彼としては下手に敵対勢力を増やしたくない理由もあり、SNS炎上勢力は倒すべき敵だとしても――向こうから攻めてくる場合以外は攻撃してこなかった。
この辺りはアルストロメリアやガングートとは異なる行動理念かもしれない。
「こっちとしては、倒すべき存在だ――これ以上の静観は無理だろうな」
シュヴァリエとしては自分を騙していた勢力と言う事もあり、何度か自分に向かってきた物を含めて壊滅させてきた。
その一方で、単純に撃破するだけでなく他の勢力の情報を入手し、そこから何を起こそうとしているのか考えている。決して、無策ではない。
「こちらとしては過剰な干渉は――?」
ナイトブレイカーが何かを言おうとしていた矢先、あるショートメッセージが届く。
その差出人は、何と瀬川プロデューサーだ。以前に情報交換した際、その時にアドレスを交換していたのである。
(本気か? この計画は――)
その内容をチェックしたナイトブレイカーの表情をシュヴァリエは確認出来ない。
彼は常にARメットを装着し、素顔が見えないからである。それでも、リアクションである程度の把握は可能だ。
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