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周囲の店舗はゲームとは無縁ではないが、コンビニや百円ショップ、食堂などと言った店舗が存在していた。
ファストフード店もあるが客足はそこそこで、何かの待ち合わせで使われている形跡がある。
草加駅とは違い、そこまで広い駅と言う訳ではなく、この駅で降りる乗客も非常に限られた。
ここに観光資源となるような物もなく、近くに大型スーパー等の施設があるかと言うと、草加駅の方が近い可能性も高いだろう。
向こうにはARゲームフィールドの大手がいくつか存在し、大規模な物だと草加駅近辺が大半と言える。
それに、降りる乗客の大半が限られていると言うのは、谷塚駅の改札口にある大型広告にあった。
その広告は明らかにピンポイントで客層を狙っている物であり、谷塚駅の中でも何故か待ち合わせスポットに活用されている。
更に言えば、その近くにはARゲーム専用のセンターモニターも設置、駅の外には充電スポットもあるのが驚きだろう。
【ARメガステーション、堂々オープン】
まるで、駅から数分のパチンコ店を思わせる広告だが、これを見て場所が分かると言う人も多い。
谷塚駅で降りる客の大半は、近くにオープンしたARゲームフィールド『ARメガステーション』の利用客だ。
このフィールド自体は最近できた物ではなく、オープンしたのには別の事情があるのだが――。
「なるほど。用事というのは、あの場所に行くのか」
メガステーションは過去にSNS炎上をきっかけにした事件で話題になった場所でもあり、今でも多くの観光客がここを訪れる。
それこそ、この場所を彼らは聖地として訪れているのだ。聖地であるかどうかを考えずに訪れる客も多いが――。
草加市の聖地巡礼計画に影響されたのかどうかは、定かではない。草加市と言っても、全てが聖地巡礼に賛同している訳ではないのだ。
マルスの方も電車から降りた客の様子が若干気になっていたようだが、それが広告の存在で解決した形だろう。
「あのバスに乗るのか?」
マルスが指さす方向には、バス停前に停車しているバスがある。
このバス自体は県が運営している様な物ではなく、メガステーション独自のバスだろうか。
「バスに乗らなくても問題はないだろう。自転車で行ける距離だ」
舞風は自転車に乗っているが、マルスは走って追いかける。マルス用の自転車がないという事情もあるだろう。
自転車の二人乗りをする訳にもいかない事情もあった。いくらマルスが電子的なデータの存在であったとしても――見える人物には見えるのだから。
しかし、そう簡単にARメガステーションへ行く事は出来なかった。
マルスの姿を見て、ターゲットと言わんばかりに襲撃してきた人物がいたからである。
その人数は三人程度、外見はどう考えても私服警官や私服ガーディアンとは思えないような――最初から悪目立ちで炎上してバズるという気配だ。
「ARフィールドが展開されていない場所で、バトルをするというのか?」
マルスの言う事も一理あるが、周囲を囲む人物はどう考えてもARゲーム関係とは言えない。
囲んでいるのは三人なのに、ここから逃げられる気配がなかった。フィールドも展開されていないのに、である。
「確かに。ココでバトルは可能だが、カテゴリー違いで出来ないだろうな」
ARガジェットを所持しておらず、ポケットには何かを隠し持っている事を示唆される仕草をする男性もいた。
カテゴリーとは、もしかするとここではARバトルロイヤルは対応していないと言う事だろうか?
「だが、こちらとしてはマルスではなく、舞風に用があるのだ」
別の男性が明らかに舞風狙いと言う事で、自転車を押して移動していた舞風に狙いを絞る。
「お前がSNSを炎上させている元凶、蒼流の騎士である事は明らか――」
更に別の男性が舞風を問い詰めようとした瞬間、その人物は何かを言い終わるまでもなく気絶した。
そして、その人物の背後にいたのは――銀髪のセミショートに身長一七〇近くと思われる男性である。
「よくも、この俺をだましたな――」
「貴様は、まさか黒の――」
気絶した人物が、黒のシュヴァリエであると言いたかったのは明白だ。
別のガジェットと思わしき鍵を取り出し、それを何かにタッチしようとした男性も――次の瞬間には気絶させられたのである。
(だましたって、まさか?)
舞風はあの人物が言った『だました』の部分に引っかかるものを感じた。
黒のシュヴァリエは以前にも出没している話があったし、コスプレイヤー以外の目撃情報もあったのである。
それを踏まえると、彼を上手く利用していたのは――そう言う事かもしれない
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