第4話:もうひとつのメディアミックス

 今から数年前、埼玉県草加市では拡張現実を使ったARゲームで町おこしをしようと言う計画が浮上していた。

当時はアニメやゲーム作品の聖地巡礼がブームと言うか、そのような時期だった事を覚えている。平成も終わりかけている時期か?

新しい事に挑戦したとしても、実際に受け入れられるかどうかはやってみなければわからないだろう。

丁寧に説明したとしても――それを理解した上で受け入れられるかどうかも、蓋を開けてみないと分からない事が多い。

だからこそ、草加市の挑戦はゲームメーカー持ち込みの企画と言われてもおかしくはなかったのだ。

最初こそは様々なSNS炎上勢力等を含めた壁を切り抜け、何とか成功と言えるような活動にまで認知される事になる。

「それさえも、WEB小説の筋書きでしか過ぎない――という都市伝説もあるが」

 草加市の聖地巡礼に関する記事をチェックしていたのは、瀬川せがわプロデューサーであった。

七つの大陸、七つの鍵、過去に発表される予定だったゲーム『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の内容――調べるべき物は他にもある。

それでも草加市の聖地巡礼を調べたのには、一連の事件が草加市だけで起こっており、他の市区町村には影響していないのが理由だろう。

SNSで他所にまで拡散しようと言う勢力はいるだろうが、そこまでやって自分達に得があるのかも疑わしい。せいぜい、悪目立ちしてバズる程度だ。



 瀬川がSNSを見ていた場所、それは会社の第7会議室と書かれている部屋である。

畳数畳程度の広さしかないのだが――数人程度で簡単な話し合いをする程度には、スペースは確保されているだろうか。

「昼飯も食べ終わった事だし、本題に移ろうか」

 瀬川は会社のビルがある近くでハヤト・ナグモと遭遇した。明らかに、あの時に話をしていたロボット作品の主人公だろう。

ハヤトの方が愛機である巨大ロボット『ヌァザ』がないのは気になるが、何処かに置いたのかもしれない。

(あのサイズでは、さすがに目立つだろうな。ただでさえ、レッドカイザーで――)

 瀬川はレッドカイザーの一件を思い出し、ヌァザを何処に置いたのか聞こうとも考えたが――それは寸前で止められた。

「本題? ああ、七つの鍵の事ね」

 まさか、向こうから七つの鍵に関して切りだしてくるとは――予想外だった事もあり、ヌァザの事を聞くのを止める。

向こうから話題を振ってきた以上、乗らない手はないからだ。

「七つ集めれば、あの大陸に行ける――位は知っているが、それ以外の事を知っているのか?」

「大陸は言っていたような気がするけど、それ以外にも言っていたね。鍵を持つのは選ばれた英雄だけだって」

 ハヤトの口から意外なワードが飛び出した。確かにマルスもレッドカイザーも、作品内では主人公であり英雄かもしれない。

それを踏まえると、残る四人も有名所の英雄が呼び出された可能性は否定できないだろうか。

「でも、残り四人が誰なのかは聞いていないから――。自分が呼び出された時は、三人目と言っていたし」

 これも衝撃だった。もしかして、蒼流そうりゅう騎士きしは突発的に英雄ヒーローを無作為に選んでいるのか?

「こちらからもひとつ聞きたい。他に有名所入るのか?」

「有名所って? ああ、そう言う意味か。それなら、ないかもしれないね」

 ハヤトの方は瀬川の質問に対し、あっさりとした口調で答える。向こうも有名所というワードを聞き、何となく察したのだろうか?

(そうなると、漫画原作等のメジャー系はないだろうな。やはり、WEB小説をメインに――) 

「こっちもひとついいかな。他に姿を見せている鍵の所持者がいれば教えてほしい所だけど」

 ハヤトの表情を見る限り、瀬川の聞きたい事は把握していた。そして、それを踏まえてハヤトも切り返す。

もしかすると、ハヤトの狙いは――。

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