3-6

 マルスと舞風まいかぜは、レッドカイザーから事情を聴く事になった。

彼はSNSを救うために蒼流そうりゅう騎士きしの話を信じたのである。

七つの鍵を探していた時にマルスと遭遇し、あのバトルになった事の説明も行う。

『あの蒼流の騎士が私を利用したと断言できないが、あのような事態になった事は申し訳ない』

 舞風はレッドカイザーの反応に対し、予想外だと思った。原作中に、こう言う形で謝罪した事があるのだろうか?

レッドカイザーに変身する人物に対しては、何らかの事情説明はしただろう。

しかし、巻き込んだ事を謝罪したのは大分後か、それとも――すぐに思い出せる保証がない。

『私も一連の事件を何とかしようと言うのは一緒だ。七つの大陸は私も知らない存在だが』

 どうやら、断片的に蒼流の騎士が都合よく説明したような具合だろう――とレッドカイザーの話からマルスは感じた。

確かに自分の作品には七つの大陸はあるし、それをそう感じた。しかし、レッドカイザーの話も踏まえると七つの大陸なだけで同じ物とは言っていない気配もする。

つまり、上手い具合に七つの鍵の所有者同士を対決させる事が目的なのではないか、そう考えた。あくまでも、それが舞風の言う計画と同じなのかは分からない。

(七つの大陸、何かが引っかかるような――)

 様々な要素が交錯し、マルスを巡る事件は規模が拡大していく事になった。

マルス達が帰宅している頃には――本人たちも気付かないほどの物になっているだろう。

レッドカイザーは特に戻る場所がないと言っていた為、舞風のガジェットのスペースを間借りする事にする。



 マルスとレッドカイザーの激闘、それを詳細に伝える記事が数時間もたたない内にアップされた。

これには当事者というか関係者でもある舞風も困惑するが、その内容を見て別の意味でも衝撃を受ける事になる。

自宅に戻り、夕食を食べ、その後に情報を収集していく内に、今回の事件がどれだけの規模なのか実感し始めた。

(この内容って、まさか?)

 ARガジェット経由でニュースを見た舞風は、そこからWEB小説サイトを手当たり次第探して、関係する情報を探ろうとした。

しかし、そう簡単にご都合主義みたく情報が見つかる訳ではなく、十分以上が経過する。



 ゴールデンウィーク初頭、草加市某所で蒼流の騎士は第四の鍵の所有者を決め、既に手渡しをしようとしていた――。

しかし、鍵を渡して事情を話した瞬間に、蒼流の騎士は何か致命的なミスをした事に気付いたのである。

(名前が似ている人物がいたのか。しかし、今更変えるわけにもいかないか)

 当初の想定と違う人物を呼び出した事に、蒼流の騎士が気付いたのは本人が姿を見せてからだった。

どう考えても、想定していた外見の人物ではない。歴史上の人物であれば、それこそ同名人物は多いだろう。

蒼流の騎士が呼びだしたのは『ガングート』という人物のはずだった。それなのに、目の前にいたのは――。

(身長も違う。銀髪だが、どう考えてもミリタリーよりはSFだ)

 一メートルに満たない距離、蒼流の騎士の目の前にいたのは――女性に見えた。

銀髪に身長は一七〇弱、SFテイストのラバースーツにも見えるようなフレームを持った――ドール。

蒼流の騎士が呼びだしたガングートは人間ではなく、何かのドールだったのだ。

 ドールのガングートは、無言で肩アーマーにマウントされていたビームライフルを構える。

まるで、自分を呼び出した人物に対して敵だと認識しているようでもあった。



 それとは別の草加駅近くの某所、身長が一六〇センチにも満たないような少年が周囲を見回している。

「ここが、あの町とは違うとはね」

 少年は一言つぶやくと、情報を集めるためにゲームセンターのARゲーム専用モニターを眺めていた。

彼にとって、この草加市は自分がいた場所とは全く違う。何故かと言えば、彼もマルス達と同じ存在だからである。

(七つの鍵と言われても、ピンとこないし――?)

 モニターに表示された映像、それはレッドカイザーとマルスのバトル動画のリプレイだった。

両社とも見覚えがないような存在なのに、何故か彼は二人に何かを感じている。おそらく、同じ鍵の所有者だからだろうか?


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