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 レッドカイザーの情報がフェイクだった事は、あまり拡散される様子がなかった。

ガーディアンの罠であれば、別の反ガーディアンのまとめサイト辺りが動く気配もするのに。

「なんて事だ」

「既に数人がやられたという情報がある」

「その外見は? ガーディアンだったのではないのか」

「実はガーディアンではないという目撃情報があった。ガーディアンであれば、あのスーツを使うだろう」

「しかも、この映像が拡散している――」

 他のゲーマー達は漫画喫茶等で情報収集をしている。この他にもARゲーム専門のカフェ等を使うようだが――。

そこでゲーマーが見せた画像、それは蒼流の騎士そうりゅうのきしを連想させた。

「何の冗談だ? コラ画像ではないのか」

「蒼流の騎士は、例のSNS上で展開されたWEB小説の登場人物。あり得ないだろう」

「他のARゲームでコラボした記録もない。どう考えても、この画像は矛盾だらけだ」

 矛盾と言及した人物、それは蒼流の騎士がARゲームとコラボした形跡がないという事を踏まえての発言だろう。

実際、WEB小説作品とゲームがコラボしたという話はあっても、それは書籍化したりアニメ化した作品ばかりである。

出版化情報もないWEB小説のキャラを、どうして使用すると考えるのか?



 舞風まいかぜとマルスは、徒歩で何とか目的のビルへと到着する。これには舞風の方が驚いた位だ。

バスに乗って行こうかとも考えたが、考えていたよりも距離が離れていなかったのが大きいのかもしれない。

実際、彼女が右手に装着しているARガジェットで調べた結果、自宅からわずか数分の距離だったのだ。

「その手袋は?」

 マルスの問いかけに対し、舞風はARガジェットだと答えたが――マルスの方は何か違うという顔をしていた。

実際、マルスの登場する作品にもARガジェットと言う物は存在する。しかし、それは異世界転移する前の日本で運用されていた程度。

「自分の見てきた世界だけで物を語らない方が、今後の為にもいいかもしれないわね」

 舞風は面倒な事を話すのは都合が悪いとも考える。その知識が不要な物だった場合、逆にマルスが不利になる事もあるからだ。

実際、マルスが歩いている光景を周囲のギャラリーは認識していないし、一般人が指を指す様子だってない。

「この日本でもそうだけど、一部勢力がSNS炎上を繰り返して――それこそ戦争が起きかねないようなことだってある」

「戦争? そんな馬鹿な事が――」

 舞風の一言を聞き、マルスは逆に驚く。ほんの些細とも言えるような規模の話題でも、そこまでの事件に発展するのか――と。

実際にそこまで起こった事例はないのだが、寸前まで到達した事例はいくつもある。それこそ、WEB小説にも題材として扱われる位には。

(SNS? そう言えば、レッドカイザーも題材に使われているのはSNSだったような――)

 ふと、自分で言った発言に対して何かを閃いたような表情を見せるが、すぐに元に戻る。

その表情の変化に対し、マルスは何も反応は示さなかった。さっき、釘を刺されたばかりと言う事もあって。


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