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色々と
自分が実はゲームキャラであるとか、別のゲーム世界から来たとか――特に興味はなかったのである。
夕食を一階の広間で食べている時も、マルスはあまり自分から話をするような状況ではなかった。
自分が別の世界から日本へ転移してきたと思ったら、まさかの展開だったからである。
「コンビニ弁当である事は否定しないけど、腹が減っているなら食べたほうがいいと思うよ」
舞風も心配しているのは事実だろう。しかし、それは自分がゲームのキャラクターだから――という理由があるのか?
目の前にあるのは、自分も日本で見覚えのあるのり弁当だ。それに鶏の唐揚げ、コロッケと言ったような惣菜も一緒に並ぶ。
彼女が料理下手という訳ではなく、単純に自分の事を考慮していなかったのかもしれない。
(スタミナが回復しないのは――)
ふと色々な事が頭をよぎるが、特に独等が入っている訳はない。この辺りは当然だろう。
そして、ご飯を一口食べた時――ある事に気付く。箸を自然に扱える事でもなければ、それがのり弁当と認識出来た事ではない。
「おいしい――」
率直に言えば、自分の世界では体験できなかった味覚と言う物があったのである。
グルメ小説であれば、細かい料理描写はあるだろうが――その劇中の人物が本当に食べた味を感じるのだろうか?
それを踏まえると、現実世界に来た事でこれだけはよかったのかもしれない。何か、デジャヴを感じるのは気のせいと思いたいが。
翌日の午前九時、舞風の自宅で目が覚めるマルスだったが、何か違和感を持つ。部屋は昨日と同じ部屋だが、舞風がいないのだ。
既に出かけたのであれば、人の気配はないだろう。しかし、マルスは何処かにいるのを気配で把握したのである。
舞風は広間でテレビをチェックしながらパンをかじっている。ただし、パンと言っても食パンではなく総菜パンだ。
「一体、何を――?」
マルスは舞風の姿を見て驚く以上に、予想外のリアクションを取るしかなかった。パーカー姿なのは変わらないが――
「マルス、そんな些細なことで驚くのか? そこではないだろう。本来驚くべきなのは」
舞風はマイアと同じ女性だったのである。喋り方や部屋の様子、その他にも色々とあるが――そうは見えなかったのだ。
文字通りに騙された――と思わざるを得ない。しかし、助けてくれたのは事実だろう。
舞風は見ているテレビ番組が株式情報を扱う経済ニュースである事に驚くと思っていたようだが、逆にマルスの反応を見てやり過ぎたと思った。
(顔はマイアに似ているかもしれないが、彼女は別人だ)
改めてマルスは、彼女がどういう人物なのかを考え直さないといけないと――。
昨日の話もそうだが、完全に信用出来る人物なのかも疑わしい可能性だってある。
「一つだけ言っておく。私はマイアとは別人だからな。正直、あのデザインを見て似ているとは驚かされたが」
率直に自分をマイアと重ねるのは止めた方がいい、そう舞風はマルスにやんわりと注意した。警告ような部類かどうかは定かではない。
しかし、マルスとしては舞風を頼るしかないのは事実だ。割り切れない部分もあるが、割り切る事も重要なのかもしれない。
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