第2話:新たなる力 火焔怪獣ファフニール登場
目を覚まして早々、マルスは
自分の自宅まで運び、怪我はしていないもののベッドまで用意してくれた。それに――他にも色々とあるだろう。
「聞いてどうする? それをお前が気にして――何かお礼をしてくれるのか?」
舞風があまりにもドライな反応をしたので、マルスは驚くことすらできなかった。
むしろ、こういう場合は正直に話す、もしくは依頼を頼みたくて助けた――という様なパターンさえ思い浮かぶ。
「それと、君は一人暮らし?」
(それを聞かれると、どうしようも――)
マルスが次に質問をした事に対し、舞風は周囲を見てどう答えるべきか悩む。
その結果として出てきたのは――。
「聞かないで――くれるかな。そう言う家族事情は」
この反応もマルスにとっては想定外だ。まるでツンデレである。
マルスが想定していたのは『禁則事項です』とか『秘伝なので』とか『それは、秘密です!』というパターンだ。
更に言えば、口を滑らせて『そう言う設定とかないから』も予想していた。自分も、その系統だった事もあるのだが。
「丁度、この時間帯か――」
舞風が何か時間を気にしていると、部屋の中に設置されたテレビの主電源を入れた。
片手にリモコンを持っていたので、それを操作していたようだが。
それは電脳空間とは思えないような、市街地――そこで『彼』は目覚める。見た目は、本当に市街地と変わりない。
「この空間は? もしかして、自分のいた世界とは――」
「むやみに突っ込み入れない」
マルスがテレビに映し出された市街地を見て、自分の世界とは違うと自覚する。
しかし、舞風の方はテレビに集中できないので、少し反応が冷えているように見えた。
『SNS炎上を拡大し、地球支配を容易にしようとする秘密結社『ブラックフレア』こそが、この世界を掌握する悪だと』
「SNS炎上? 自分の場合と明らかに違う――」
「だから、そこで自分の世界と比べない」
マルスの分析に対し、舞風は何となく言いたい事はわかるが――徐々にツッコミをいれる事に疲れも見え始めている。
しばらくして、舞風はマルスのいる部屋を出て、一階のキッチンにある冷蔵庫から500mlのペットボトルの紅茶を二本とりだした。
『そして、少年は秘密結社に対抗する為、コンピュータに眠っていた力を発見する。それこそ、SNSの未来を守る為の力――』
次第にマルスはテレビ画面に釘付けとなる。自分の世界というか、異世界に飛ばされる前の日本でも様々なアニメはあっただろう。
しかし、このアニメは自分が見た事もない作品なのは間違いない。
『カイザーチェンジ!』
少年が叫ぶと、何もないような空間からアーマーと思わしき物体が転送、インナースーツ姿の少年に装着されていく。
そして、アーマーの色が変化し、更には二メートルも満たないような身長から数十メートルという巨大ヒーローになったのである。
(巨大ヒーロー物だったのか。てっきり、変身ヒーロー系だと思っていたが)
マルスの目が若干真剣になっていく。そして、次第にツッコミを入れなくなった。
その方が舞風も安心できるのだが――。
『巨大ヒーロー『レッドカイザー』は、SNS炎上を拡大しようとする秘密結社からSNS世界を守る為のヒーロー』
『そして、地球を脅かすまとめサイト、競合他社等によるライバルへの炎上行為、それ以外にも――』
『そう言った存在が変化した電装怪獣を、彼は一人で次々と倒していくのだ』
『戦え! 我らが正義のヒーロー、レッドカイザー!』
この声はナレーションだろう。そして、テレビに映し出されたタイトル、それは――『SNS.レッドカイザー』である。
原作はWEB小説から書籍化を通さず、そのままアニメ化という形になった珍しい形のメディアミックスだった。
普通であればWEB小説から書籍化して、好評であれば他のメディアに進出するのが普通だろう。
電脳空間とは思えないような市街地に立つレッドカイザーの姿、それはマルスにとっても衝撃であると同時に何かを感じたのだ。
(彼も、鍵の――)
そう思った次の瞬間、テレビの画面が別のバラエティー番組に切り替わった。テーブルに置かれたリモコンに手をかけた訳ではないのに。
今のタイミングだと、舞風はペットボトルの紅茶を部屋に――という辺りだろう。
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