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草加市で聖地巡礼も行われているARゲーム、それは拡張現実を使用したゲームであり――ある意味でも虚構と現実が交差するような状態である。
ARゲームを悪用しようと『世界征服』を文字通りに行おうとした者、SNS炎上を利用してコンテンツ業界を掌握しようとした芸能事務所――そうした勢力もいた。
そうした負の歴史も存在し、それを認めるのもARゲームだった。負の歴史を黒歴史として封印し、認めようとしないような勢力もいる中で、彼らの行動は評価されている。
(あっという間に――)
三人組とマルスの戦闘を様子見していたのは、フードを深く被って素顔を隠している舞風(まいかぜ)だった。
彼女としては、マルスがあのマルスなのではないのか――と思っている。しかし、ズバリ断言出来るような証拠はない。
三人組はナレーションが流れている間に決着、既に倒されているようだ。彼らは弱かったのではなく、相手にする人物を間違えたのだ。
「これって、まさか?」
舞風はパーカーの前ポケットから小型のガジェットを取り出し、それを使ってマルスのデータを調べ始める。
そこで、マルスのステータスでも表示されるのかと思われたが、予想外の物が表示された。
【エクストラキャラ】
アバターでもプレイヤーがいる場合にはプレイヤーの表示は出るだろう。
しかし、マルスに表示されていたのはエクストラキャラである。つまり、特別な存在と言う事だ。
(間違いはないようね)
舞風はこれで確信を持つ。マルスは、間違いなくあのマルスである可能性が高い、と。
仮にそちらの作品ではなくても、エクストラキャラ表示が出た以上はゲーマーが操作しているキャラではない。
三人組が、あっという間にマルスに撃破された様子は動画としても瞬時に拡散していた。
それを行ったのは舞風ではない。おそらく、別のゲーマーがマルスに目を付けていた上で拡散したのだろう。
彼が実力者である事はSNS上でも周知されていったのだが、残念ながらその情報にはかけている個所がある。
(肝心な所を――その情報を外すのか?)
該当する動画リンクを紹介していた記事、それは舞風が敵対していると言ってもいいまとめサイトだった。
まとめサイトと言えば、草加市ではフェイクニュースが理由で大炎上を起こし、下手をすればリアルテロ事件に発展しかけた事がある。
それを踏まえてまとめサイトを草加市内で扱うには許可証がいるようになってしまった。このお役所仕事を増やした事に対し、管理人たちからは不満の声が出る。
一歩間違えると、日本はリアルで炎の海にのまれる所だった――という事を踏まえると、まとめサイトの規制に関しては当然の声があった。
それでも、一部からは『表現の自由』の危機という発言もあったのだが、凶悪事件に発展してはまずいという声が大半を占めた結果、草加市限定で許可制が採用されている。
「今のタイミングで考えても仕方がない。まずは、彼に接触しないと――?」
まとめサイトに視線を向けていた少しの時間でマルスの姿は消えていた。あの状態だと、そこまで遠くに行けるとは思えない。
それに、ARゲームのキャラである場合にはフィールド外に出れば存在は消えてしまう――と攻略サイトなどで言及されている。
本当に消えたとしたら、探す手間も倍になってしまうだろう。
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