第9話

 僕の学校もとうとう中間試験シーズンに突入した。学生がもっとも忌み嫌うシーズンだ。


 優希部の三人で勉強会を開くことになった。


 基本的亮介も千歳も勉強は得意だ。美男美女で運動ができてさらには勉強までできる。こんな嘘みたいな人間がいていいのだろうか。


 羨ましさのあまり嫉妬心を覚える僕。ちなみに僕はと言えば勉強も運動も中の上程度。悪いかと言われたら悪くはないが、良い方かと聞かれたら良い方でもない。


 中学のときからそうだが、だいたいこの三人で勉強会を開くと僕が生徒で亮介と千歳が先生という役回りになる。


 二人のおかげで僕はそこそこの成績を維持できているのはありがたいが、いつも受け身な僕は少し辛い。


「ねえ、ここの問題ってどの公式使えばいいの?」


「そこはド・モルガンの法則を使って…」


 僕は数学の問題を解いていた。相談相手は亮介だ。


 基本的に亮介の得意教科は数学と理科、いわゆる理系だ。


 一方千歳の得意教科は国語、英語、社会、文系教科だ。


 中学数学まではなんとかなっていた僕だが、高校数学になって難易度がかなり上がり僕は苦しい思いをしていた。


 もちろん問題は難しいが、僕は勉強する上でもっと困った問題を抱えていた。


 その問題はというと、予想以上に邪魔な胸だ。


 もちろん机に向かって勉強をしているわけだが、机に胸が結構当たる。


 そして胸が当たるたびに刺さる亮介の視線。


 もちろん亮介だって思春期の男子なのだから女の子のおっぱいが気になるのは分かる。


 僕も男子(今は女子だけど)だからその気持ちは痛いほど分かる。


 でも女の子になったからこそ分かる女の子の気持ち。


 まさかおっぱい見られるのがこんなに恥ずかしいことだったとは。


 僕は水着は絶対着れないと思った。


「おっぱい見られるのって結構恥ずかしいな」


 僕は小声で千歳に話しかける。


「そうだねー。あ、亮介の視線でしょ?バレバレだよねおっぱい見てるの」


 千歳が苦笑しながら僕にそう言った。


 やはり女の子は男子の視線が気になるようだ。


 まあそうだよな、千歳も千歳でなかなかのサイズのおっぱいだし。


 それにしてもおっぱいがあるせいで肩が凝る。


 男だった時は頭痛の悩みなんて無かったが、女の子になってから頭痛が増えた。


 肩こりの影響なんだなと僕は思った。女子も大変だ。


 結局今日一日おっぱいのことで頭がいっぱいで全く勉強が頭に入らなかった。


 僕は心配を抱えながら中間試験を迎えることになった。


 心配をしていた優希だったが、結局中間試験では無事赤点を回避できたそうです。よかったですね。


 勉強のできる千歳と亮介は全教科90点越えだったそうです。

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