第8話
今日は二回目の部活動だ。
果たして今日は何をするのだろうか。そんなことを思いながら僕は部室へと歩みをすすめる。
「よう、今日はカラオケに行くぞ!」
部室に入るなり、亮介が僕に声をかけてくる。部室には千歳もいるようだ。
「カラオケって…本当に僕の体を元に戻す方法探す気あります?」
僕が怪訝な顔でそう聞くと
「いやまあなんか他のことしてるうちに解決策がふと閃くんじゃないかと思ってさ」
「最近元気ない優希のことが私心配で励まそうと思って」
二人とも苦しい言い訳をしてくる。他人事だと思ってるのか二人は本当に気楽そうだ。
「まあいいよ、仕方ないからついていってあげる」
僕は二人についていくことにした。
三人が向かったのは行きつけのカラオケ店。僕が男だったときからよく通ってたところだ。
フリータイム、ドリンク飲み放題で千円、まあそこそこ安い店だ。
会計を済ませ店員に指定された部屋へと向かう。
部屋は三人で歌うのにちょうどいいサイズだった。
「何歌う何歌う?」
涼介がハイテンションに聞いてくる。
こいつ本当にカラオケが好きなんだな。呆れるくらいテンションが高い。
涼介は自分の好きなバンドの曲を入れたようだ。
涼介は最近流行りの曲をだいたい網羅している。世間で人気なものをチェックしないと気が済まない性格のようだ。さすがモテ男。
そして涼介は結構歌が上手い。非常にかっこいい声で歌を歌う。なかなかに悔しい。
一方千歳はというと、いつものようにアニソンを入れまくっている。
そう、千歳はいわゆるアニヲタだ。それもかなりの。
学校で一、二を争うくらい可愛い千歳だが、実はアニメという趣味を持っているのだ。
このことは僕と涼介しか知らない。みんなに隠しているからだ。
このギャップに僕は非常に萌える。
アニソンを楽しそうに歌う千歳、すごく可愛いです。
一方僕は海外の民謡を予約する。サンタ・ルチアやオー・ソレ・ミオといった曲だ。
オペラ歌手のような声を出して歌うのが僕は非常に好きだ。
今日もいつものように歌おうとする。
「スルマーレルチカァ〜〜〜(甲高い声)」
あれ?思うように声が出ない。
なんで?って思ったが僕は忘れていた。
そうだ、女の子になっちゃったから今までのように歌が歌えないんだ。
僕はショックを受けた。女の子になっちゃったことでろくに歌を歌うことさえできないとは。
歌を歌うことはけっこう好きだったのに、趣味を一つ失ってしまった。
「今までの声で歌えないのは残念だと思うけど、私は今の声も好きだよ」
「声が変わっちゃったんなら新しい声に合わせた歌を覚えればいいじゃん」
悲嘆に暮れる僕を二人が励ます。
涼介が言うように女性の歌を練習しよう。僕は家に帰りながらそう決心するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます