第7話

 僕は危機を迎えようとしていた…、と思っていた。


 そう、僕は女の子の体になって初めて体育の授業を受けるのだ。


 僕が女子更衣室を使うと担任からクラスの女子に伝えられたときは大ブーイングが起こっていたが、案外女子たちも僕の体に興味津々らしい。


「案外大きいんだね、何カップ?」


「ねえ、私にも触らせてよ」


 着替えの時間になると女子たちが僕のおっぱいを揉んできた。まあ、僕としては嬉しいから別にいいんだけど。


「もう、そんなデレデレと鼻の下を伸ばさないでよ、はしたないし」


 そう千歳にツッコミを入れられる。いやいや、こんな女子たちに囲まれてちやほやされて鼻の下を伸ばさない男子なんていない。まあ、今の僕は女子ですけど。


 女子になったことをちょっとお得に感じながら僕は着替えを済ませる。


 そして校庭に向かい男子と合流する。すると男子たちから歓声が上がる。


「制服じゃ分からなかったけど、案外でかいな」


「あの胸を際立たせる体育着やべぇよ」


 男子に下心で見られている女子の気持ちが分かった気がする。男子の視線が全て胸に刺さってくる


 ああ、男子って考えることみんな同じなんだな。


 授業が始まり準備体操で体をほぐす。クラスの別の女子と二人組になって準備体操をするが、僕も中身は男子だ。僕の背中に胸が当たるたびに興奮する。


 女子と一緒に準備体操できる特権はかなりお得だ。


 準備体操が終わる。ああ、女子との密着タイムが終わってしまった。もっと続いて欲しかったのに…。


 授業の内容は陸上競技だ。疲れるから僕は嫌いだ。


 でも、今日の授業はいつも以上に疲れた。なぜかって?今の僕には胸があるからだ。


 この胸が予想以上に重い。揺れること揺れること。


 一歩一歩踏み出すたびにぶるんぶるんと揺れる。女子はみんなこの胸を物ともせず走っているのだから凄い。


 今のは肉体的疲れの話だ。僕は精神的にも疲れてしまった。


 授業が始まる前にも男子の視線を集めた僕の胸だったが、いざ揺らしながら走るとさらに男子の視線を集め出す。


 女子に見られるのは結構嬉しい。だが男子に見られても僕としては一切嬉しくない。


 走りながら僕は時間のことだけ考えていた。授業がいつ終わるかいつ終わるかと。


 とにかく恥ずかしくてしょうがない。女子が胸を見られる恥ずかしさをことごとく痛感する


 男子だった時に女子の胸をチラチラと見てしまっていたことをちょっと反省する。


 そんなこんなで視線との戦いの体育の授業が終了する。


 男子の視線をいちいち気にするようじゃ授業に集中できないし、恥ずかしさをどう克服するか問題だな、そんなことを考えながら教室に戻る僕だった。

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