第482話

 あまりの武器の安さに驚いた俺達だったが、無事代金を支払い武器を受け取った。


「レギュ、見るッス! どうッスか?」


 ラバは受け取った剣を構える。


「ラバさん、カッコいいです!」

「そういうレギュもグローブがとても似合っているッス!」

「えへへ、このグローブ気に入りました!」


 二人の様子をエルフは嬉しそうに眺めていた。その表情は今までのドワーフ達とは違った為、俺はある事を聞いてみた。


「なぁ、ここの住人が俺達を目の敵にしている様に感じるんだが、何でか知っているか?」


 俺が話しかけると、直ぐにエルフは表情を戻す。


「いえ、分かりません。ただ、これだけは言っときます」


 エルフはシッカリと俺の目を見て来る。


「一刻でも早く、この村から出て行った方がいいですよ。貴方達は今、危ない状況に瀕しています」

「どういう事……?」


 俺達の会話にベムが入って来る。


「これ以上は話す事は無いです。さぁ、武器も売りましたし、早くここから出て行って下さい」


 そう言うと、エルフは俺達を追い出す様に店の外まで追い出す。


「あ、あの!」


 エルフが店に戻ろうとする間際にレギュが声を上げる。


「なんですか?」

「こ、このグローブと盾、ありがとうございます! このお店以外は武器すら見せてくれませんでしたから、とても嬉しかったです!」

「自分からもお礼を言うッス! こんなにカッコいい武器を売ってくれてありがとうッス!」


 若い二人のまっすぐな視線にエルフは再び微笑を浮かべる。


「私にも人間族の知り合いが一人居ます。その方は種族なんて関係無しに周りを大事にする人でしたので、その方と同じ人間族の貴方達につい力を貸してあげたくなっただけですよ」


 そう言って、エルフは今度こそ店の奥に引っ込み、再び武器を作り始めた。


 レギュとラバは、まだ話し足りなかった様だが、向こうが話す気がない事を悟り俺達は寝床に戻る事にした。


「はぁ……お名前だけでも知りたかったです」

「名前って……エルフの……?」

「はい。私のはじめての武器の製作者を知っときたかったです」

「名前なら分かる……あのエルフはトラクって言うエルフ……」


 ベムが先程のエルフの名前を呟く。


「なんで分かるッスか?」

「名札に書いてあった……」


 あぁ、なるほど。


「トラクさんって言うんですね! もう忘れません!!」


 こうして、俺達は苦労しながらも、なんとか武器を手に入れることが出来た。

 後は、二人に戦い方を教えれば良いだけだな!


「早く強くなって、自分もデグさんみたいになりたいッス!」

「別にデグは強くない……むしろ弱いくらい……」

「──ッうるせぇーよ!」


 クソ、ベムの奴め……俺が気にしている事をズバズバと言いやがるぜ。


 そんな事を話していると、後ろから声を掛けられる。


「おい、アンタ達、強くなりたいのか?」


 後ろを振り向くと、二人のドワーフが近づいて来た。そのドワーフ達は、まだ若いのか他のドワーフ達と比べて身体の線が細い。


「なんだ、お前達?」

「悪りぃ悪りぃ。急に声を掛けて驚かせちまったな」

「俺達はこの村で武器作りの訓練を受けている者だ」

「何の用だ?」


 俺は急に声を掛けられたことに警戒する。


「昨日からアンタ達を見ていてな……余りにも不憫だったんだで、なんか手伝える事がねぇーかと思ってたのよ」

「そうだぜ? そんな時に、アンタ達から強くなりたいって声が聞こえてな」


 二人の言葉にレギュとラバが反応した。


「どこか強くなれる所があるんですか?」

「もし、そうなら教えて欲しいッス!」

「あぁ、いいぜ。その為に声を掛けたわけだしな」


 うーん……昨日、今日のドワーフ達と大違いな態度だな。


 やっぱり、人間同士の関わり合いは、こうじゃ無いとな!


「場所はどこにあるんだ?」

「今、地図書いてやるよ!」


 そしてドワーフの二人は、地図に現在地から目的地までのルートを書き込んでくれた。


「ここだな。大体歩きで三日から五日くらいで行ける距離だな。まぁ、普通であれば四日って言った所かな」

「聞いて良い……?」


 ベムが二人に質問する。


「その場所は、何でおすすめなの……?」

「そりゃ、程よく動物が居て、程よくモンスターも居るからだな。泊まりがけで行く事になるが、動物が豊富に居るから飯には困らね」

「あぁ、コイツの言う通りだ。しかも更に奥に行くと大きい湖があるから、そこに辿り着ければ水にも困らねぇーぜ! しかもそこが絶景でドワーフの村に来たからには是非見るべきだな」


 コイツら、すげぇー親切じゃないか。


「それに、強くなるなら多少の危険は覚悟した方が、その分早く強くなれると思うぜ?」


 同意だな。危険であればある程、その危機を乗り越えて人間は強くなる──しかし、今はそこまで危険を犯してまで強くなる必要は無いと思っている。


 それから二人から途中途中にある野宿のおすすめ場所なども教えてくれた。


「そうか。丁寧にありがとうな。行くか分からないが参考にさせて貰うぜ!」


 俺達は親切にしてくれた二人のドワーフにお礼を言って、寝床に戻った。

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