第483話
ドワーフの村に着いて3日目の朝を迎えた。
「デグさん、昨日教えて貰った場所に行くのですか?」
「うーん。どうっすかな……別にここでも剣の練習とかは出来るしな」
「自分は行くべきだと思うッス!」
ラバが、手を上げて主張する。
「自分は皆んなの中で一番弱いッス! だから少しでも早く強くなりたいッス!」
ラバの奴、昨日のドワーフ達の言葉を思い出しての発言だな?
「自分はどんな危険な事が起きても、それを跳ね除けられるくらい強くなるッス!」
「わー! ラバさんカッコいいですね!」
「レギュも自分と一緒に強くなるッス!」
「はい!」
何やらラバの言葉に触発されたのかレギュまで手を上げて、昨日教えて貰った場所に行く事を主張し始めた。
「私もラバさん同様、その場所に行きたいです!」
二人の言葉に、流石にどうするべきか悩んでいると、二人は俺が行かないと考えていると思ったのか、ベムに助けを求める。
「ベムさん、私強くなる為に行きたいです!」
「自分もッス!」
「分かった……」
──ッおい、即答かよ!
「デグ……昨日教えて貰った所に行こう……」
「おいおい……昨日の二人も言っていたが、モンスターも出るんだぜ?」
「うん……だけど、私とレギュが居ればモンスターの気配は問題無いと思う……」
確かに、ベムとレギュが居ればモンスターの気配は事前に分かる為、遭遇せずに済む。
「だけどな……何が起きるかわからねぇーからな」
モンスターの存在が少し不安だが……どうするかな……
「デグ……」
「ん?」
「レギュやラバだけじゃ無く……私達も強くなる必要がある……」
ベムの言葉にハッとさせられる。俺はレギュとラバを鍛える事だけしか考えて無かったが、ベムの言う通り俺達も強くならないと、前の二の舞だ。
「……分かった。昨日の奴らが教えてくれた場所に行って皆んなで鍛え直そう」
俺の言質を取った事に二人は喜ぶ。
「やりました! さすがベムさんです!」
「ベムさんはやっぱり凄いッス!」
「ふふふ……デグの扱いは任せて……」
二人に頼られ、褒められ、大満足のご様子なベムに少しだからイラッとするが、深く深呼吸をして心を落ち着かせる。
「ふぅ……こんなんで怒ってたら身も心も持たないからな。落ち着け俺!」
俺はベムの方を見ずに、もう一度大きく息を吸って吐き出し、三人に向かって口を開く。
「行くのは良いが、危ないと思ったら直ぐに引き返すからな?」
「「はい!」」
「それじゃ、今日は準備して明日の朝出発だ」
少しでも危険を感じたら、直ぐに戻れば、取り敢えず問題無いだろう。
後は、向こうで二人を鍛える。
「まずは、何から始めるかな……」
二人の戦闘力には差がある為、同じ事をやらせても、あまり意味が無さそうだ。
体力作りは同じでも良いが、戦い方に関しては、まるっきり違う為、それは考えとかないとな。
「デグさん、モンスターとも戦うんですか?」
「それは、二人の成長度合いよるな」
この前は、なんとか小型を倒す事が出来たが、何度も危ない場面はあった。
二人が問題無いくらいまで成長出来た場合は、チームワークの向上も測って、小型との戦闘をしてみるか。
「デグさん、自分頑張るッス!!」
「あぁ。頑張れ、俺もビシバシ行くぜ?」
「望む所ッス!」
「私も、頑張ります!」
こうして、俺達は明日の出発に備えて準備に取り掛かるのであった……
一方、デグ達に強くなれる場所を知っていると言ったドワーフの二人組は、現場酒場の様な所に居た。
「ははは、オイあの人間族達本当に行くか気になるな?」
「あははは、だな。でも、もし行ったら確実に死ぬだろうな」
「チゲぇーね! なんて言っても、俺達の村長であるキルさんでさえ、命懸けって言ってたもんな」
「あぁ、なんでも強者達が大勢行ったなのに、帰ってきたのはごく一部だったもんな」
木材で出来たジョッキを一気に口に流し込んでいる所を見ると、相当酔っているのが分かる。
「人間族で尊敬出来る奴は、アトスさんだけだよな」
「あぁ、その通りだぜ。なんて言っても俺達の村長達を助けた人間族だからな、他の奴らとは別格だぜ!」
どうやら、以前アトス達がドワーフの村に来た際の事を話している様だ。
「あんなクソ、人間族達に、あの場所は突破出来る筈もねぇーな!」
「がははは、だな。多少はモンスターが居るとか説明したが、多少どころか大量に居るもんな!」
「オメェーも、人が悪いぜ。アイツら行ったら確実に戻ってこれねぇーのによ!」
デグ達に優しく教えて居たドワーフ達は一体何処に行ったのだろう? と思うくらいに二人の態度は豹変していた。
「知るかよッ! 今、人間族とは戦争寸前の状態なんだぜ? それなのに呑気な顔してこの村に来るアイツら悪いだろ」
「はは、ちげぇーねぇ。アイツら何も知らない感じだった様だが、恨むなら人間族の王を恨むべきだな」
こうして、デグ達は若いドワーフの二人組に嵌められているとは知らずに翌朝にドワーフの村を出発した。
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