第381話

「……」


 誰もが口を開かない。


 理由はカールの何気ない一言である。

 どうやら、炎弾ことヘラデス率いる軍がそろそろ戻って来る様だ。


「シク様……どうしますか?」


 ガルルが皆の代表として口を開いた。


「明日……だな」


 私の決断に反対する者は居なく、皆が表情を引き締めた。


「明日か……」

「うふふ、さすがシク様、良い判断ですわ。いつまでも長引かせても炎弾がいつ帰国するか分かりませんわ」

「わ、私も、さ、賛成です!」


 皆が言う様に、あまり先に伸ばしていると、炎弾達がいつも取って来るか分からない。


「よし、なら明日決行する」

「よっしゃ! そうと決まったら、明日に備えようぜ!」


 ググガの言葉に、リッテが呆れる。


「アンタ達兄弟って本当に単純ねぇ……」

「──ッちょっと待て! 私は何も言ってないぞ?! 言ったのはググガだ」

「アンタの弟でしょ? なら、弟はアンタの背中を見て成長したんだし!アンタが言ったようなものね」

「な、なんて女だ……」


 リッテの言葉にググガでは無く、ガルルの方が、心外そう顔をしていた。


「み、皆さん。は、早く詳細を決めましょう……」


 脱線していた話をキャリが戻す。


「でも、作戦と言っても、別に決める事なんてあるか?」

「はぁ……バカ兄弟ね……」

「「なんだと?!」」


 ガルルとググガが2人揃ってリッテに突っ込む。


「まさか、アンタ達は、十人全員でラシェン王の所に向かって、暗殺しようときているのかしら?」


 半目で二人を見るリッテ。

 そんな視線にガルルとググガは目を逸らす。


 そして……


「べ、別にそんな事は思ってねぇーけど、お、お前は何か作戦あるのか?」

「はぁ……よく聞きなさい。私なら二つにグループを分けるわ」

「な、なんでですか?」


 リッテの作戦にキャリが首を傾げる。


「簡単よ。一つのグループがラシェン王の暗殺チームで、もう一つのグループが逃走ルート確保するチームね」

「逃走ルートの確保?」

「基本はラシェン王を殺害して、誰にも見付からず逃走するのが理想よね?」


 私を含めて全員が頷く。


「だけど、人間族の王だし、更には寝室ともなれば見張りがどれくらい居るか分からないわ──そこで、もしバレたら完全に逃走ルートを潰されて終わりね」


 確かに……バレずに殺害出来れば良いが、想定外は考えてとくべきである。


「そうならない為にバレた時に、もう一つのグループが対処するのよ」

「よっしゃ! 理解したぜ──でも、グループ分けはどうするんだ?」

「そこなのよね……暗殺の方は勿論だけど逃走ルートを確保する方にもある程度強い者が居る必要があるわ」


 それからは、誰が、どっちのグループになるかを考え始める。


 そして、結果的には暗殺チームには私とガルル、ググガに他二人を含めた五人になった。


 もう一つの逃走ルートを確保するチームにはリッテとキャリ、他三人を含めた五人に決定する。


「よし、明日はこのチームで動く。そして決行は夜──ラシェン王が寝静まった時に行う」


 私の言葉に全員が頷いた。


「ラシェン王殺害後は速やかに人間族の住処から脱出する。その際に外で待機しているネーク達に合図するが、リッテ頼めるか?」


 私はリッテとキャリの方に顔を向ける。


「うふふ。シク様の頼みで有れば、この命に替えてでも実行致しますわ」

「わ、私も、ぜ、全力です!」

「よろしく頼む」

「「はい!」」


 頼もしい返事をする二人に頷く。


「明日は決して楽では無いが、作戦を必ずや成功させよう」

「「「「「はい!」」」」」


 それからは夕飯を作り、皆で食べる。

 

 ご飯を食べているとググガが思い出す様に話し始めた。


「そういえばよ、明日は集団戦するらしいな。折角の決行日だというのめんどくせぇーぜ」 

「あまり、体力を取られたく無いがしょうがない」

「うふふ。1対1で勝てなかったから、今度は集団戦とは単純ね」


 リッテは遊撃隊を嘲笑う。


「と、とにかく、明日は皆んな無理なく怪我無く訓練を終えましょうね」



 そして明日も訓練がある為、皆が早めに床に付いた。


 だが、私は何故か寝付けなかった為、小屋から出て外を出歩いている。


「明日決行か……絶対に失敗は許されないな」


 この作戦が失敗したら、もはやラシェン王を殺害出来るチャンスは無いだろう。


 失敗すれば全員捕まって殺されるだろうし、もしかしたら拷問されるかもしれない。


「私は……夢に出てくる男の子と会うまでは死ぬ訳に行かない……」


 こうして作戦成功する事を祈り小屋に戻る。


 外を歩いた事が良かったのか程良い睡魔が襲って来たので、私は明日に備えて寝る事にした……

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