第314話

「マーズよ、今日は何の集まりか私でも分かるぞ」


 リンクスの立場では知っていて当たり前の事なのだが何故か偉そうに胸を張っている。


「えぇ、流石リンクス様です」


 もはや、相手をするのもめんどくさいのか、マーズは適当に返事を返す。


 すると、いつも通り恰幅の良い男がリンクスに話し掛けてきた。


「はは、リンクス殿の脳は常に進化されている様ですな」


 小馬鹿にする様に話し掛けるガバイだが、リンクスに皮肉は通じない様で──


「──む、ガバイか? 貴様もやっと私の良さに気が付いたか?」

「「……」」


 二人は言葉が出ない様子である。


「いやはや……まさか、ここまでとは……貴方は本当に良くやられていますな」


 地位の低い筈のマーズに気遣う様にガバイが呟く。


「ありがとうございます」


 それから、リンクスは二人に自身の知っている事を話出す。


「ガバイよ、今日の集まりが何か知っているか?」

「いえ、存じません。浅はかな私に教えてくれませんか?」


 ガバイの言葉に実に愉快そうに笑うリンクス。


「良かろう! 今日の集まりはだな──炎弾である私のヘラデス殿が前哨戦の日程が決まった事を皆に伝える様だ」


 別にリンクスのヘラデスでは無いのだが、今回の集まりと言うのは、どうやらエルフ族に攻め入る日付が決まった様なので、その発表の様だ。


「なんと──他にもヘラデス殿から我々を楽しませる催しがあると聞く──実に楽しみだ」


 リンクスの説明が終わるタイミングで、盛大な太鼓の音が建物内に鳴り響く。


 太鼓の音に合わせて、ゆっくりと赤いロングコートをなびかせてヘラデスが登場する。


 その姿は正に威風堂々としており、人々を惹きつける。


 ゆっくりと王座まで歩くとクルリとコチラに向くのであった。


 そして、一度マーズ達参加者を見てから口を開く。


「ハッ──私は面倒くさい事は嫌いだ。だから前置きなんかいらねぇ。一週間後に私達はエルフ族に攻め入るぞ!」


 ヘラデスの言葉を聞いていた参加者からは様々な声が飛び交う。


「おー、やっとですな!」

「エルフ族を奴隷にするのは嬉しい限りでございます」


 それぞれが思い思いの言葉を呟くが、大体がエルフ族の奴隷にした後に、どの様に愉しむかを考えている者ばかりであった。


 そして、そんな者達を軽蔑する様に見るヘラデス。


「ッケ──気持ち悪い奴らだ……」


 誰にも聞こえない様に呟く。


 普段は不敵な笑みで笑うヘラデスだが、参加者達の考える思考の気持ち悪さに、今は冷酷な視線を男達に向けていた。


 そんなヘラデスの視線に気が付いたのか参加者達は気まずくなり、自然と話すのを辞めて辺りが静まり返る。


「──フンッ、まぁいい」


 そして、ヘラデスは鋭い眼光で参加者に問い掛ける。


「お前達がエルフ族をどう扱おうが私には関係無いし興味も無いが戦いの舞台を整える準備だけは怠るなよ?」


 一瞬ではあるが、炎弾の鋭い眼光に参加者は萎縮する──しかし直ぐに、いつもの不遜な笑みを浮かべるのを見て参加者は口を開く。


「た、戦いの舞台に関しては我々にお任せください」

「え、えぇ勿論、エルフ族の村でヘラデス殿達には最高の戦場を用意致します」


 参加者の言葉にすっかり気を良くしたヘラデス。

 どうやら戦えさえすれば満足の様だ。


「よし、準備は任せた──それから私からお前達に見せたい物がある」


 ヘラデスの言葉に首を傾げる者達に対して更に口を開く。


「以前にも言ったが一緒に戦う二種族を紹介する──連れて来い!」


 大きな声と共に、まず一種族目が鎖に繋がれて王座にいるヘラデスの横まで連れて来られた。


「おい、アレはゴブリンか?」

「あ、あぁそうだな」


 首に鎖を付けられて登場したのは一人のゴブリンであった。


「もう一人も連れて来い!」


 続いて登場したのは──


「お、おい!? アレってオーガか……?」


 参加者の言葉と共に周りが騒つく。


 その姿は、とても大柄であった。


 そして、身体のあちこちが不自然に思えるくらい盛り上がっている筋肉に覆われていた。


「ふ、普通のオーガじゃねぇーぞ?!」


 本来オーガの体色は青色であるが、鎖に繋がれて登場したオーガは紫色であった……そして、髪は金色であり頭には一本の角が生えていた。


「な、なんだ……あのオーガは……?」


 そして、そんなオーガを見て騒ぎ立てる参加者達を鎖で繋がれている筈のオーガは見下す様に見ていた。


 こうして、王座にはヘラデス、ゴブリン、オーガが立ち並ぶ形となる。


「今回一緒に連れて行く二種族になる──お前ら挨拶でもしろ」


 ヘラデスの言葉に、まずはゴブリンが鎖に繋がれたまま一歩前に出て頭を下げた。


「皆様、私ゴブリン族の長をやらせて頂いていますグダと申します──戦闘自体はそこまで得意では御座いませんが、精一杯お役に立てる様頑張りますので宜しくお願いします」


 挨拶が終わった後、再び深々と頭を下げるゴブリン族のグダ。


 人間族が至高の種族と信じてやまない者達に取って、ゴブリン族のグダの挨拶は、とても丁寧であり、良い印象をもたらした。


 続いて、一際大きい身体を一歩前に出して話し始める。


「俺はオーガ族村長のバルオールだ、よろしく」


 パルオールと答えたオーガは鎖で繋がられているにも関わらず参加者達を見下す。


 すると、参加者の一人がバルオールに問い掛ける。


「貴様、奴隷だろ? もっと我々人間を敬うべきだろう」


 そんな意見に笑うバルオール。


「俺は、俺より強く無い奴を敬うのつもりはねぇ──そして俺より強い奴はここにいる炎弾だけだ。俺はコイツの言う事しか聞く気はねぇーよ」


 そんな二人の紹介後にヘラデスは話す。


「今回は我々以外にこの、二種族を連れて行く──戦場の用意は頼む」


 こうして数日後に炎弾匹いる郡はエルフ族に向かっていった……




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